このブログでも『談』という季刊雑誌のことは,折にふれ書いてきましたのでご記憶の方も少なくないと思います。ちょっと類のない,そしてまた,定義のしずらい不思議な雑誌です。言ってしまえば,これまでのアカデミズムのジャンルを飛び越えた,あるいは横断する,トランス・ディスプリナリーな議論を展開することを主眼に置いた雑誌といえばいいでしょうか。
年に4冊。時代の最先端を切り拓く研究者の話を,編集長の佐藤真さんが引き出し,整理してまとめたり,あるいは,ジャンルの異なる論者に対談をさせ,思いもよらぬ議論を展開させ,それをまとめたり,とさまざまな手法で未開拓の知の地平を切り拓くことをめざす雑誌です。そして,それを仕掛けたエディター(佐藤真)によるノート,インタヴューや対談の「before」と「after」が毎号,掲載されていて,これがなかなか読ませるすぐれものです。そして,エディター自身の思考が「進化」していくのが手にとるようにわかる,そういう雑誌でもあります。
毎号,表紙の右上に「Speak, Talk, and Think 」とさりげなく刷り込まれているのですが,これこそがこの雑誌のコンセプトをもののみごとに表しているように思います。つまり,人に向かって「話す」,あるいは,人と「語り合う」ことによって思考の地平をさらに切り拓いていこう,というわけです。もっと言ってしまえば,ひとりで沈思黙考するのではなく,みずからの思考を「声」にだして話しかけたり,お互いの思考をキャッチボールしながら語り合うこと,そのことによって新たな知が拓かれてくる,その可能性にかけた思考実験でもあります。それが,この雑誌の魅力といっていいでしょう。
『談』は,1973年,TASC(たばこ総合研究センター,現在は公益財団法人たばこ総合研究センター)によって創刊された雑誌です。「はじめに」によれば,「『談』は40年にわたり,人間の嗜好,人間の欲求,人間の価値観の変化に関する様々なテーマを取り上げてまいりました」ということです。ですから,この40年間に取り上げられた話題は,ちょっと信じられないほど多岐にわたります。その仕掛けの中心にいた人が編集長の佐藤真さんです。
その佐藤真さんが,なにがこの人の眼にとまったのか,わたしの出番を用意してくださいました。しかも,わたしが知らなかった柳澤田実さんという研究者との対談という「場」でした。まさに,初対面の若い女性の研究者です。ですから,大急ぎで柳澤さんのお仕事を勉強させてもらって,まさに,泥縄式で行われた対談でした。しかも,その「場所」が荒川修作がつくった集合住宅の一室でした。その部屋そのものが,人間の五感を狂わせる,いや,活性化させる不思議な仕掛けがつまった,いわゆる荒川ワールドでした。
お膳立ては完璧でした。ですから,おのずから,いつものわたしではないわたしが表出してきて,自分でも驚くような話をはじめているのです。その,とんでもない話に柳澤さんが,これまた輪をかけたような不思議な話をされます。たとえば,「イエス・キリストはスポーツマンだった」という具合です。そして,こんな話題に触発されるようにして,わたしはわたしで,これまたとんでもない話題を提供したりして,あっという間に予定された時間がすぎてしまいました。
このときのこの対談が,この『談』──100号記念選集に再録されたのです。述べ人数にして400人の話のなかから40人が選ばれ,その中の一人に入れていただいた,というわけです。これはまことに名誉なことであって,嬉しいかぎりです。まさに,感無量です。
この100号記念選集が昨日(12日)にとどきました。今日(13日)は一日中,夢中になってあちこち拾い読みをしてすごしました。久しぶりに味わう至福の時でした。
たぶん,まもなく書店にも並ぶと思いますので,見かけましたら手にとってご覧になってみてください。2014年11月23日,初版第一刷,水曜社刊,600ページ,2,200円,はお買い得だと思います。
とりあえず,ご紹介と感想とお薦めまで。
年に4冊。時代の最先端を切り拓く研究者の話を,編集長の佐藤真さんが引き出し,整理してまとめたり,あるいは,ジャンルの異なる論者に対談をさせ,思いもよらぬ議論を展開させ,それをまとめたり,とさまざまな手法で未開拓の知の地平を切り拓くことをめざす雑誌です。そして,それを仕掛けたエディター(佐藤真)によるノート,インタヴューや対談の「before」と「after」が毎号,掲載されていて,これがなかなか読ませるすぐれものです。そして,エディター自身の思考が「進化」していくのが手にとるようにわかる,そういう雑誌でもあります。
毎号,表紙の右上に「Speak, Talk, and Think 」とさりげなく刷り込まれているのですが,これこそがこの雑誌のコンセプトをもののみごとに表しているように思います。つまり,人に向かって「話す」,あるいは,人と「語り合う」ことによって思考の地平をさらに切り拓いていこう,というわけです。もっと言ってしまえば,ひとりで沈思黙考するのではなく,みずからの思考を「声」にだして話しかけたり,お互いの思考をキャッチボールしながら語り合うこと,そのことによって新たな知が拓かれてくる,その可能性にかけた思考実験でもあります。それが,この雑誌の魅力といっていいでしょう。
その佐藤真さんが,なにがこの人の眼にとまったのか,わたしの出番を用意してくださいました。しかも,わたしが知らなかった柳澤田実さんという研究者との対談という「場」でした。まさに,初対面の若い女性の研究者です。ですから,大急ぎで柳澤さんのお仕事を勉強させてもらって,まさに,泥縄式で行われた対談でした。しかも,その「場所」が荒川修作がつくった集合住宅の一室でした。その部屋そのものが,人間の五感を狂わせる,いや,活性化させる不思議な仕掛けがつまった,いわゆる荒川ワールドでした。
お膳立ては完璧でした。ですから,おのずから,いつものわたしではないわたしが表出してきて,自分でも驚くような話をはじめているのです。その,とんでもない話に柳澤さんが,これまた輪をかけたような不思議な話をされます。たとえば,「イエス・キリストはスポーツマンだった」という具合です。そして,こんな話題に触発されるようにして,わたしはわたしで,これまたとんでもない話題を提供したりして,あっという間に予定された時間がすぎてしまいました。
このときのこの対談が,この『談』──100号記念選集に再録されたのです。述べ人数にして400人の話のなかから40人が選ばれ,その中の一人に入れていただいた,というわけです。これはまことに名誉なことであって,嬉しいかぎりです。まさに,感無量です。
この100号記念選集が昨日(12日)にとどきました。今日(13日)は一日中,夢中になってあちこち拾い読みをしてすごしました。久しぶりに味わう至福の時でした。
たぶん,まもなく書店にも並ぶと思いますので,見かけましたら手にとってご覧になってみてください。2014年11月23日,初版第一刷,水曜社刊,600ページ,2,200円,はお買い得だと思います。
とりあえず,ご紹介と感想とお薦めまで。
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