2013年11月23日土曜日

東京五輪(2020年)は大丈夫か。はやくも軋みはじめた舞台裏も舞台表も。

 猪瀬東京都知事の不祥事(かぎりなく黒に近いグレイ)が突然,表出し,あっと驚いています。テレビの会見をみるかぎりでは,すでに,眼はうつろ,鬼の泣き顔,涙目,声は小さい,など明らかに犯罪者の顔でした。その意味では,この人は正直な人だなぁ,と思いました。全部,顔に表れる,わかりやすい人だと。

 しかし,こんな情けない顔になってしまった都知事のもとでの五輪開催は,なんともはやおぼつかない,というのがわたしの第一印象。こんなうしろめたさを背負って,平然とリーダーシップを発揮することはまず不可能ではないかと思います。せめて,安倍首相のように,さも当然という顔をして,堂々と「 under control」と嘯くくらいの心臓(晋三)の強さと無知蒙昧さを持ち合わせないと,政治家はつとまらないようです。

 まあ,冗談はともかくとして,当然のことながら,都知事の進退問題がこれからしばらくはつづくことになるのでしょう。猪瀬知事が,いさぎよく,さっと身を引けば立派。そうなれば,クリーンな知事を押し立てて,すっきりとした五輪の理想を実現すべく,ほんのわずかでもいい軌道を修正し(巨大化ではなくこころの籠もったおもてなし),その方針を明確にして・・・・という希望的観測も可能となるでしょう。しかし,一度,味をしめてしまった権力という美酒・美食を,そうそう簡単にあきらめることはできないでしょう。あの権力大好き人間にみえる猪瀬知事のことを考えると・・・・。となると,東京五輪は泥沼化してしまうことになりかねません。

 第一に,五輪施設の工事を請け負いたくてうずうずしているゼネコンが待ち受けています。しかし,こんな問題が浮上してくると,手慣れたはずのゼネコン各社も,いささか躊躇してしまうのではないか,と思われます。落札につきものの,妙術が,いつものようには使えないというジレンマが後追いしてくるはずだから,です。

 加えて,新国立競技場デザイン審査会をめぐる,信じられないスキャンダルが報じられています(22日)。新国立競技場のデザインがコンペ方式で選定されたことは,よく知られているとおりです。その審査委員会は安藤忠雄氏を委員長に日本人委員が8人,そこにイギリスの委員が2人,計10名で構成されたということです。なのに,イギリスの委員2人は一次審査のときには来日することもなく欠席。二次審査は「必要な情報を提供して審査してもらった」とJSC新国立競技場設置本部の高崎義孝運営調整課長が説明。しかし,情報提供の仕方などの詳細は明らかにしなかった,ということです。

 このイギリスの委員2人は,明治神宮外苑の景観など,現地を見ることもなく二次審査を「与えられた情報」だけで判断した,というのです。さらにはイギリスの2人の委員以外に欠席者がいたかどうかも回答しなかった,と新聞は報じています(『東京新聞』11月22日朝刊)。ということは,欠席者があった,ということの証左。

 この記事がでるしばらく前の新聞記事によれば,安藤忠雄委員長は一切の取材を拒否している,ということです。これが事実だとしたら,もはや,疑う余地はありません。取材を拒否しなければならない,なんらかの「うしろめたさ」を感じている,なによりの証拠です。

 どうやら審査委員会は,審査員同士の十分なディスカッションも行われないまま,なあなあか,あるいは鶴の一声で,新デザインを選定してしまったようです。これは「コンペではない」と,応募した建築家が批判しています。つまり,審査員全員が出席してディスカッションをした上で決するのがコンペであって,そうでないものはコンペとはいえない,というのです。ごもっとも,としか言いようがありません。

 ただでさえ,あまりに巨大すぎる,景観を損ねる,維持管理(メンテナンス)が大変である,建築の構造上の問題がある,建築技術が追いつかない,などなど問題点が続出しています。これらの問題を解決するだけでも大変なのに,選定のプロセスまで疑念が生まれてしまい,その問いに対して「ノー・コメント」,あるいは,取材拒否では,この船は前に進めません。

 そこに,猪瀬知事のスキャンダルです。船頭さんがふらつきはじめ,JSC(日本スポーツ振興センター)の不透明な応答がつづくかぎり,これはしばらくの間,相当に揺れ動きそうです。つつけばつつくほどボロがでてきそうです。まるで,崩壊寸前の日本丸の現状の典型的な縮図をそこにみる思いがします。

 すでに,建築家の槙文彦さんら100人の識者が修正を求める要望書を文部科学省やJSCなどに提出していることは,よく知られているとおりです。加えて,作家の森まゆみさんらも神宮外苑の景観などの保存を求める活動を始めています。この輪は静かに都民の間にも広がりつつあります。

 そこに猪瀬知事の不祥事です。火に油を注ぐようなことになってきました。総事業費1800億円という巨額な資金をどこから捻出するのか,結局は,国民の税金にふりかかってくるのは明々白々です。ただでさえ,フクシマをかかえ,除染問題をかかえ,避難住民の救済問題をかかえ,いくら金があっても足りない現実を無視して,なにゆえに「<超>巨大な新国立競技場」を建造しなくてはならないのか,わたしには理解不能です。

 みなさんは,どのようにお考えでしょうか。ご意見をお聞かせください。

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