ちょっと事情があって夕食が遅くなり,食休みをしながら「報道ステーション」を見ようか,「オイコノミア」を見ようかと迷った末に,こちらにチャンネルを合わせてみた。新聞の番組紹介には,オイコノミア 又吉直樹×経済学▽誰からモノを買う?現代の買い物トレンドとその背景,とある。
番組の構成は,又吉直樹がいろいろの現場を取材して歩き,その取材の結果を経済学の東大教授(名前は忘れてしまった)と,その友人でベンチャー・キャピタリスト(こちらの名前も忘れてしまった)とを交えて3人であれこれ意見を交わす,というもの。通しテーマは「顔のみえない買い物か,顔のみえる買い物か」を軸にして,どちらが買い物上手と言えるのか,を考えることにあるのかな,というところが見ていて感じたところ。
取材先は,老舗の眼鏡屋さん(当代で4代目),神奈川食べもの通信,保育を支援するNPO法人,など。経済学の東大教授は,新美南吉の『手ぶくろを買いに』という童話を紹介しながら,経済の仕組みについて解説をする。それに又吉直樹がからみ,ベンチャー・キャピタリストがからむ,という具合に番組は進展していく。意外なのは,東大教授でもなく,また,ベンチャー・キャピタリストでもなく,又吉直樹の存在が光っているということだ。
地味なお笑い芸人としてデビューして注目を集めながら,その一方では『火花』(文藝春秋)という小説を書いて話題となった作家という二つの顔をもつ又吉直樹の持ち味が,この「オイコノミア」という番組をとおして存分に発揮されている。つまり,インタヴューアーとして,あるいはMCとしての,もう一つの顔がこの番組をとおして現れつつある,ということだ。
相変わらず地味なのだが,素人目線から「オイコノミア」の世界に分け入っていこうとする姿勢が,じつに自然体で落ち着いて耳を傾けることのできる番組になっている。まあ,不思議な魅力をもった男であることを再認識させられた。この番組は長続きするのではないか,とそんな予感ももたされた。次週もみてみようとおもわせられる,そんな番組になっている。
老舗の眼鏡屋さんでは,4代目という店主がお客さんの要望をしっかりと引き出しながら,一番気に入ってもらえる眼鏡を探し当て,お客さんの顔を採寸して,それを熟練の職人さんにオーダーし,できあがったものをお客さんに手わたす,そのときに,さらに細かなお客さんとの打ち合わせをし,微調整を職人さんに依頼する,という段取りが細かに紹介される。そういう話を店主から又吉直樹が引き出す。そういう老舗ならではの仕組みを明らかにしていく。当然のことながら,値段は相当に高いものになる。こうした買い物を「高い」とみるか,好みや安心や修理という長い目でみれば「安い」とみるか,この点を東大教授とベンチャー・キャピタリストを交えて,又吉直樹がさらに話題を広げ,深めていく。そうして,オイコノミアの始原の問題へと思考を導いていく。このあたりを,ごくふつうの会話をとおして,核心に迫っていく又吉直樹の手腕はなかなかのものだ。
こうして,二番目の現場である「神奈川食べもの通信」の編集者を取材し,そこでの話題をみごとに引き出していく。育児支援をめざすNPO法人の取材も同様だ。これらの取材をみながら,それだけでも,いろいろとわたしは考えさせられた。そうか,そういう仕組みになっているのか,と。つまり,大企業によってみえにくくなってしまった経済の仕組みを,もう一度,もっとも素朴な「オイコノミア」が立ち上がる始原の姿から見直してみよう,というのだ。
そのことに気づいたときに,わたしは思わず「ニヤリ」と笑ってしまった。この番組のプロデューサーやディレクターの意図するところがみえてきたからである。そして,それを,又吉直樹というキャラクターをとおして導き出そうとしている意図も納得できたからである。その意味で,この地味な芸人・又吉直樹を起用したのは大正解だった,と言ってよいだろう。
そして,又吉直樹もまた,もう一皮剥けようとしている。まだ,とてもたどたどしいのだが,それがまたなかなかいい。双方にとってめでたし,めでたしだ。この番組はしばらく追っかけてみようとおもう。仕掛けが意味深であって,魅力的でもある。別の見方をすれば,この番組がどこまで進化(深化)を遂げるかも魅力の一つだ。
久しぶりに「なるほど」と首肯した,いい番組だった。そして,これからの楽しみにもなった番組でもあった。お薦めである。
番組の構成は,又吉直樹がいろいろの現場を取材して歩き,その取材の結果を経済学の東大教授(名前は忘れてしまった)と,その友人でベンチャー・キャピタリスト(こちらの名前も忘れてしまった)とを交えて3人であれこれ意見を交わす,というもの。通しテーマは「顔のみえない買い物か,顔のみえる買い物か」を軸にして,どちらが買い物上手と言えるのか,を考えることにあるのかな,というところが見ていて感じたところ。
取材先は,老舗の眼鏡屋さん(当代で4代目),神奈川食べもの通信,保育を支援するNPO法人,など。経済学の東大教授は,新美南吉の『手ぶくろを買いに』という童話を紹介しながら,経済の仕組みについて解説をする。それに又吉直樹がからみ,ベンチャー・キャピタリストがからむ,という具合に番組は進展していく。意外なのは,東大教授でもなく,また,ベンチャー・キャピタリストでもなく,又吉直樹の存在が光っているということだ。
地味なお笑い芸人としてデビューして注目を集めながら,その一方では『火花』(文藝春秋)という小説を書いて話題となった作家という二つの顔をもつ又吉直樹の持ち味が,この「オイコノミア」という番組をとおして存分に発揮されている。つまり,インタヴューアーとして,あるいはMCとしての,もう一つの顔がこの番組をとおして現れつつある,ということだ。
相変わらず地味なのだが,素人目線から「オイコノミア」の世界に分け入っていこうとする姿勢が,じつに自然体で落ち着いて耳を傾けることのできる番組になっている。まあ,不思議な魅力をもった男であることを再認識させられた。この番組は長続きするのではないか,とそんな予感ももたされた。次週もみてみようとおもわせられる,そんな番組になっている。
老舗の眼鏡屋さんでは,4代目という店主がお客さんの要望をしっかりと引き出しながら,一番気に入ってもらえる眼鏡を探し当て,お客さんの顔を採寸して,それを熟練の職人さんにオーダーし,できあがったものをお客さんに手わたす,そのときに,さらに細かなお客さんとの打ち合わせをし,微調整を職人さんに依頼する,という段取りが細かに紹介される。そういう話を店主から又吉直樹が引き出す。そういう老舗ならではの仕組みを明らかにしていく。当然のことながら,値段は相当に高いものになる。こうした買い物を「高い」とみるか,好みや安心や修理という長い目でみれば「安い」とみるか,この点を東大教授とベンチャー・キャピタリストを交えて,又吉直樹がさらに話題を広げ,深めていく。そうして,オイコノミアの始原の問題へと思考を導いていく。このあたりを,ごくふつうの会話をとおして,核心に迫っていく又吉直樹の手腕はなかなかのものだ。
こうして,二番目の現場である「神奈川食べもの通信」の編集者を取材し,そこでの話題をみごとに引き出していく。育児支援をめざすNPO法人の取材も同様だ。これらの取材をみながら,それだけでも,いろいろとわたしは考えさせられた。そうか,そういう仕組みになっているのか,と。つまり,大企業によってみえにくくなってしまった経済の仕組みを,もう一度,もっとも素朴な「オイコノミア」が立ち上がる始原の姿から見直してみよう,というのだ。
そのことに気づいたときに,わたしは思わず「ニヤリ」と笑ってしまった。この番組のプロデューサーやディレクターの意図するところがみえてきたからである。そして,それを,又吉直樹というキャラクターをとおして導き出そうとしている意図も納得できたからである。その意味で,この地味な芸人・又吉直樹を起用したのは大正解だった,と言ってよいだろう。
そして,又吉直樹もまた,もう一皮剥けようとしている。まだ,とてもたどたどしいのだが,それがまたなかなかいい。双方にとってめでたし,めでたしだ。この番組はしばらく追っかけてみようとおもう。仕掛けが意味深であって,魅力的でもある。別の見方をすれば,この番組がどこまで進化(深化)を遂げるかも魅力の一つだ。
久しぶりに「なるほど」と首肯した,いい番組だった。そして,これからの楽しみにもなった番組でもあった。お薦めである。
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