2015年4月8日水曜日

火中の栗に手をつっこんだ菅官房長官。翁長知事の一人勝ち。沖縄県民の支持83%。

 誤魔化しの詭弁は正論には通じなかった。そのことは最初からわかっていたことだ。しかし,政府が翁長知事からの面談要求を無視し,しかも逃げ回っているという批判の声が高まってきたために,方針を転換した。そして,いかにも誠意があるかのようなポーズをとって,いやいや菅官房長官は沖縄県に乗り込んだ。そして,なんとかなるのでは・・・とタカをくくっていたが,そうは問屋が卸さなかった。

 「辺野古の移設を拒否すれば,普天間が固定化されることになる」(ゾッ!)と脅しをかければ,翁長知事の態度も軟化するのではないか,沖縄県民も「それは嫌だ」というのではないか,と菅長官は計算していたようだ。そういう反応を予測して,辺野古の移設は「法的手続にもとづいて<粛々と>進める」のだ,と打ってでた。しかし,それはあまりにも相手を甘くみすぎていたようだ。翁長知事は待ってましたとばかり噛み付き,反論を展開した。つまり,「上から目線」の傲慢な態度だ。そういう発言を繰り返せばくりかえすほど,県民の反発は高まるばかりだ。そうではなくて,選挙をとおして明白になった県民の民意を尊重し,民主主義を否定するような政治はすべきではない,それはたんなる政治の堕落にすぎない,と。

 これで勝負あった,だ。

 それにしても,今回のような公開の対談はとてもいい。ガラス張りですべてが可視化された。なによりよかったのは,本土のメディアも一斉にこの対談を取り上げ,大きく報道したことだ。もちろん,NHKなどのような「粛々と」ということば遣いだけを取り上げ,問題の本質を歪曲したみっともない報道が多かった。がしかし,なかにはきちんと対談の内容を分析し,問題の所在を浮き彫りにしたメディアもあった。

 これでようやく本土の人間の眼にもオキナワ問題が視野のうちに入ってきた。そして,少なくとも政府と沖縄県との見解が根本的に「すれ違っている」くらいの認識はもったはずだ。少しは関心度が高まったはず。そして,もう少し関心をもった人には,インターネットをとおして,菅×翁長対談の「全文」が読めるようになったことだ。ここには嘘偽りはない。生の声を知ることができる。しかも,もっと知りたい人は『沖縄タイムス』や『琉球新報』をみれば,詳細に対談の内容が分析され,問題の根底になにがあるのか,を知ることもできるようになった。これは,これまでの膠着状態のままの,狸と狐の騙しあいのようにみえる世界から一歩抜け出して,両者の見解の相違を公開の場で明らかにした,という点で大きな前進である。

 両者とも,これからも対談を積み上げようと合意したという。ぜひとも,この約束を菅官房長官は守ってほしい。そして,とことん議論をすべきだ。そして,積み上げたその議論を,つぎつぎに白日の下にさらけ出すことだ。そして,この議論に下手な論評は加えないことだ。両者の生の声をそのまま流すだけでいい。それをどのように受け止めるかは読者が判断することだ。権力におもねるようなげすな評論家の意見などは,かえって邪魔だ。

 このようにして,対談を重ねることによって,本土の人間も少しずつオキナワ問題の,なにが,どのように問題なのかがわかってくる。そうして,オキナワ問題は本土の問題なのだ,という認識に到達するだろう。そうしたとき,はじめて「県外移設」ということが意味をもちはじめてくる。

 その第一歩が踏み出された,その事実を高く評価したい。そして,火中の栗に手をつっこんだ菅官房長官の勇気も高く評価したい。そして,つぎなる対談に臨んでほしい。それこそが公約の「丁寧に説明する」ということだ。そして,問題の本質を明確にした上で,国民の信を問えばいい。

 手練手管の菅官房長官がつぎにどんな手を打ってくるのか,楽しみでもある。それに対して翁長知事は迷うものはなにもない。ひたすら,オキナワが歩んできた「歴史」と「民意」を語るだけでいい。こんどの対談の結果,翁長知事を支持する県民が「83%」に達しているという(『沖縄タイムス』)。この数字は政府にとっては脅威だろう。しかし,だからといって対談を拒めば,さらにこの数字は高くなっていく。まずは,真っ正面から向き合うことが先決だ。

 それよりさきに,まずは,工事を一時中断すべきだ。そして,対談を先行させるべきだ。あるいは,沖縄県が請求している海底調査をさせるべきだ。少なくとも,仲井真前知事の「承認」手続に瑕疵がなかったかどうかの調査結果がでるまでは,工事を中止すべきだ。こんな非民主主義的なことをいつまでもつづけていると,海外のメディアも放ってはおかない。すでに,かなりのメディアが直接,取材に入っているという。そして,民主主義と人権が,当面の話題になっているとも聞く。

 こうなってくると日本政府のみならず,アメリカ政府にとっても看過できない事態というべきだろう。権力を嵩にかけての詭弁は,いつか,必ず化けの皮がはがれるものだ。この際,とことん議論を重ねて,「日米地位協定」の存在まで突っ込んでいくことを期待したい。諸悪の根源はここにあるのだから。人を人として扱わない「協定」などが存在すること自体が奇怪しいのだから。アメリカ政府ともあろうものが・・・・。いやいや,アメリカ政府だから,というべきか。

オキナワ問題の正念場だ。こうなったら,遠く本土からも熱い支援をしていきたい,としみじみおもう。いつも書くことだが,まずは,できることから。

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