2012年8月11日土曜日

第2回日本・バスク国際セミナー,無事に終了。ゲスト参加の今福龍太さん,柏木裕美さん,李自力さん,西谷修さんに感謝。大きな成果を残す。

 第2回日本・バスク国際セミナーが無事に終わり,昨夜(10日),帰宅しました。6日(月)から9日(木)の4日間,朝8時30分から午後6時までびっしりの講演,研究発表,ディスカッション,ワークショップと盛り沢山のメニューをこなしました。夕食は関係者全員で,懇親会を兼ねて,楽しく飲み食いをしました。第2回ということもあって,みんな顔なじみですので,すっかり打ち解けた楽しい雰囲気で盛り上がりました。夕食後は二次会もあって,深夜まで語り合いがつづき,時間はいくらあっても足りないほどでした。ですが,みんな完全燃焼して,大満足の様子でした。

 冒頭の今福龍太さんの特別講演「身体──ある乱丁の歴史」が,このセミナーの根幹にかかわる問題を提起してくださり,一気に佳境に入りました。しかも,国際セミナーですので,通訳が介在するのがつねですが,今福さんは一人二役をしながらの講演をしてくださいました。つまり,スペイン語でバスクからの研究者に語りかけ,そのあとで,わたしたぢ日本側の研究者に語るという離れ業を演じてくださったというわけです。あとで,バスク側の研究者に聞いたところ,じつにみごとなスペイン語で,しかも,美しい,詩のようなことばの連続だった,ということでした。それは,今福さんが日本語で書かれる著書もそうですよ,と話したらびっくりしていました。いつも,日本語を話すときもそうなのか,という問いがありましたので,「そうです」と答えておきました。すると,「それなら詩人ではないか」というので,ふたたび「そうです。今福さんは詩人でもあります」と応えておきました。

 このあと,日本とバスクの研究者によるプレゼンテーションとディスカッションが合計18題,熱心に繰り広げられました。この内容については,また,いつか詳しく報告することにして,ここではわたしたちの国際セミナーに華を添えてくださったゲストの方々のお話をしておきたいと思います。

 今福さんの講演にさきだち,能面アーティストの柏木裕美さんが,前日(5日)に,会場のあちこちにご自身で打たれた能面(約50面)と自筆になる能面の絵を展示してくださいました。能面もまた「人間の身体」である,しかも,伝統的な身体の記憶であり,他方,創作面は現代のグローバル化を生きる日本人の身体の表出である,という発想から参加依頼をお願いしました。そのわたしたちの希望にこころよく応えてくださり,しかも,会場の一室をアトリエに仕立てて,面打ちの実演までしてくださいました。バスクの人たちだけではなく,一般参加された日本人の人たちも目を瞠って眺めていました。
 プログラムの第4日目には,インタヴュー方式で柏木さんが歩んでこられた能面の世界を語っていただきました。伝統面を打つ面打ち師の世界から出発し,さらにもう一歩外に足を踏み出して,いわゆる創作面の世界を自由奔放に切り開いていらっしゃる,日本でただひとりの能面アーティストを名乗るまでのご苦労を聞かせていただきました。最近の創作面の多くは,フクシマを通過したいまを生きる人間の感情を,アヴァンギャルドの方法を用いて打たれていることがわかり,会場のみなさんも大きく納得されたようでした。

 もう一人のゲストは,太極拳の李自力老師です。李老師のことについては,すでに,このブログでたくさん書いていますので簡単にしておきますが,いま,生きていらっしゃる方のなかではもっとも傑出した太極拳の表演をなさる方です。で,まずは,李老師の弟子である西谷修さんとわたしと,もう一人,三井悦子さんを加えた4人で24式を表演しました。西谷さんもわたしも人さまの前で太極拳を表演するのは初めて。でも,李老師がリードしてくださることをいいことにして,みんなで楽しみました。そのあと,簡単なワークショップ(太極拳の初歩の解説と全員での練習)を行いました。そして,最後に李老師ひとりで,楊式の表演をしてくださいました。李老師の表演がはじまると,会場は水を打ったように静まり,みんな李老師の動きに目を釘付けにされ,すっかり魅了されていました。そして,異口同音に「素晴らしい」の連発でした。なかには,「あの動きはアートですね」とおっしゃる方もいました。弟子のひとりとしては大満足。「明鏡止水」の世界をおのずから醸しだし,その上で「行雲流水」の世界を演じてみせる,まさに現代の名人の表演でした。
 李老師は超多忙の方でスケジュールの調整がきわめて困難ななか,日帰りで参加してくださいました。ありがたいことです。

 そして,最後に感謝しなければならないゲストは,西谷修さんです。西谷さんには,今回の国際セミナーの締めくくりの特別講演をお願いしました。ですから,このセミナーの4日間,ずっと参加してくださいました。テーマは「グローバリゼーションと身体の行方」。西谷さんには,すでに何回もわたしたちの研究会にお出でいただいて,素晴らしいお話をしていただいていましたので,その蓄積もあってか,今回のお話はからだのなかに水が染みこんでいくような,とても自然な流れで理解することができました。気宇壮大な世界史を視野に入れた上で,いま,わたしたちの「身体」のなにが問われているのか,そのことと伝統スポーツやオリンピックの「身体」とはどのようにかかわっているのか,という大きくて深いお話を,わたしたちにもわかりやすくしてくださいました。これからのわたしたちの研究を進めていくための大きな土台を提示してくださいました。日本側のプレゼンテーターはみんな大喜びでした。バスク側では,バスク大学のホセバ教授がひとり,必死でメモをとりつづけていました。スポーツ社会学の専門家としても聞き流すことのできない重要な内容である,ということを意識している様子がありありとみてとれました。この内容については,できるだけ早くテープ起こしをして,活字で読めるようにしたいと考えています。

 以上,第2回日本・バスク国際セミナーを無事に終えることができたのも,偏にゲストのみなさんのご尽力のお蔭である,と信じて疑いません。その意味で,まずは,貢献してくださったゲストのみなさんにお礼と感謝の気持をこめて,このブログを書くことにしました。

 まずは,ゲスト参加のみなさん,ありがとうございました。
 こころから,こころからお礼を申し上げます。
 もう一度,ありがとうございました。


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