この二日間,箱根駅伝に釘付けになっていました。もちろん,目玉は柏原君のラスト・ラン。勝ち負けを超越した「自分を超えたい」という異次元世界のランがみたかったからです。しかし,その期待に応えただけではなく,東洋大というチームが一丸となって,この1年間を頑張ってきた努力に,こころからの拍手を送りたいと思います。感動しました。ありがとう。
「21秒」差で負けた昨年の箱根駅伝の「悔しさ」を,チーム全員で共有し,自分の記録を1秒でも2秒でも縮めていこう,そのさきに「優勝」の二文字が浮かんでくる,と監督以下,全員が取り組んだ一年の成果が,みごとにことしの箱根での驚異的な記録となって実現した。
10時間51分36秒。総合新記録。2年ぶり,3度目の優勝。昨年,早稲田大学が樹立した新記録を一気に約8分も更新。驚くべき全員の快走の結果でした。
柏原君もまた,自己記録を36秒短縮。この走りもまたみごとでした。ことしは1位でたすきを受けたので,前の走者を追い抜くシーンはなかったものの,少しも足の疲れを感じさせない快走ぶりは,強く印象に残るものでした。ゆったりとした入りから,徐々に調子をあげていく走り,そして,下りに入ると一気にギアを入れ換えての,ぶっ飛ばしの韋駄天走り。驚異としかいいようのない,鍛えられた脚力。そして,強い意志。出身地のいわきの人たちの苦しみを考えれば,ぼくの苦しみは1時間ちょっとのこと,そんな程度の苦しみに負けるわけにはいきません,と柏原君の快走後の談話。
キャプテン柏原君のこの「闘う姿」を全員がみせて欲しい,と監督は選手たちに頼んだ,といいます。ですから,選手がみんな,みずからの「闘う姿」をひとりずつ表現した結果が,この驚異的な総合新記録を生み出す源泉だったことがわかります。ひとりとして守りの走りはしていなかった,というのも強烈な印象でした。
「負けて強くなる」とむかしから言います。しかし,それを実現することは,とてもむつかしいことだと,わたしは考えています。言うは易すし,されど実行は難し。それをチーム一丸となって実現させた監督は大した人物だと,これまた感動。柏原君は「ぼくはキャプテンとしてはチームのためになにもしてあげられなかった。みんなが,ぼくを助けてくれた。そのお蔭です。みんなに感謝したい」と涙がこぼれるような話をしてくれました。
いっときは,スランプに陥って,チーム練習についていくこともできなかった,といいます。落ち込んだまま郷里のいわきに帰ったら,被災のなかで黙々と努力している知人・友人たちがいて,柏原君のスランプについてはなにも言わずに,黙って優しくつつみこんでくれた,そして,被災によってくじけることなく前を向いて一歩一歩,日々,努力を積み上げる姿で応えてくれた,これがボクの今日の走りにつながった,エネルギーを一杯もらった,背中を押してもらった,その人たちにも感謝の気持ちで一杯です,と語っていました。わたしは,何度,涙したことか。
この若者は,なんと素晴らしい人生哲学を身につけたことか。これは,東洋大の選手たちみんなが共有していることなのでしょう。自分の身を削りながら,自分の可能性にチャレンジする精神。自己との「闘い」。それを支える強い意志(意思)。燃え上がるような情念を内に秘めて,目指すゴールに向かって全身全霊を傾ける,日々の地道な努力の積み重ね。自立心。自律心。
こんな選手集団ができあがったら,もはや,敵なしです。ひとりの生きる人間としての強さをわがものとしたとき,アスリートは大きく飛躍するということを,これほどみごとに提示してくれた例も珍しいと思います。アンカーの斎藤君の走りもみごとでした。苦しさを耐えて,耐えて,ひたすら耐えて,それでもからだを前に進める,この根性。そして,みごとに区間新。
ことしの箱根駅伝は感動の渦でした。
東洋大のみなさん,おめでとう!
そして,素晴らしい感動をありがとう!
〔以下は余録〕
ひとつめは,青山学院大の走りに拍手。ことしは5位。地味ながら,毎年,少しずつ順位を上げて,ここまでやってきました。ゴール前まで,順天堂大,中央大と競り合ってきて,最後の最後にみせたアンカーのラストスパートは感動でした。中央大の選手も限界を超える,何回ものスパートを見せてくれ,びっくりしました。こういう競り合いに勝てる選手がいる青山学院大なら,来年は,優勝争いに加わることでしょう。いまから,楽しみ。
ふたつめは,早稲田大学。このチームには,毎年,異色の選手が登場してきます。ことしは,愛知県の時習館高校卒業の山本選手(1年生)。箱根の山登りで,明治大学の名選手と抜きつ抜かれつの大接戦を演じ,最後はきちんと勝ち取る快走が深く印象に残りました。もうひとりは,同じ愛知県の岡崎高校出身の市川選手(2年生?)。早稲田のアンカーを任され,よく健闘しました。残念ながら明治大学の鎧坂選手(日本学生最高速ランナー,オリンピック候補)に抜かれましたが,それでも僅差ですぐあとを追ってゴール。来年につながる走りだったと思います。時習館高校も岡崎高校も,愛知県では指折りの進学校。でも,どちらの高校もスポーツに力を入れていることで知られています。でも,高校時代に全国区で活躍できるほどの強いクラブはありません。東大野球部にも時習館卒のピッチャーがいます。こういう特別の経歴のない無名の選手が活躍するところに,早稲田大学の強さがあると思います。
みっつめは,城西大の活躍。ことしは6位でゴール。青山学院大とともに,来年の活躍に期待したいと思います。いくつものハードルを一つひとつクリアして,ここまで上がってくる選手たちの努力,そして,監督の指導力に,なにか響くものを感じます。
以下は省略。
「21秒」差で負けた昨年の箱根駅伝の「悔しさ」を,チーム全員で共有し,自分の記録を1秒でも2秒でも縮めていこう,そのさきに「優勝」の二文字が浮かんでくる,と監督以下,全員が取り組んだ一年の成果が,みごとにことしの箱根での驚異的な記録となって実現した。
10時間51分36秒。総合新記録。2年ぶり,3度目の優勝。昨年,早稲田大学が樹立した新記録を一気に約8分も更新。驚くべき全員の快走の結果でした。
柏原君もまた,自己記録を36秒短縮。この走りもまたみごとでした。ことしは1位でたすきを受けたので,前の走者を追い抜くシーンはなかったものの,少しも足の疲れを感じさせない快走ぶりは,強く印象に残るものでした。ゆったりとした入りから,徐々に調子をあげていく走り,そして,下りに入ると一気にギアを入れ換えての,ぶっ飛ばしの韋駄天走り。驚異としかいいようのない,鍛えられた脚力。そして,強い意志。出身地のいわきの人たちの苦しみを考えれば,ぼくの苦しみは1時間ちょっとのこと,そんな程度の苦しみに負けるわけにはいきません,と柏原君の快走後の談話。
キャプテン柏原君のこの「闘う姿」を全員がみせて欲しい,と監督は選手たちに頼んだ,といいます。ですから,選手がみんな,みずからの「闘う姿」をひとりずつ表現した結果が,この驚異的な総合新記録を生み出す源泉だったことがわかります。ひとりとして守りの走りはしていなかった,というのも強烈な印象でした。
「負けて強くなる」とむかしから言います。しかし,それを実現することは,とてもむつかしいことだと,わたしは考えています。言うは易すし,されど実行は難し。それをチーム一丸となって実現させた監督は大した人物だと,これまた感動。柏原君は「ぼくはキャプテンとしてはチームのためになにもしてあげられなかった。みんなが,ぼくを助けてくれた。そのお蔭です。みんなに感謝したい」と涙がこぼれるような話をしてくれました。
いっときは,スランプに陥って,チーム練習についていくこともできなかった,といいます。落ち込んだまま郷里のいわきに帰ったら,被災のなかで黙々と努力している知人・友人たちがいて,柏原君のスランプについてはなにも言わずに,黙って優しくつつみこんでくれた,そして,被災によってくじけることなく前を向いて一歩一歩,日々,努力を積み上げる姿で応えてくれた,これがボクの今日の走りにつながった,エネルギーを一杯もらった,背中を押してもらった,その人たちにも感謝の気持ちで一杯です,と語っていました。わたしは,何度,涙したことか。
この若者は,なんと素晴らしい人生哲学を身につけたことか。これは,東洋大の選手たちみんなが共有していることなのでしょう。自分の身を削りながら,自分の可能性にチャレンジする精神。自己との「闘い」。それを支える強い意志(意思)。燃え上がるような情念を内に秘めて,目指すゴールに向かって全身全霊を傾ける,日々の地道な努力の積み重ね。自立心。自律心。
こんな選手集団ができあがったら,もはや,敵なしです。ひとりの生きる人間としての強さをわがものとしたとき,アスリートは大きく飛躍するということを,これほどみごとに提示してくれた例も珍しいと思います。アンカーの斎藤君の走りもみごとでした。苦しさを耐えて,耐えて,ひたすら耐えて,それでもからだを前に進める,この根性。そして,みごとに区間新。
ことしの箱根駅伝は感動の渦でした。
東洋大のみなさん,おめでとう!
そして,素晴らしい感動をありがとう!
〔以下は余録〕
ひとつめは,青山学院大の走りに拍手。ことしは5位。地味ながら,毎年,少しずつ順位を上げて,ここまでやってきました。ゴール前まで,順天堂大,中央大と競り合ってきて,最後の最後にみせたアンカーのラストスパートは感動でした。中央大の選手も限界を超える,何回ものスパートを見せてくれ,びっくりしました。こういう競り合いに勝てる選手がいる青山学院大なら,来年は,優勝争いに加わることでしょう。いまから,楽しみ。
ふたつめは,早稲田大学。このチームには,毎年,異色の選手が登場してきます。ことしは,愛知県の時習館高校卒業の山本選手(1年生)。箱根の山登りで,明治大学の名選手と抜きつ抜かれつの大接戦を演じ,最後はきちんと勝ち取る快走が深く印象に残りました。もうひとりは,同じ愛知県の岡崎高校出身の市川選手(2年生?)。早稲田のアンカーを任され,よく健闘しました。残念ながら明治大学の鎧坂選手(日本学生最高速ランナー,オリンピック候補)に抜かれましたが,それでも僅差ですぐあとを追ってゴール。来年につながる走りだったと思います。時習館高校も岡崎高校も,愛知県では指折りの進学校。でも,どちらの高校もスポーツに力を入れていることで知られています。でも,高校時代に全国区で活躍できるほどの強いクラブはありません。東大野球部にも時習館卒のピッチャーがいます。こういう特別の経歴のない無名の選手が活躍するところに,早稲田大学の強さがあると思います。
みっつめは,城西大の活躍。ことしは6位でゴール。青山学院大とともに,来年の活躍に期待したいと思います。いくつものハードルを一つひとつクリアして,ここまで上がってくる選手たちの努力,そして,監督の指導力に,なにか響くものを感じます。
以下は省略。
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