2015年11月28日土曜日

前倒しTPP対策は,剥き出しの選挙運動そのもの。

 TPP問題に関して,政府はめちゃくちゃなことを始めている。しかも,よくよく考えてみると,みごとなまでの計算・打算がそこには働いている。恐るべし,アベ政権。こんなことまでやるのかと,もはやことばを失ってしまう。しかも,そのシナリオを新聞・テレビなどの大手メディアはみてみぬふりをしている。一蓮托生,日本丸沈没に向かってまっしぐら・・・・。

 いまの,わたしの眼にはそのようにみえて仕方がないのだが・・・・。
 その理由について,述べておこう。

 
11月26日(木)の東京新聞は,上の写真のような記事をかかげている。

 まずは,この記事のツカミの部分を引用しておこう。

 政府は25日,環太平洋連携協定(TPP)への対策をまとめ,「総合的なTPP 関連政策大綱」として発表した。中小企業の製品や農産品の輸出支援と,安価な農産品の流入で打撃が予想される農業関係者への影響緩和策が柱。農業の収益力を高めるための対策など,政府が対応を急ぐ政策は,年末に編成する2015年度補正予算案や16年度当初予算案に盛り込む。さらに対策を検討し,来年秋をめどに追加する。

 すでに,民主党からは「影響の試算もないのに補正予算を視野に入れた対策をまとめるのは(来夏の参院選に向けた)自民党の選挙対策だ」という批判が出ており,国会審議での対立は必至だ,と東京新聞は報じている。

 そのとおりで,政府自民党は,TPPを旗印にかかげ,さっさと選挙運動を始めている,としか思えない。それも,すべて「空手形」を切っているだけの,「みせかけ」であり,税金を使っての「金のばらまき」(買収=選挙違反)に一意専心しているだけの話だから,あきれてしまう。わたしがこのように考える根拠をいくつか挙げておこう。

 ひとつには,もし仮に,TPPの条約が締結されるとしても,まだ2,3年先のことになること。大筋合意と言っているのは日本だけ。まだまだ,これから詰めなくてはならない大問題が,どの国にも山積している。だから,大筋合意どころの話ではないのだ。それらが,かりにまとまったとしても,各国の議会の承認を得なくてはならない。とりわけ,アメリカの次期大統領候補は,いずれの党も「TPP反対」の意思を表明している。ほかの国も最終的には降りればいいと考えているところも少なくない,という。日本は,「アメリカ様」次第で,どちらにも転ぶ。つまり,TPPが成立するかどうかも,まったく定かではなく,むしろ,怪しいということだ。わたしの個人的な推測では,最終的に空中分解する,とおもっている。政府自民党もどちらでもいい,と考えているに違いない。だって,「アメリカ様」次第なのだから。

 ふたつには,TPP条約が成立する前に,国家が税金を用いてTPP対策を講ずることは禁止されているということ。もし,それをやった場合,外国企業の不利益が生じた場合には,あとで罰金を払わなくてはならないという「ISDS」条項があること。このことを政府自民党は百も承知の上で,完全に無視している。そして,さっさと予算化して,中小企業や農業への支援を現実化しようというのだ。要するに,来夏の参院選の票集めのための金のばらまき(買収行為)だ。要するに,選挙に勝ってしまえば,あとはTPPがどうなろうと構わない,というのが政府自民党のスタンスだ。

 
こんな「ISDS」条項を無視するようなことを,政府自民党が平気でやってしまう背景には,どうせ,TPPはつぶれる,という見通しに立っているからだとしか言いようがない。そして,選挙に勝つためには手段を選ばず・・・ということだ。議席だけ確保してしまえば,あとはこちらのもの,という発想だ。その点,TPPは,利用するにはまことに都合のいいツールなのだ。どうせ,つぶれてしまうのだから・・・・。

 
みっつには,臨時国会をスルーした最大の理由は,このTPP政策大綱をつくり,国会承認をとりつけるための準備をするためだったということ。憲法を無視してまでも,臨時国会の開催をスルーしたのはこのためだった。たとえ,このTPP政策大綱が,「焼き直し」や根拠を欠く目標であろうが,とにかく提示して,予算化してしまえばそれでいいのだ。国会での答弁は,戦争法案(安保法制)のときと同じように,同じことを何回も何回も繰り返し答弁して,時間を稼ぎながらごまかしてしまえばいい,と学習済みである。またもや,空疎な国会論議がはじまる。それでも,数の論理で押し切ってしまおう,というのだ。

 というような具合で,まだまだ,問題点を挙げていけばきりがないほどだ。

 要するに,過去の自民党政権が慎重に構えてきた危ない橋を,憲法を無視してまでも平気で渡ってしまおう,という戦後日本の最悪の政治が,またまた,アベ政権によって展開されようとしているのだ。このことをしっかりと胸に刻んで,これからの推移を見届けていくことが肝要だ。まあ,つぎからつぎへと,国民に「猫騙し」をかけて,一気呵成に押し切ってしまおうというのだ。自民党内部にも,相当に,反対論があると聞く。しかし,公言できないのは,小選挙区制での党公認を確保するためだという。小選挙区制が,ファシズムを生みだすツールになるとは・・・・。たかが制度,されで制度。制度,恐るべし。

 もはや,歯止めの効かなくなってしまった日本丸狂想曲はどこまで鳴り響いていこうとしているのだろうか。このまま放置しておくことは,われわれ国民の怠慢だ。立て,そして,声をあげよ。

 自由と民主主義を守るために。それは「今だ!」。

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