昨日(7月4日),学習院大学で開催された「立憲デモクラシーの会」主催の講演会に行ってきました。開催案内には「集団的自衛権を問う──立憲主義と安全保障の観点から」とありましたので,相当に厳しい糾弾がおこなわれるのではないか,と予想してでかけました。ところが,なんとも冷静な,そして深い洞察にもとづく,根源的な「問い」を突きつけられ,「想定外」の感動をおぼえました。参加してよかった,としみじみ思いました。
プログラムを挙げておきましょう。
「集団的自衛権を問う──立憲主義と安全保障の観点から」
第1部
基調講演:三谷太一郎(日本学士院会員・東京大学名誉教授・政治史)
なぜ日本に立憲主義が導入されたのか・その歴史的起源についての考察
コメント:加藤陽子(東京大学教授・歴史学)
司会:山口二郎(法政大学・政治学)
第2部
講演:前田哲男(軍事評論家)
<万物流転>にねじ伏せられた<万古不易>
コメント:木村草太(首都大学東京准教授・憲法学)
司会:中野光一(上智大学・政治学)
冒頭で,この会の代表のひとり山口二郎さんが「安倍内閣の解釈改憲への抗議声明」を読み上げました。これも,大きな声を張るわけでもなく,むしろ,小さな声で控えめに読み上げられました。その内容は三つの柱でまとめられていました。
A 暴走する政府は民主政治を破壊する
B 集団的自衛権行使は違憲であり,安全保障にも寄与しない
C 政府解釈による自衛権の拡大は立憲主義を破壊する
ここに全文を写し取りたいところですが,割愛させていただきます。たぶん,立憲デモクラシーのホームページにアップされていると思いますので,チェックしてみてください。
つづいて第1部に入りました。この三谷太一郎先生の基調講演が素晴らしいものでした。まるで,大学の講義を聴いているような,一つひとつ懇切丁寧な解説があって,とても説得力のある内容でした。配布されたレジュメの「はじめに」のところだけ,引用しておきましょう。
はじめに
日本における「立憲主義」を二つの側面から考える
1)権力分立制
2)議会制
したがって問題は第一に日本になぜ権力分立制が導入されたのか,第二に日本になぜ議会制が成立したのか,日本における「立憲主義」は何を歴史的母胎として生まれたのか。第三に権力分立制および議会制の下でなぜ複数政党制が成立したのか。要するに日本においては「立憲主義」および複数政党制がなぜ必要であったのか。
こういうお話は学生時代に聴いておきたかった,と悔やまれるほどの素晴らしいものでした。ひとことだけ,わたしの理解を書いておけば,権力分立制も議会制もその萌芽は徳川幕府に求めることができる,その伝統を明治政府が引き継ぎ,紆余曲折をへながらも,かろうじて立憲デモクラシーの考え方や制度を練り上げてきた,したがって,立憲デモクラシーの理念はいわば国民的財産なのだ,ということです。
この基調講演に対して,加藤陽子さんがつけたコメントがまた抜群でした。時間があればもっと詳細な展開があったのでしょうが,残念。
つづけて第2部に。
軍事評論家の前田哲男さんのお話も,とても魅力的な内容でした。とくに,わたしには軍事評論という世界のことは無知に等しかったので,その内容がとても新鮮に感じられました。しかし,残念なことに時間が押していて,後半は一気に概説をして終わってしまいました。
この講演に,若き憲法学者の木村草太さんがコメント。こちらも時間があればもっと面白い話の展開になったろうに・・・と惜しまれました。
まあ,いずれにしても,これだけのプログラムに対して,たった2時間はあまりにも短すぎ。それでも,終了したのは午後8時30分をまわっていました。もっとも,時間が足りなかったなぁ,と惜しまれるくらいがちょうどいいのかも知れません。夕食前でしたが,空腹どころか満腹感(頭の中)でいっぱいでした。
いま,振り返ってみますと,とりわけ,三谷太一郎先生のお話はわたしにとっては強烈なインパクトを与えました。いつか,時間をみつけて三谷先生のご著書を読ませていただこうと思いました。徳川時代があんなに長くつづいた背景には,ご公儀の権力の分立と合議制が大きな意味をもっていたのか,と気づかされたからです。
いまもその余韻に酔い痴れています。
たぶん,IWJで映像が流されると思いますので,もう一度,聴いてみたいと楽しみにしています。
以上,つたないわたしの感想とご報告まで。
プログラムを挙げておきましょう。
「集団的自衛権を問う──立憲主義と安全保障の観点から」
第1部
基調講演:三谷太一郎(日本学士院会員・東京大学名誉教授・政治史)
なぜ日本に立憲主義が導入されたのか・その歴史的起源についての考察
コメント:加藤陽子(東京大学教授・歴史学)
司会:山口二郎(法政大学・政治学)
第2部
講演:前田哲男(軍事評論家)
<万物流転>にねじ伏せられた<万古不易>
コメント:木村草太(首都大学東京准教授・憲法学)
司会:中野光一(上智大学・政治学)
冒頭で,この会の代表のひとり山口二郎さんが「安倍内閣の解釈改憲への抗議声明」を読み上げました。これも,大きな声を張るわけでもなく,むしろ,小さな声で控えめに読み上げられました。その内容は三つの柱でまとめられていました。
A 暴走する政府は民主政治を破壊する
B 集団的自衛権行使は違憲であり,安全保障にも寄与しない
C 政府解釈による自衛権の拡大は立憲主義を破壊する
ここに全文を写し取りたいところですが,割愛させていただきます。たぶん,立憲デモクラシーのホームページにアップされていると思いますので,チェックしてみてください。
つづいて第1部に入りました。この三谷太一郎先生の基調講演が素晴らしいものでした。まるで,大学の講義を聴いているような,一つひとつ懇切丁寧な解説があって,とても説得力のある内容でした。配布されたレジュメの「はじめに」のところだけ,引用しておきましょう。
はじめに
日本における「立憲主義」を二つの側面から考える
1)権力分立制
2)議会制
したがって問題は第一に日本になぜ権力分立制が導入されたのか,第二に日本になぜ議会制が成立したのか,日本における「立憲主義」は何を歴史的母胎として生まれたのか。第三に権力分立制および議会制の下でなぜ複数政党制が成立したのか。要するに日本においては「立憲主義」および複数政党制がなぜ必要であったのか。
こういうお話は学生時代に聴いておきたかった,と悔やまれるほどの素晴らしいものでした。ひとことだけ,わたしの理解を書いておけば,権力分立制も議会制もその萌芽は徳川幕府に求めることができる,その伝統を明治政府が引き継ぎ,紆余曲折をへながらも,かろうじて立憲デモクラシーの考え方や制度を練り上げてきた,したがって,立憲デモクラシーの理念はいわば国民的財産なのだ,ということです。
この基調講演に対して,加藤陽子さんがつけたコメントがまた抜群でした。時間があればもっと詳細な展開があったのでしょうが,残念。
つづけて第2部に。
軍事評論家の前田哲男さんのお話も,とても魅力的な内容でした。とくに,わたしには軍事評論という世界のことは無知に等しかったので,その内容がとても新鮮に感じられました。しかし,残念なことに時間が押していて,後半は一気に概説をして終わってしまいました。
この講演に,若き憲法学者の木村草太さんがコメント。こちらも時間があればもっと面白い話の展開になったろうに・・・と惜しまれました。
まあ,いずれにしても,これだけのプログラムに対して,たった2時間はあまりにも短すぎ。それでも,終了したのは午後8時30分をまわっていました。もっとも,時間が足りなかったなぁ,と惜しまれるくらいがちょうどいいのかも知れません。夕食前でしたが,空腹どころか満腹感(頭の中)でいっぱいでした。
いま,振り返ってみますと,とりわけ,三谷太一郎先生のお話はわたしにとっては強烈なインパクトを与えました。いつか,時間をみつけて三谷先生のご著書を読ませていただこうと思いました。徳川時代があんなに長くつづいた背景には,ご公儀の権力の分立と合議制が大きな意味をもっていたのか,と気づかされたからです。
いまもその余韻に酔い痴れています。
たぶん,IWJで映像が流されると思いますので,もう一度,聴いてみたいと楽しみにしています。
以上,つたないわたしの感想とご報告まで。
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