日本で初めて「能面アーティスト」を名乗る柏木裕美さんにも,特別にお願いをして第2回日本・バスク国際セミナーに華を添えていただきました。バスクの人たちに日本文化の一端を理解してもらうためには能面がいいだろうということになり,ぜひにとお願いをしました。
柏木さんは,西谷さんとわたしの太極拳の兄妹弟子だということもあって,実行委員会のお願いを快くお引き受けくださいました。しかし,素人の考えは甘く,能面の展示と実演の両方をお願いしてしまいました。ところが,結果論ですが,能面を入れる特別のケース(約12,3面が入る)をはじめ,実演用の道具その他,全部で16ケースに及ぶ荷物を宅急便で運ぶことになりました。ほんとうは,赤帽さんに頼んで,美術品運搬用の特別の自動車で運んでもらうところなのですが,あまりにも費用がかさむため,やむなく宅急便にしてもらいました。
荷物をさきに送っておいて,8月5日に会場での設営にとりかかりました。すでに,お願いをしておいたわたしの研究者仲間のFさん,Mさん,Mさんが待ち受けていてくださいました。その他にも,Tさん,その他の若い院生さんたちも手伝ってくださったので,あっという間に設定完了。神戸市外国語大学の事務局の人までお手伝いくださり,ありがたいことです。
会場正面の両サイドに,般若面(左側)と小面(右側)に,漆を塗った欅の板を壁面に天井からぶら下げて,飾りました。そして,会場正面に向かって右側の壁面に長い机をならべて,その上に伝統面(能舞台で使われる面)と現代人をモチーフにした創作面を,そして,左側の壁面にも長い机をならべて小面百変化と題する創作面をならべました。全部で50面がならび,それはそれは壮観でした。その他にも空いたスペースに柏木さんの手になる能面絵画が額に入れて飾られました。いずれも手にとってみることのできる卑近距離ですので,みなさん,顔を寄せてじっと眺めたり,写真を撮ったりして楽しんでくれました。柏木さんのアイディアで,一つずつの面のタイトルにスペイン語訳がつけてありましたので,バスクの人たちも一つずつしっかり眺めていました。大きな声で笑っている人もいました。
休憩時間には,小面に紐をかけて,実際に顔につけてもらったりしました。みんな大喜びで,交代で面をつけては写真を撮って楽しんでいました。みんな童心に帰り,はしゃぎながらポーズをとったりしていました。この企画も大成功。
会場正面の右手奥にある控室を急遽,柏木さんのアトリエに仕立てて,そこで柏木さんに能面の制作・実演をやっていただきました。休憩時間だけではなく,ひっきりなしに一般参加の人たちも含めて,多くの人がその実演を見入っていました。柏木さん専属の通訳もついていましたので,質問にも応答することができました。柏木さんもバスクの人たちとも大いに交流してくださいました。
バスクの研究者のなかのひとりは,能面を買いたいという人までいました。しかし,値段を聞いてびっくりしたようです。が,柏木さんは折角ですから原価でもいいですよ,という提案もしてくださいましたが,それは止めておきましょう,ということにしました。やはり,あまりに過剰なサーヴィスはよくない,と考えたからです。
その代わりと言っては変ですが,柏木さんは能面の写真を和紙に印刷したアート作品(色紙から,扇形や,掛け軸もある)を,バスクの研究者たちに一つずつブレゼントしてくれました。日本の研究者にも配分がありましたので,みんな大喜びです。みんな無邪気に喜んでいましたが,わたしはこれらのおおよその値段を知っていますので,柏木さんの大盤振る舞いに,じつは,はらはらしていた次第です。
8日のプログラムには,能面アーティスト柏木裕美さんのお話,が組まれていました。インタヴュー方式で,面打師(伝統面のみを打つ専門家)から能面アーティストへの道程について語っていただきました。能面を制作してみたいと思った動機からはじまって,やがて,面打師の枠組みの外にでて,創作面に向かうプロセスをわかりやすく語っていただきました。途中で,能面を打つということは柏木さんにとってどういう意味をもつものでしょうか,という問いについては,柏木さんのとっさのひらめきで,その間の事情について熟知している西谷さんにバトン・タッチして,代わりに答えてもらうというハプニングもあって,なごやかなうちに話が進展しました。
なかでも,「能面とはなにか」と問われたとき,一番,短く答えるとすればどのようになるのでしょう,という問いにたいして,「能面とは人間の顔です」と応じられ,思わず唸ってしまいました。あまりのみごとな応答に,返すことばもありませんでした。こんな対話を聞いて,日本の研究者たちも,あるいは,一般参加者たちも,あらためて能面についての認識を深められたのではないか,と想像しています。
この4日間をとおして,柏木さんはセミナーの議論を聞きながら,粗削りの段階とはいえ,五つの面を制作されました。わたしたちがセミナーをやっている間も,隣の部屋でトントンと鑿を打つ音が心地よく響いていました。柏木さんは音がうるさくないかととても気になさっていましたが,閉会式のときの,バスクを代表したホセバ教授のお話のなかにも,隣で面を打っている音がとてもいい効果音となっていた,だから,とても楽しくセミナーに参加することができた,と二度も繰り返して褒めていました。
柏木さんの参加によって,第2回日本・バスク国際セミナーは何倍にも楽しい会になりました。ホセバ教授に言わせれば,柏木さんは22歳くらいにみえる,とこれまた驚くべき発言もあり,大いに盛り上がりました。総じて,柏木さんは,みんなに好かれているんだなぁ,という印象を持ちました。これは,偏に,柏木さんの人徳というものでしょう。
4日間,そして,帰宅されてからもまた荷物を受け取って,整理をして,と大変だったと思います。お疲れがでませんように。ほんとうにありがとうございました。実行委員会のメンバーのひとりとして,こころからお礼を申し上げます。ありがとうございました。
柏木さんは,西谷さんとわたしの太極拳の兄妹弟子だということもあって,実行委員会のお願いを快くお引き受けくださいました。しかし,素人の考えは甘く,能面の展示と実演の両方をお願いしてしまいました。ところが,結果論ですが,能面を入れる特別のケース(約12,3面が入る)をはじめ,実演用の道具その他,全部で16ケースに及ぶ荷物を宅急便で運ぶことになりました。ほんとうは,赤帽さんに頼んで,美術品運搬用の特別の自動車で運んでもらうところなのですが,あまりにも費用がかさむため,やむなく宅急便にしてもらいました。
荷物をさきに送っておいて,8月5日に会場での設営にとりかかりました。すでに,お願いをしておいたわたしの研究者仲間のFさん,Mさん,Mさんが待ち受けていてくださいました。その他にも,Tさん,その他の若い院生さんたちも手伝ってくださったので,あっという間に設定完了。神戸市外国語大学の事務局の人までお手伝いくださり,ありがたいことです。
会場正面の両サイドに,般若面(左側)と小面(右側)に,漆を塗った欅の板を壁面に天井からぶら下げて,飾りました。そして,会場正面に向かって右側の壁面に長い机をならべて,その上に伝統面(能舞台で使われる面)と現代人をモチーフにした創作面を,そして,左側の壁面にも長い机をならべて小面百変化と題する創作面をならべました。全部で50面がならび,それはそれは壮観でした。その他にも空いたスペースに柏木さんの手になる能面絵画が額に入れて飾られました。いずれも手にとってみることのできる卑近距離ですので,みなさん,顔を寄せてじっと眺めたり,写真を撮ったりして楽しんでくれました。柏木さんのアイディアで,一つずつの面のタイトルにスペイン語訳がつけてありましたので,バスクの人たちも一つずつしっかり眺めていました。大きな声で笑っている人もいました。
休憩時間には,小面に紐をかけて,実際に顔につけてもらったりしました。みんな大喜びで,交代で面をつけては写真を撮って楽しんでいました。みんな童心に帰り,はしゃぎながらポーズをとったりしていました。この企画も大成功。
会場正面の右手奥にある控室を急遽,柏木さんのアトリエに仕立てて,そこで柏木さんに能面の制作・実演をやっていただきました。休憩時間だけではなく,ひっきりなしに一般参加の人たちも含めて,多くの人がその実演を見入っていました。柏木さん専属の通訳もついていましたので,質問にも応答することができました。柏木さんもバスクの人たちとも大いに交流してくださいました。
バスクの研究者のなかのひとりは,能面を買いたいという人までいました。しかし,値段を聞いてびっくりしたようです。が,柏木さんは折角ですから原価でもいいですよ,という提案もしてくださいましたが,それは止めておきましょう,ということにしました。やはり,あまりに過剰なサーヴィスはよくない,と考えたからです。
その代わりと言っては変ですが,柏木さんは能面の写真を和紙に印刷したアート作品(色紙から,扇形や,掛け軸もある)を,バスクの研究者たちに一つずつブレゼントしてくれました。日本の研究者にも配分がありましたので,みんな大喜びです。みんな無邪気に喜んでいましたが,わたしはこれらのおおよその値段を知っていますので,柏木さんの大盤振る舞いに,じつは,はらはらしていた次第です。
8日のプログラムには,能面アーティスト柏木裕美さんのお話,が組まれていました。インタヴュー方式で,面打師(伝統面のみを打つ専門家)から能面アーティストへの道程について語っていただきました。能面を制作してみたいと思った動機からはじまって,やがて,面打師の枠組みの外にでて,創作面に向かうプロセスをわかりやすく語っていただきました。途中で,能面を打つということは柏木さんにとってどういう意味をもつものでしょうか,という問いについては,柏木さんのとっさのひらめきで,その間の事情について熟知している西谷さんにバトン・タッチして,代わりに答えてもらうというハプニングもあって,なごやかなうちに話が進展しました。
なかでも,「能面とはなにか」と問われたとき,一番,短く答えるとすればどのようになるのでしょう,という問いにたいして,「能面とは人間の顔です」と応じられ,思わず唸ってしまいました。あまりのみごとな応答に,返すことばもありませんでした。こんな対話を聞いて,日本の研究者たちも,あるいは,一般参加者たちも,あらためて能面についての認識を深められたのではないか,と想像しています。
この4日間をとおして,柏木さんはセミナーの議論を聞きながら,粗削りの段階とはいえ,五つの面を制作されました。わたしたちがセミナーをやっている間も,隣の部屋でトントンと鑿を打つ音が心地よく響いていました。柏木さんは音がうるさくないかととても気になさっていましたが,閉会式のときの,バスクを代表したホセバ教授のお話のなかにも,隣で面を打っている音がとてもいい効果音となっていた,だから,とても楽しくセミナーに参加することができた,と二度も繰り返して褒めていました。
柏木さんの参加によって,第2回日本・バスク国際セミナーは何倍にも楽しい会になりました。ホセバ教授に言わせれば,柏木さんは22歳くらいにみえる,とこれまた驚くべき発言もあり,大いに盛り上がりました。総じて,柏木さんは,みんなに好かれているんだなぁ,という印象を持ちました。これは,偏に,柏木さんの人徳というものでしょう。
4日間,そして,帰宅されてからもまた荷物を受け取って,整理をして,と大変だったと思います。お疲れがでませんように。ほんとうにありがとうございました。実行委員会のメンバーのひとりとして,こころからお礼を申し上げます。ありがとうございました。
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