今日(8日)の『東京新聞』朝刊に「特定秘密保護法案」の全文が掲載されていたので,なにはともあれ赤線を入れながら,最後まで読み通してみた。この種の法文には慣れていないとはいえ,これが同じ日本語の文章なのか,とまずはあきれ返ってしまった。法案の体裁としてはこれで完璧なのかもしれない。しかし,わたしのようなふつうの国民には意味不明。
なぜなら,片手に『六法全書』でも握りながら,一つひとつ解読していく必要があるからだ。手ぶらではなんのことやらさっぱりわからない。この法案そのものが,ひょっとしたら,国民にわからなくするために「特定秘密」事項に指定され,「保護」されているのではないか,と思うほどだ。とにかく難解で,一通り読むだけで,とんでもなく長い時間を要した。ちかごろ,こんなに苦労して日本語の文章を読んだことがないほどだ。
たとえば,こうだ。第一章 総則 (目的)第一条,(定義)第二条,とある。(定義)と見出しがついているので,わたしはてっきり「特定秘密」とはなにかという定義が書いてあると思って気合が入った。しかし,とたんにこけてしまった。そのまま引用してみる。
(定義)
第二条 この法律において「行政機関」とは,次に掲げる機関をいう。
一 法律の規定に基づき内閣に置かれる機関(内閣府を除く。)及び内閣の所轄の下に置かれる機関
これを読んだ瞬間に,えっ?内閣府は行政機関ではないの?とびっくりしてしまう。しかし,そうではない。つぎを読むとわかる。
二 内閣府,宮内庁並びに内閣府設置法第四十九条第一項及び第二項に規定する機関
ちゃんと内閣府は入っているではないか。「一」の条文のなかからは「除く」というだけの話。なんで,こんなにややこしい区分けをしなくてはならないのか,素人にはわからない。しかも,この「二」の条文も,これまたわけがわからない。内閣府,宮内庁,まではいい。「並びに内閣府設置法第四十九条第一項及び第二項に規定する機関」とは,なにを指しているのか,どういう機関のことなのか,この条文を読むだけではわからない。しかも,この「二」の条文の末尾にもかっこ書きの注がつけてあって,それが長々とつづき,しかも最後に,それらの機関を除く,とある。こうなると『六法全書』を片手に,一つひとつしらみ潰しに確認していかないことには,なんのことやらさっぱりわけがわからない。
これが法案の実態だとすれば,これらの条文をどのように「解釈」するのか,というつぎなる議論が立ち現れることになる。憲法ですら,どのように解釈するか,どう読むか,という長年の議論があって,何回も再燃し,いまもなお繰り返されている。
この摩訶不思議な法案を国会で審議・議論するという。しかも,短時間で。だから,政府与党は,議会で失言さえしなければ,たいていの法案は通過していってしまう。今国会は,政府が圧倒的多数を占めているので,よほどの失言が飛び出さないかぎり,なんなく通過してしまう。だから,なおのこと恐ろしい。
しかも,議会での審議は国民の意志などはほとんど無視されてしまい,党利党略が最優先してしまう。さらに恐ろしいことに,野党が野党としての機能マヒを起こしていて(「思考停止」),もはやなんの役にも立たないということだ。少なくとも,「特定秘密保護法案」に反対する議員は,時間をみつけて,首相官邸前で繰り返されている市民デモにも参加して,演説をぶつくらいの根性をみせてみたらどうか。それすらしない。なぜ? 国会ファシズムが徹底していて,そこでのマナーにはずれると「処罰」されてしまうことを恐れているからだ。ヤマモト君やイノキ君は,その犠牲となり,血祭りにあげられようとしている。
これが,じつは,特定秘密保護法案の内実の一端でもあるのだ。しかし,わたしたちがもっとも恐れなくてはならないのは,特定秘密事項の指定は,「行政機関の長」が「必要」を認めれば,即座にそれができる(第二章第三条)と明言されていることだ。しかも,その「必要」には厳密な規定がない。いくら読んでみてもない。ただ,「別表」(第三条,第五条-第九条関係)にその一覧表があるのみだ。その「別表」は,大きくは四つの事項に分類されている。それは以下のとおり。
一 防衛に関する事項(イ,ロ,ハ,ニ,ホ,ヘ,ト,チ,リ,ヌ)
二 外交に関する事項(イ,ロ,ハ,ニ,ホ)
三 特定有害活動の防止に関する事項(イ,ロ,ハ,ニ)
四 テロリズムの防止に関する事項(イ,ロ,ハ,ニ)
の四つで,それぞれに(イ,ロ,ハ,ニ,・・・・・)という具合に具体的にそれぞれの事項が指定されている。たとえば,わたしなどにも直接,その手が伸びてきそうな「三 特定有害活動の防止に関する事項」がある。この事項には,とことん注意が必要だ。そのトップの項目には「イ 特定有害活動による被害の発生若しくは拡大の防止のための措置又はこれに関する計画若しくは研究」とある。これが「特定秘密」に相当するというのである。となると,「特定有害活動」であると行政機関の長が判断すれば,それによる「被害の発生」も「拡大の防止」も闇から闇へと葬り去られる可能性がある,と読める。もっと言ってしまえば,「特定有害活動」であるという段階で,それを闇から闇へと「措置」することができる,ということになりかねない。となると,いま書いているこのブログも「特定有害活動」になりかねない,という意味で危ない。
もっとも,わたしのような「へなちょこ」が書くブログなどは大した影響力もないので,大丈夫だとは信じているが,知名度の高い人たちのブログは,そうはいかない。いつもネトウヨなどに炎上させられているブログなどは,とくに危ない。
そのなによりの証拠は,知名度の高い芸能人は,政治にはいっさい口出ししない。ときどき勇み足をしてしまうと,こっぴどく叩かれる。その典型的な例が,ヤマモト君だ。ところがかれは,逆に居直って,芸能界を飛び出し,政治家に転身した。
日本という国家の存亡にかかわる重大な時期なので,芸能人も,少なくとも国民的な目線での声は挙げてほしい。いまの,テレビ・メディアで活躍している芸能人の影響力ははかりしれないものがある。だからこそ,声を挙げてほしい。しかし,だれも声を挙げようとはしないだろう。みずからの身の安全を守るために。いや,それ以上に,積極的な「自発的隷従」。こうして,労せずして,権力は維持されていく。そのために芸能人は大いに貢献しているということだ。しかし,世阿弥や利休はそうではなかった。
ということは,わざわざ「特定秘密」にしなくても「公然の秘密」として,そのようなプレッシャーがすでにかかっていることを国民の多くが承知している。だから,逆に,圧倒的多数の国民が「自発的隷従」の姿勢をくずそうとはしない。わたしなども根性なしなので,ある程度のところでコントロールしながら,あまりに「過激」になることを避けている。でも,ときおり,我慢ならなくなって,このブログでも声を荒らげることになるのだが・・・・。
でも,こんなのは「特定有害活動」には遠く及ばない。知名度が低いから。それでも,こんどの「特定秘密保護法案」が通過すると,どことなく火の粉がふりかかってきそうで居心地が悪い。
いやいや,こんなことはきわめて個人的なことで,恐ろしいのは,もっとそのさきに待ち受けている。もうすでに多くの論者が声を挙げているとおりである。つまり,戦前の「治安維持法」そのものの復活である。もう,すでにアベノミクスはその方向に向かってまっしぐらである。そのための法案の連発である。一気呵成に全体主義に突き進もうとしているかにみえる。1930年代のナチスの動きとそっくりだ。さすがのアメリカも,このところのアベ君の言動には,いささかいぶかりはじめている,という。
思いがけずも,長くなってしまった。みなさんも,ぜひ一度,「特定秘密保護法案」の全文をチェックしてみてください。その上で,みずからの行動を決してください。取り急ぎ,今日のところは,ここまで。
なぜなら,片手に『六法全書』でも握りながら,一つひとつ解読していく必要があるからだ。手ぶらではなんのことやらさっぱりわからない。この法案そのものが,ひょっとしたら,国民にわからなくするために「特定秘密」事項に指定され,「保護」されているのではないか,と思うほどだ。とにかく難解で,一通り読むだけで,とんでもなく長い時間を要した。ちかごろ,こんなに苦労して日本語の文章を読んだことがないほどだ。
たとえば,こうだ。第一章 総則 (目的)第一条,(定義)第二条,とある。(定義)と見出しがついているので,わたしはてっきり「特定秘密」とはなにかという定義が書いてあると思って気合が入った。しかし,とたんにこけてしまった。そのまま引用してみる。
(定義)
第二条 この法律において「行政機関」とは,次に掲げる機関をいう。
一 法律の規定に基づき内閣に置かれる機関(内閣府を除く。)及び内閣の所轄の下に置かれる機関
これを読んだ瞬間に,えっ?内閣府は行政機関ではないの?とびっくりしてしまう。しかし,そうではない。つぎを読むとわかる。
二 内閣府,宮内庁並びに内閣府設置法第四十九条第一項及び第二項に規定する機関
ちゃんと内閣府は入っているではないか。「一」の条文のなかからは「除く」というだけの話。なんで,こんなにややこしい区分けをしなくてはならないのか,素人にはわからない。しかも,この「二」の条文も,これまたわけがわからない。内閣府,宮内庁,まではいい。「並びに内閣府設置法第四十九条第一項及び第二項に規定する機関」とは,なにを指しているのか,どういう機関のことなのか,この条文を読むだけではわからない。しかも,この「二」の条文の末尾にもかっこ書きの注がつけてあって,それが長々とつづき,しかも最後に,それらの機関を除く,とある。こうなると『六法全書』を片手に,一つひとつしらみ潰しに確認していかないことには,なんのことやらさっぱりわけがわからない。
これが法案の実態だとすれば,これらの条文をどのように「解釈」するのか,というつぎなる議論が立ち現れることになる。憲法ですら,どのように解釈するか,どう読むか,という長年の議論があって,何回も再燃し,いまもなお繰り返されている。
この摩訶不思議な法案を国会で審議・議論するという。しかも,短時間で。だから,政府与党は,議会で失言さえしなければ,たいていの法案は通過していってしまう。今国会は,政府が圧倒的多数を占めているので,よほどの失言が飛び出さないかぎり,なんなく通過してしまう。だから,なおのこと恐ろしい。
しかも,議会での審議は国民の意志などはほとんど無視されてしまい,党利党略が最優先してしまう。さらに恐ろしいことに,野党が野党としての機能マヒを起こしていて(「思考停止」),もはやなんの役にも立たないということだ。少なくとも,「特定秘密保護法案」に反対する議員は,時間をみつけて,首相官邸前で繰り返されている市民デモにも参加して,演説をぶつくらいの根性をみせてみたらどうか。それすらしない。なぜ? 国会ファシズムが徹底していて,そこでのマナーにはずれると「処罰」されてしまうことを恐れているからだ。ヤマモト君やイノキ君は,その犠牲となり,血祭りにあげられようとしている。
これが,じつは,特定秘密保護法案の内実の一端でもあるのだ。しかし,わたしたちがもっとも恐れなくてはならないのは,特定秘密事項の指定は,「行政機関の長」が「必要」を認めれば,即座にそれができる(第二章第三条)と明言されていることだ。しかも,その「必要」には厳密な規定がない。いくら読んでみてもない。ただ,「別表」(第三条,第五条-第九条関係)にその一覧表があるのみだ。その「別表」は,大きくは四つの事項に分類されている。それは以下のとおり。
一 防衛に関する事項(イ,ロ,ハ,ニ,ホ,ヘ,ト,チ,リ,ヌ)
二 外交に関する事項(イ,ロ,ハ,ニ,ホ)
三 特定有害活動の防止に関する事項(イ,ロ,ハ,ニ)
四 テロリズムの防止に関する事項(イ,ロ,ハ,ニ)
の四つで,それぞれに(イ,ロ,ハ,ニ,・・・・・)という具合に具体的にそれぞれの事項が指定されている。たとえば,わたしなどにも直接,その手が伸びてきそうな「三 特定有害活動の防止に関する事項」がある。この事項には,とことん注意が必要だ。そのトップの項目には「イ 特定有害活動による被害の発生若しくは拡大の防止のための措置又はこれに関する計画若しくは研究」とある。これが「特定秘密」に相当するというのである。となると,「特定有害活動」であると行政機関の長が判断すれば,それによる「被害の発生」も「拡大の防止」も闇から闇へと葬り去られる可能性がある,と読める。もっと言ってしまえば,「特定有害活動」であるという段階で,それを闇から闇へと「措置」することができる,ということになりかねない。となると,いま書いているこのブログも「特定有害活動」になりかねない,という意味で危ない。
もっとも,わたしのような「へなちょこ」が書くブログなどは大した影響力もないので,大丈夫だとは信じているが,知名度の高い人たちのブログは,そうはいかない。いつもネトウヨなどに炎上させられているブログなどは,とくに危ない。
そのなによりの証拠は,知名度の高い芸能人は,政治にはいっさい口出ししない。ときどき勇み足をしてしまうと,こっぴどく叩かれる。その典型的な例が,ヤマモト君だ。ところがかれは,逆に居直って,芸能界を飛び出し,政治家に転身した。
日本という国家の存亡にかかわる重大な時期なので,芸能人も,少なくとも国民的な目線での声は挙げてほしい。いまの,テレビ・メディアで活躍している芸能人の影響力ははかりしれないものがある。だからこそ,声を挙げてほしい。しかし,だれも声を挙げようとはしないだろう。みずからの身の安全を守るために。いや,それ以上に,積極的な「自発的隷従」。こうして,労せずして,権力は維持されていく。そのために芸能人は大いに貢献しているということだ。しかし,世阿弥や利休はそうではなかった。
ということは,わざわざ「特定秘密」にしなくても「公然の秘密」として,そのようなプレッシャーがすでにかかっていることを国民の多くが承知している。だから,逆に,圧倒的多数の国民が「自発的隷従」の姿勢をくずそうとはしない。わたしなども根性なしなので,ある程度のところでコントロールしながら,あまりに「過激」になることを避けている。でも,ときおり,我慢ならなくなって,このブログでも声を荒らげることになるのだが・・・・。
でも,こんなのは「特定有害活動」には遠く及ばない。知名度が低いから。それでも,こんどの「特定秘密保護法案」が通過すると,どことなく火の粉がふりかかってきそうで居心地が悪い。
いやいや,こんなことはきわめて個人的なことで,恐ろしいのは,もっとそのさきに待ち受けている。もうすでに多くの論者が声を挙げているとおりである。つまり,戦前の「治安維持法」そのものの復活である。もう,すでにアベノミクスはその方向に向かってまっしぐらである。そのための法案の連発である。一気呵成に全体主義に突き進もうとしているかにみえる。1930年代のナチスの動きとそっくりだ。さすがのアメリカも,このところのアベ君の言動には,いささかいぶかりはじめている,という。
思いがけずも,長くなってしまった。みなさんも,ぜひ一度,「特定秘密保護法案」の全文をチェックしてみてください。その上で,みずからの行動を決してください。取り急ぎ,今日のところは,ここまで。
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