9月14日(日)の東京新聞が一面トップに新国立競技場問題を大々的に取り上げました。それを受けて,三面にも「核心」と題して,大きく紙面を割いています。ようやく新聞がこの問題について,真っ正面から取り組む姿勢をみせたものとして高く評価したいと思います。
ただし,今回の報道は,経済的なコストと技術的な観点からのみの糾弾に限定しています。しかし,もう一つの大きな問題があることも忘れてはならないと思います。それは新国立競技場建造をめぐる手続論(まったくの藪の中・非民主主義的)と景観論(神宮外苑の景観が台無しになるという批判)です。こちらの方は,たぶん,取材に相当の障壁・困難があって(取材拒否,その他),満を持しているのだろう,とわたしなりに想像しています。ですから,いずれ,その核心が明らかになり次第,報道されるものと期待しているところです。
さて,新聞の切り抜きはご覧のとおりです。
まずは,一面トップの記事には,ご覧のとおり,「建設費がかさむ」という経費の問題が取り上げられています。簡単に言ってしまえば,資材・人材ともに不足で,年々,驚くべき速さで資材費や人件費の高騰がつづいていることが指摘されています。それは鰻登りだといいます。どれほどの経費がかかるのか算出不能・予測不能とさえいわれています。
つぎは,「巨大アーチ開閉式屋根」は難工事であり,技術的に大きな懸念が存在するということが指摘されています。わたしのところに入ってきている情報によれば,大手ゼネコンも腰が引けていて,たとえば,解体工事の入札をも忌避しているところが多いと聞きます。そういう事情があるのでしょう。「施工会社選定を前倒し」するというのです。つまり,実際に建設にとりかかるための設計段階から施工会社に参加してもらって,必ず施工を引き受けてもらおう,という戦略です。こんなことは建築界では異例のことだとこの記事は報じています。
それに加えて,当初の計画を変更することはIOCも認めていることなので,規模を縮小し,巨大アーチ開閉式屋根をとりやめることを示唆する記事も掲載されています。この点については,デザイン・コンペの結果発表のときから,建築界では指摘されてきたことですので,すでに,多くの方が承知していらっしゃることと思います。
より詳しくは,新聞記事でご確認ください。
つづいて三面の記事では,その「核心」をとりあげ,詳細に問題点が指摘されています。この中で,わたしが驚いたのは,これだけ大きな規模のキールアーチを建造するのは「未知の領域」だという指摘です。一部の建築家は,現段階の技術では不可能だ,だから,設計を大幅に修正する必要がある,とも聞いています。その上,そのアーチに「開閉式屋根」を取り付けるというのです。これもまたとてつもない「難工事」だというのです。
工事主体のJSC(日本スポーツ振興センター)によれば,日本の建築技術の高さを世界にアピールする絶好のチャンスだ,といいます。それは平時の主張としては理解できないではありません。しかし,いまの日本は平時ではありません。東日本の復興と時限爆弾ともいうべきフクシマをかかえた非常時です。東日本の復興もまた資材不足・人手不足のために遅々として進んでいません。そのほかにも理由があるようですが・・・・。つまり,二重三重に障壁があってどうにもならない情況がつづいています。フクシマに至っては,とうとう外国人労働者の導入が,大まじめに検討されているようです。が,それ以上に「技術的」な課題が大きすぎて,根本的な問題解決に向けては手も足も出せない情況が,これは半永久的につづくといわねばなりません。そういう日本全体が危機的な非常時にあるにもかかわらず,そういう認識を欠いたまま,平時の思考がのさばっています。もはや,能天気としかいいようがありません。
三面記事の特筆すべきことは槇文彦さんによる「私案」です。開閉式屋根をやめれば,とりあえずは大きな問題は解消する,という提案です。そして,8万人収容は一部仮設にしておけば,最終的に縮小も可能だ,というのです。第一,8万人収容の施設をつくる必要はないのに,大きいことはいいことだ,という「3・11」以前の論理がまだ生きつづけていることが不可解です。IOCは「6万人」でOKだと言っているのですから。
それに加えて,槇文彦さんは「子どものスポーツの拠点」にすることを提案しています。子どもたちの夢を大きくふくらませるための施設として活用できるよう工夫せよ,というのです。この提案にはモロテを挙げて大賛成です。
このほかにも,伊東豊雄さんの私案も視野に入れるべきでしょう。現国立競技場の改修案です。その案でも,レーンを増やしたり,8万人収容も可能だという提案です。コストを最小限に抑えることができる,という提案です。しかし,この提案は議論にもなっていないようです。
しかし,こうしたクリアすべきハードルがあまりに高すぎる,という現実が明らかになるにつれ,新国立競技場の建設は困難を極めることになるのは眼にみえています。これは無理だ,ということがわかった段階で(いま,すでに,そこに来ている,とわたしは思います),さっと引き返して,原点から考え直すという勇気が必要です。いま,求められているのは,その「決断力」です。猪突猛進するばかりの現状はとても危険な賭けだとわたしはみています。
はたして,その行方やいかに・・・・。
この問題に関するシンポジウムや集会がいくつも予定されていますので,それらに参加しながら,思考を深めていきたいと思っています。いまが正念場です。
ただし,今回の報道は,経済的なコストと技術的な観点からのみの糾弾に限定しています。しかし,もう一つの大きな問題があることも忘れてはならないと思います。それは新国立競技場建造をめぐる手続論(まったくの藪の中・非民主主義的)と景観論(神宮外苑の景観が台無しになるという批判)です。こちらの方は,たぶん,取材に相当の障壁・困難があって(取材拒否,その他),満を持しているのだろう,とわたしなりに想像しています。ですから,いずれ,その核心が明らかになり次第,報道されるものと期待しているところです。
さて,新聞の切り抜きはご覧のとおりです。
まずは,一面トップの記事には,ご覧のとおり,「建設費がかさむ」という経費の問題が取り上げられています。簡単に言ってしまえば,資材・人材ともに不足で,年々,驚くべき速さで資材費や人件費の高騰がつづいていることが指摘されています。それは鰻登りだといいます。どれほどの経費がかかるのか算出不能・予測不能とさえいわれています。
つぎは,「巨大アーチ開閉式屋根」は難工事であり,技術的に大きな懸念が存在するということが指摘されています。わたしのところに入ってきている情報によれば,大手ゼネコンも腰が引けていて,たとえば,解体工事の入札をも忌避しているところが多いと聞きます。そういう事情があるのでしょう。「施工会社選定を前倒し」するというのです。つまり,実際に建設にとりかかるための設計段階から施工会社に参加してもらって,必ず施工を引き受けてもらおう,という戦略です。こんなことは建築界では異例のことだとこの記事は報じています。
それに加えて,当初の計画を変更することはIOCも認めていることなので,規模を縮小し,巨大アーチ開閉式屋根をとりやめることを示唆する記事も掲載されています。この点については,デザイン・コンペの結果発表のときから,建築界では指摘されてきたことですので,すでに,多くの方が承知していらっしゃることと思います。
より詳しくは,新聞記事でご確認ください。
つづいて三面の記事では,その「核心」をとりあげ,詳細に問題点が指摘されています。この中で,わたしが驚いたのは,これだけ大きな規模のキールアーチを建造するのは「未知の領域」だという指摘です。一部の建築家は,現段階の技術では不可能だ,だから,設計を大幅に修正する必要がある,とも聞いています。その上,そのアーチに「開閉式屋根」を取り付けるというのです。これもまたとてつもない「難工事」だというのです。
工事主体のJSC(日本スポーツ振興センター)によれば,日本の建築技術の高さを世界にアピールする絶好のチャンスだ,といいます。それは平時の主張としては理解できないではありません。しかし,いまの日本は平時ではありません。東日本の復興と時限爆弾ともいうべきフクシマをかかえた非常時です。東日本の復興もまた資材不足・人手不足のために遅々として進んでいません。そのほかにも理由があるようですが・・・・。つまり,二重三重に障壁があってどうにもならない情況がつづいています。フクシマに至っては,とうとう外国人労働者の導入が,大まじめに検討されているようです。が,それ以上に「技術的」な課題が大きすぎて,根本的な問題解決に向けては手も足も出せない情況が,これは半永久的につづくといわねばなりません。そういう日本全体が危機的な非常時にあるにもかかわらず,そういう認識を欠いたまま,平時の思考がのさばっています。もはや,能天気としかいいようがありません。
三面記事の特筆すべきことは槇文彦さんによる「私案」です。開閉式屋根をやめれば,とりあえずは大きな問題は解消する,という提案です。そして,8万人収容は一部仮設にしておけば,最終的に縮小も可能だ,というのです。第一,8万人収容の施設をつくる必要はないのに,大きいことはいいことだ,という「3・11」以前の論理がまだ生きつづけていることが不可解です。IOCは「6万人」でOKだと言っているのですから。
それに加えて,槇文彦さんは「子どものスポーツの拠点」にすることを提案しています。子どもたちの夢を大きくふくらませるための施設として活用できるよう工夫せよ,というのです。この提案にはモロテを挙げて大賛成です。
このほかにも,伊東豊雄さんの私案も視野に入れるべきでしょう。現国立競技場の改修案です。その案でも,レーンを増やしたり,8万人収容も可能だという提案です。コストを最小限に抑えることができる,という提案です。しかし,この提案は議論にもなっていないようです。
しかし,こうしたクリアすべきハードルがあまりに高すぎる,という現実が明らかになるにつれ,新国立競技場の建設は困難を極めることになるのは眼にみえています。これは無理だ,ということがわかった段階で(いま,すでに,そこに来ている,とわたしは思います),さっと引き返して,原点から考え直すという勇気が必要です。いま,求められているのは,その「決断力」です。猪突猛進するばかりの現状はとても危険な賭けだとわたしはみています。
はたして,その行方やいかに・・・・。
この問題に関するシンポジウムや集会がいくつも予定されていますので,それらに参加しながら,思考を深めていきたいと思っています。いまが正念場です。
0 件のコメント:
コメントを投稿