今日(10月5日)の東京新聞朝刊一面トップに,森本智之記者による実名記事が掲載されました。それが以下の写真です。そして,10面には,同記者による「新国立競技場を考える」という特集記事が全面を飾っています。それが,その下の写真です。
ここまできたら,こちらにももっと欲がでてきます。これを総論としておいて,つぎには各論を展開してほしい。それは,2020東京五輪をめざして,民意を総結集できるような民主主義的な手続論に大きな欠損があることを,白日のもとにさらけ出してほしいからです。言ってしまえば,文部科学省の下部組織であるJSC(日本スポーツ振興センター)や,組織委員会や東京都が,ほとんど闇の世界で東京五輪の核心部分を独断専行させて決定し,ものごとを進めている,その悪しき体質を徹底的に批判し,糺すことをやってほしいからです。そうしないかぎり,日本という国は,いつまでたってもお上の好きなように,つまりは,国民不在の政治が行われ,民主主義の理念も実践も根づきません。その意味では,国際的にみても,相当の後進国のままです。
2020東京五輪は,いってみれば,国民的な,唯一の平和的な最大の運動です。なのに,ここでも一部の支配層の利害・打算が最優先されています。ですから,民意どころか,完全なる闇の世界で肝心要の重要事項が決められ,それを既定事実であるかのように,国民に押しつけてきます。その典型的な事例のひとつが,この新国立競技場建設計画をめぐる諸問題です。
その事業母胎であるJSCのやり方が奇怪しいということが,早くから,建築の専門家集団や市民団体から指摘され,何回ものシンポジウムや報告会をとおして糾弾されてきました。にもかかわらず,JSCは一切耳を傾けようとはしませんでした。主要メディアもほとんど無視したままでした。ですから,いま2020東京五輪開催に向けて,とんでもないことが着々と推し進められていることを,ほとんどの国民が知らないままでいます。
しかし,神様がしっかりと見届けていたかのように,ここにきてJSCのやり方ではどうにもならない事態が,現実の方からやってきました。つまり,JSCの打ち出した新国立競技場建設計画が,どうにもこうにも立ち行かなくなってしまったからだす。まずは,現国立競技場解体にともなう入札方法に疑念が生じ,入札会社の一社がその方法にクレームをつけ,いま,その審査に入っていて,解体工事が暗礁に乗り上げていることがあります。しかも,この解体工事ですら,大手ゼネコンは一社も入札には参加していません。このままでは,新国立競技場建設の入札にも,大手ゼネコンは参加しないのではないかと危惧されています。少なくとも,現段階では,まったく採算の合わない仕事だとみなし,みんな腰が引けているからです。
その実態のあらましが,今日の東京新聞によって明らかになっています。まずは,予定されている予算の範囲内では建設が不可能であること,その費用も雪だるま式に,一カ月ごとに増加の一途をたどっていること,技術的に難工事が多く,経費も時間も圧倒的に不足していること,あとは,資材も人材(労働力)も,短期決戦(48カ月)に挑むにはまったく不足していること,などなど,課題はあまりにも多すぎます。加えて,霞ケ丘住宅の住民の立ち退き問題も,ほとんど手つかずのままです。JSCはホームページには,周辺住民に懇切丁寧な説明をし,理解を得るべき努める,と明記しながら,やったことは「退去命令」だけで,詳しい説明は一切していないことを霞ケ丘住宅の住民が訴えています。そして,景観問題も片づいてはいません。圧倒的多数の住民が反対しています。なぜなら,JSCは地域住民が納得するような説得の努力を一切していないからです。
このように考えてきますと,新国立競技場建設計画は,一度,振り出しにもどし,仕切り直しからはじめるしか方法はなさそうです。そして,早くから提案がなされている槇文彦さんや伊東豊雄さんらの,現国立競技場の改修案についての議論に切り換えるべきでしょう。もはや,建て替え案は時間切れ寸前なのですから。しかも,問題山積。これを無理矢理推し進めたところで,かならず途中で破綻をきたすことは眼にみえています。素人でもわかります。
そして,最後の決め手は,いま進行中の新国立競技場建設計画は,IOCが定めたアジェンダ(環境や住民の理解,などを定めた基本方針)にも違反している,ということです。この違反問題は,市民団体を中心に各方面から(日本野鳥の会,など),直接,IOC本部にも訴えがとどいています。そして,IOC本部はこの事態を重く受け止めている,と返事があったと「報告会」でその当事者から話を聞いています。
いまや,IOCからも「笑い物」にされつつある,そんな事態を迎えています。なのに,JSCは一歩も引こうとはしません。自浄能力を書いた組織はかならず崩壊します。JSCは,もはや,風前の灯火だとわたしはみています。おそらく,当面は,組織の名称変更くらいできりぬけようとしているようですが・・・・。はたして,壁紙を張り替えたぐらいで,組織が蘇生するとは思えません。
最悪の場合には,2020東京五輪返上という事態も視野に入れなくてはならない,そういう危機的情況に,いま,わたしたちは立たされている,ということを肝に銘ずべきでしょう。最後の決め手は,フクシマです。東京の上空を流れてけいるセシウムの量が,ここにきて急増しているという報告が,原子力規制委員会から公表されています。
これから,ますます多くの隠された事実関係が明らかになってくると思います。富士山の噴火だって,視野に入れなくてはならないところにきています。もちろん,地震も。
いま,日本国は,政治の迷走も含めて,戦後最大の危機に直面している,とわたしは認識しています。西谷修さんの表現を借りれば「破局は,いま,ここに」きてしまっている,だから,それを回避するための「再生のヴィジョン」を描くことが肝要である,と(『破局のプリズム』──再生のヴィジョンのために,ぷねうま舎,2014年9月刊)。
いま,まさに,新国立競技場建設計画をめぐる諸問題は正念場を迎えています。いまこそ,声を挙げるべきときだ,と覚悟を決めましょう。いま,できるところから・・・・。
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