2012年1月2日月曜日

ウィーンフィルのニューイヤーコンサートを聴く。

久しぶりにウィーンフィルの「ニューイヤーコンサート」を視聴しました。そう,わたしの場合には,まさに,視聴です。なぜなら,クラシック音楽を聴くだけの耳がないので,もっぱら視覚に頼って,この番組を鑑賞した,というわけです。

指揮者の身振りや顔の表情がとても面白くて,もっぱらそちらに関心が向ってしまいます。ことしの指揮者は,マリス・ヤンソンス。どういう経歴の人かは知りません。以前,小沢征爾が指揮したときとはまったく違っていて,そこがとても面白かった。途中で指揮棒を振ることをやめて,両腕をだらりと下げたまま,両眼を閉じ,うっとりとしながらからだを左右に揺さぶるだけのとき(「美しく青きドナウ」の演奏のときもそうでした)には思わず拍手をしてしまいました。

このニューイヤーコンサートには,ほとんど定番となっているウィンナーワルツやポルカがたくさん演奏されます。そのときには,ウィーン国立バレエ団のなかから選ばれたベスト・ダンサーが華麗なダンスを踊ってみせてくれます。その舞台も,なんと,シェーンブルン宮殿やヴェルヴェデーレ宮殿の,かつてのきらびやかな宮廷時代の特別の部屋が使われます。ふだん,一般には公開されていない場所です。その部屋をつぎつぎに移動しながら,男と女のペアリングが微妙な物語を秘めながら,徐々にできあがっていきます。

もうひとつの楽しみは,このニューイヤーコンサートが開催されるウィーン楽友協会の建物を映像でみることです。外観が映し出されたときには,なんだか建物が新しくなったような錯覚さえ覚えました。たぶん,何年に一回かは,きれいに洗って磨き上げることをしていますので,その年に当たったのかもしれません。ふだんは,自動車の排気ガスの影響で,徐々に黒っぽくなっていきますので,ひどいときには「黒い」建物だと勘違いしてしまうほどです。

わたしが初めてウィーンを訪れたとき(ほぼ30年前)には,ウィーンの市庁舎は真っ黒でした。二度目に行ったときには(20年前),ちょうど市庁舎を洗う年でした。ですから,わたしが滞在している間に,黒い建物から白い建物に変化しました。石造建築ですので,それができるというわけでしょう。何回も何回も化粧直しをしている,というわけです。

ウィーン滞在中に,よく散策にでかけたシェーンブルン宮殿のある公園(無料公開)が映し出されたりするのを見るのも,この番組を視聴する楽しみのひとつです。広い,とてつもなく広大な公園ですが,ほとんどくまなく歩いて知悉していますので,風景をみるだけで,からだに刻まれた記憶が呼び覚まされます。ヴェルヴェデーレ宮殿も同じです。ここには美術館も博物館もありましたので,少し遠かったですが,よく通いました。わたしは,美術館・博物館の年間会員になっていましたので,どこも,全部,フリーパスでした。

ニューイヤーコンサートの会場となるウィーン楽友協会の内観も,毎年,少しずつ変化しているように思います。いつも,とてもきれいですが,ことしはとびきりきれいにみえました。古い建物ですので,客席はそんなには多くないので,ここのチケットを手に入れるのは至難の業だといわれています。とくに,ニューイヤーコンサートは,大手の旅行会社がまとめ買いをしてしまいますので,大変です。しかも,楽友協会の年間会員という人も相当数いるわけです。ですから,どうしても聞きたいという人は,一番奥の最上階にある立ち見席のチケットを購入します。わたしも,何度か,この席からコンサートを視聴したことがあります。

演奏時間は,日本時間の午後7時から3時間。日本との時差は8時間ですので,ウィーンの午前11時から午後2時までということになります。ですから,天気のいいときには外の景色がリアル・タイムで映し出されることがありますが,ことしは録画でした。つまり,夏の景色でした。ウィーンの冬は,ほとんど毎日,黒い雲が低く垂れ込めて,太陽がどこにあるのかさえわからないほどです。ほんとうに,暗くて長い冬です。そんなことも思い出しながらニューイヤーコンサートを視聴していました。

また,いつか,ウィーンにでかけてみたい,そんな気持ちが久しぶりにわきあがってきました。
さて,ことしはどんな年になるのでしょう。少しでも,ほんの少しだけでもいい。上を向いて,夢と希望をいだきながら生きることのできる年にしたいものです。

みなさんにとってもいい年になりますように。


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