この問題は,ひとり新国立競技場建造に限られたことではない。いま,大問題となっている「戦争法案」もまた,同質・同根の問題である。なぜなら,もっとも肝腎なことを誤魔化し(違憲を封印)た上で,法案の正当性を,なにがなんでもこじつけ,辻褄合わせをしようと必死にもがいているのと,まったく同じ発想をそこにみてとることができる。あとは,数の力で押し切ればいい,という楽観主義も同じである。
ただ唯一,違ったのは新国立競技場建造のための経費がかかりすぎる,というだれの目にもわかりやすい理由がターゲットになってしまったことだ。ロンドン大会のときのメイン・スタジアムであれば,5個もつくることができる,というこの法外な金のかかり方は尋常ではない。だから,一斉に,これは奇怪しい,と多くの国民が気づいた。
それでもなお,五輪推進本部の本部長であるアベ君は,2520億円の経費を必要なものとし,規定方針どおり,この工事を推進する,と見栄を切った。しかし,それからわずか2週間後には,一転して「白紙撤回」に踏み切った。なにを隠そう,この問題が火達磨となって燃え上がってしまったら,肝心要の「戦争法案」まで炎上しかねないと危惧したからだ。つまり,猫騙しの手を打っただけの話である。
しかし,ことはそれほど単純ではなかった。ほじればほじるほどに,そこには「無責任ドミノ」の構造が浮き彫りになってきたからである。しかも,この曖昧模糊とした組織を隠れ蓑にして,だれひとりとして責任をとるものがいない。アベ本部長を筆頭に,下村博文文部科学相,河野一郎日本スポーツ振興センター理事長,森喜朗五輪組織委員会会長,安藤忠雄デザイン・コンペ審査委員会委員長,のだれもが「わたしの責任ではない」と逃げ回っている。ついには,内輪もめの材料にまでなってしまい,責任のなすり合いまではじまっている。
さあ,どうするアベ君。秋口までの時間稼ぎで誤魔化すか,それとも剥き出しの丸裸にされて炎上するか,ことは急を告げている。早晩,参議院での議論になろう。すでに,下村文部科学相の辞任要求の声が野党からはあがっている。政局はいよいよ,「戦争法案」とからめてたいへんな局面を迎えようとしている。
アベ内閣の支持率もすでに風前の灯火である。国民の批判の声は燎原の火のごとく,どんどん燃え広がっている。もはや,消し止めようがない勢いだ。国民にとっても,これからが正念場だ。一国の命運がかかっている。
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