お二人の息の合った対談が,読んでいて心地よいのです。すでに,何回も朝日カルチャーセンターで対談を重ねてきていらっしゃるお二人ですので,お互いに開かれた関係がしっかりと出来上がっています。ですから,余分な前提もなにもなしに,いきなり問題の本質に切り込んでいきます。そこが心地よいのだと思います。
それに,なんといっても,テーマ「社会規範が液状化するスパイラル」が魅力的です。わたしには,まだ,よくわかっていなかったことがらがみごとに解消される内容で,深く納得してしまいました。なぜなら,,「どこかで大きな地殻変動が起きている」という漠然としたわたしの疑問にもののみごとに応えてくださっていたからです。その理由を「社会規範の液状化」ということばで言い当ててくださり,一気にわたしの中の疑問が氷解しました。
子どものころ,みんなで順番に将棋の駒を一つずつ積み上げていく遊びをしたことを思い出します。慎重に積み上げていくと,かなり高いところまで到達します。が,どこかでバランスが崩れると一気に倒壊してしまいます。
それと同じようなことが,ことしの「7月1日」に,日本の政治の世界で起こりました。集団的自衛権の行使容認に関する閣議決定。この閣議決定は,言ってしまえば,憲法9条を無視した「憲法違反」です。「解釈改憲」などということばを編み出し,あたかも合法であるかのごとき「毒」を撒き散らし,国民にめくらましをかましておいて,憲法9条をないがしろにしてしまう,そんな暴挙にでた日,それが「7月1日」。
このできごとを小森さんは「まさしくクーデターです」と断言し,西谷さんは,「本当にそうです」と応答。さらに,この7月1日が「歴史的な日」だという意味は,あらゆるレジディマシーの足元が崩されたということです,と応じています。
その前の段階の議論のなかで,西谷さんは,つぎのようにも発言されています。
「・・・憲法はこの国や社会の基本法です。あらゆる法の参照軸です。そして,様々な法律ができる際の枠組みを決めています。それが強引かつ勝手な解釈で変えられると,根幹が崩れて規範のいわば液状化が起こります。要するに政府自らが無法状態を作り出すということです」。
解釈改憲による集団的自衛権の行使容認の閣議決定とは,憲法を無視した暴挙であり,政府自らが無法状態を作り出す,そういう規範の液状化を引き起こす,きわめて重大な事態を率先垂範してみせた,ということです。
「規範がなかったら人間社会は成り立たない。最初の規範を受け入れることで,コミュニケーションが可能になります。憲法は,社会を成り立たせる法システムの,最初の基軸です。これを液状化させていいのかと,問いたい」,とも西谷さんは発言されています。ここが「社会規範が液状化するスパイラル」ということの肝だと受け止めました。
思い起こせば,すでに一年前には,この規範の液状化ははじまっていました。政府のやることなすこと,はちゃめちゃでした。それを批評する論者はことごとくメディアから排除され,イエスマンだけを取り立てる,そういうメディア対策を政府は強烈に推し進めてきました。その結果が,こんにちのメディアのこの体たらくです。この流れに抗して,雑誌『世界』は必死になって防戦の論陣を張ってきています。その一つの重要な警鐘が,この小森陽一・西谷修対談となって表出しているのだ,と思います。
以上が,わたしの読後の感想の要点です。じつは,この対談は多岐にわたる問題を取り上げ,「いま,現在」わたしたちが熟慮しなくてはならない,きわめて重要な視点をいくつも提示してくれています。その見出しだけでも紹介しておきたいと思います。
社会規範が液状化するスパイラル
「歴史的」閣議決定の日に考える
1.閣議決定が意味するもの
2.憲法が持つ規範とは
3.再軍備へ向けたアメリカの思惑
4.「歴史的な日」7・1
5.多国籍企業は何をもたらすか
6.教育改革がむかう場所
7.靖国問題が照らす英霊の創出
8.憲法九条が成し得る国際貢献
9.第二次安倍政権崩壊の兆し
10.社会の液状化をふせぐ市民の声
以上です。ぜひとも,ご一読のほどを。
それに,なんといっても,テーマ「社会規範が液状化するスパイラル」が魅力的です。わたしには,まだ,よくわかっていなかったことがらがみごとに解消される内容で,深く納得してしまいました。なぜなら,,「どこかで大きな地殻変動が起きている」という漠然としたわたしの疑問にもののみごとに応えてくださっていたからです。その理由を「社会規範の液状化」ということばで言い当ててくださり,一気にわたしの中の疑問が氷解しました。
子どものころ,みんなで順番に将棋の駒を一つずつ積み上げていく遊びをしたことを思い出します。慎重に積み上げていくと,かなり高いところまで到達します。が,どこかでバランスが崩れると一気に倒壊してしまいます。
それと同じようなことが,ことしの「7月1日」に,日本の政治の世界で起こりました。集団的自衛権の行使容認に関する閣議決定。この閣議決定は,言ってしまえば,憲法9条を無視した「憲法違反」です。「解釈改憲」などということばを編み出し,あたかも合法であるかのごとき「毒」を撒き散らし,国民にめくらましをかましておいて,憲法9条をないがしろにしてしまう,そんな暴挙にでた日,それが「7月1日」。
このできごとを小森さんは「まさしくクーデターです」と断言し,西谷さんは,「本当にそうです」と応答。さらに,この7月1日が「歴史的な日」だという意味は,あらゆるレジディマシーの足元が崩されたということです,と応じています。
その前の段階の議論のなかで,西谷さんは,つぎのようにも発言されています。
「・・・憲法はこの国や社会の基本法です。あらゆる法の参照軸です。そして,様々な法律ができる際の枠組みを決めています。それが強引かつ勝手な解釈で変えられると,根幹が崩れて規範のいわば液状化が起こります。要するに政府自らが無法状態を作り出すということです」。
解釈改憲による集団的自衛権の行使容認の閣議決定とは,憲法を無視した暴挙であり,政府自らが無法状態を作り出す,そういう規範の液状化を引き起こす,きわめて重大な事態を率先垂範してみせた,ということです。
「規範がなかったら人間社会は成り立たない。最初の規範を受け入れることで,コミュニケーションが可能になります。憲法は,社会を成り立たせる法システムの,最初の基軸です。これを液状化させていいのかと,問いたい」,とも西谷さんは発言されています。ここが「社会規範が液状化するスパイラル」ということの肝だと受け止めました。
思い起こせば,すでに一年前には,この規範の液状化ははじまっていました。政府のやることなすこと,はちゃめちゃでした。それを批評する論者はことごとくメディアから排除され,イエスマンだけを取り立てる,そういうメディア対策を政府は強烈に推し進めてきました。その結果が,こんにちのメディアのこの体たらくです。この流れに抗して,雑誌『世界』は必死になって防戦の論陣を張ってきています。その一つの重要な警鐘が,この小森陽一・西谷修対談となって表出しているのだ,と思います。
以上が,わたしの読後の感想の要点です。じつは,この対談は多岐にわたる問題を取り上げ,「いま,現在」わたしたちが熟慮しなくてはならない,きわめて重要な視点をいくつも提示してくれています。その見出しだけでも紹介しておきたいと思います。
社会規範が液状化するスパイラル
「歴史的」閣議決定の日に考える
1.閣議決定が意味するもの
2.憲法が持つ規範とは
3.再軍備へ向けたアメリカの思惑
4.「歴史的な日」7・1
5.多国籍企業は何をもたらすか
6.教育改革がむかう場所
7.靖国問題が照らす英霊の創出
8.憲法九条が成し得る国際貢献
9.第二次安倍政権崩壊の兆し
10.社会の液状化をふせぐ市民の声
以上です。ぜひとも,ご一読のほどを。
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