2015年3月23日月曜日

『世界』臨時増刊・「沖縄 何が起きているのか」がとどく。充実の内容。必読。

 2015年4月1日発行の『世界』増刊,第868号が定期購読者の恩恵で,今日(3月22日)にとどいた。特集のテーマは「沖縄 何が起きているのか」。

 沖縄が辺野古基地建設をめぐって,いま正念場を迎えている,そのタイミングを見計らったピン・ポイントの特集である。大急ぎで,あちこちめくって全体のイメージをつかむ。その作業がとても楽しい。なぜなら,本号のすみずみにいたるまで,きめ細やかな工夫がこらされていて,なかなかの読みごたえのある内容になっているからだ。

 
冒頭を飾るグラビア「大琉球写真絵巻」(石川真生)が力作である。重いテーマを演劇仕立ての写真にし,するりと招き入れておいて,大きな感銘を与えた上で,冷たく突き放してくる。写真という媒体をいかんなく発揮した,素晴らしい作品となっている。繰り返して眺めたくなるページがつづく。

 このグラビア・ページと対をなすのが,巻末資料ⅠとⅡだ。巻末資料Ⅰは,いわゆる「建白書」の全文と翁長雄志那覇市長スピーチ(2013年1月27日日比谷公園野外音楽堂)。巻末資料Ⅱは,『琉球新報』でたどるドキュメント沖縄。「建白書」はしばしば話題になってきたので,なんとなく承知したつもりになっていたが,本文全文を読むのは初めてだった。だから,とても感銘を受けた。たとえば,「建白書」の正式名称はつぎのようになっている。「沖縄県内全41市町村長・市長村会議長ら県代表によるオスプレイ配備撤回・米軍普天間飛行場の県内移設断念を求める建白書」。日付は「平成25年1月28日」。

 この建白書は,仲井真前県知事が筆頭署名人であったが,その仲井真氏が任期切れの土壇場で,全県民を裏切り,寝返ったのだ。そこが発端となって,こんにちの大混乱を引き起こしていることを,再度,想起させてくれる。その意味で,この全文掲載はとても意義がある。しかも,その内容もじつに簡単明瞭だ。前半は,沖縄県民が味わってきた苦難を訴え,後半で「負担軽減」を願い,最後に,たった「2項目」に要望をまとめている。一つは「オスプレイの配備を直ちに撤回すること」,もう一つは「米軍普天間基地を閉鎖・撤去し,県内移設を断念すること」である。

 話が前後してしまったが,本文は,冒頭に「生きなおす沖縄」(大城立裕)をかかげ,以下に5項目の特集を組んでいる。その内容は以下のとおり。
 1.沖縄の声
 2.積極的平和主義と辺野古新基地建設
 3.沖縄経済の展望
 4.日本と沖縄
 5.私はこう思う

 わたしの知っている人では,松元剛,元山仁士郎,新川 明,仲里 効,半田 滋,G.マコーマック,屋良朝博,前泊博盛,西谷 修,井筒和幸,佐藤 優,落合恵子,片山善博,吉永みち子,などが名を連ねている。

 わたしが敬愛してやまない友人の西谷 修さんは,「辺野古の夜の授業──若者たちが吹き込む『未来』の風」という一文を寄せている。キャンプ・シュワブ前のテント撤去の日の夜(2015年2月26日),そこに集まった学生たちと車座になって夜の授業を展開した様子を伝えている。わたしは個人的にこのいきさつについて若干の話を聞いていたので,より一層,興味深く読ませていただいた。若者たちを啓発するという教師としての責務をきちんと果たそうとする,いつもながらの西谷さんの姿勢には頭が下がる。

 まだ読んではいないが,ガバン・マコーマックさんの「オール日本対オール沖縄──辺野古,高江,与那国島」や,座談会「いま発明し直される『独立』──伏流水としての自立論の系譜」(新川 明×仲里 効×親川志奈子),など魅力的な内容が満載である。

 翁長県知事が,日本政府を相手にして,最後の切り札である「決戦」を打ち出すかどうか,その決断が迫られている。その結果いかんによっては,沖縄の今後は大きく流れが変わる。そういう逼迫した情況にある沖縄問題を考える上では,じつにタイムリーな増刊号の特集である。

 必読をお薦めしたい。

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