2014年9月9日火曜日

トークイベント「竹内敏晴さんが問い続けたこと」(鷲田清一×三砂ちづる)傍聴記。

 このほど,藤原書店から<セレクション・竹内敏晴の「からだと思想」>(全4巻)が完結したのを記念してトークイベントがなされました。テーマは「竹内敏晴さんが問い続けたこと」。

 日時:2014年9月7日(日)14:00~17:00(開場13:30)
 会場:早稲田奉仕園(スコットホール)

 
ほぼ満席の盛況でした。集まった人のほとんどは竹内敏晴さんのレッスンを長年にわたって受講され,その影響を強く受けた人びとだとお見受けしました。もちろん,竹内さんの著作をとおして多くのことを学ばれた熱烈なファンも多くいらっしゃったと思います。いずれにしても,集まられた人たちは熱烈な竹内敏晴ファンの人たちばかり,と言っていいでしょう。

 竹内さんが逝かれてちょうど5年。9月7日は命日。早いものです。まだ,ついこの間のできごとだとしか考えられません。いまでも,名古屋で竹内敏晴さんを囲む会を企画して,生前5回ほどもつことのできた会のつづきをやりたいという気持で一杯です。が,残念ながら,もはやそれは永遠の夢でしかありません。

 さて,トークイベント。最初に鷲田清一さんの講演があって,つづいて三砂ちづるさんとのトークになりました。

 
正直にわたしの感想を記しておきますと以下のとおりです。
 まずは,ミスマッチ。鷲田さんは竹内レッスンを一度だけ見学,三砂さんは著作をとおしてだけで竹内さんとの面識はなし。したがって,鷲田さんの講演も,そして,トークイベントも竹内さんの著作を手がかりにした,いわば観念論的な思考ゲームに終始することになりました。それはそれで面白い話の展開ではありました。たぶん,ごく一般的な聴衆ばかりでしたら,このトークイベントは異色の組み合わせとして,大成功だったのではないかと思いました。しかし,まことに残念なことに,この会に集まった熱心な竹内敏晴ファンの期待した,肝心要の「竹内敏晴さんが問い続けたこと」の核心には遠く手がとどきませんでした。

 言ってしまえば,竹内敏晴さんの「からだと思想」の表面をかすっただけの,わたしにはなんとも歯がゆいばかりの話の展開でした。ですから,わたしの欲求不満はたまるばかりでした。たとえば,竹内さんが必死に探索され,徐々にその深みにたどりついていかれた「じかに触れる」という,竹内レッスンの核心ともいうべき重要なテーマには,お二人とも言及されませんでした。それは,マルチン・ブーバーの『我と汝』を手がかりにした思考実験であったことを,わたしは竹内さんから直接うかがっています。そして,わたしなりに『我と汝』を読み込み,竹内さんの求める「じかに触れる」世界を,あれこれ思考したことがあります。それは,このブログでも,もうずいぶん前のことですが,書いています。検索してくだされば幸いです。

 ですから,この日に集まった人たちの耳には,たぶん,失望と落胆が少なからずあったのではないか,とわたしは感じました。言ってしまえば,スピーカーよりも聴衆の方が,「竹内敏晴さんが問い続けたこと」については,みずからの「からだ」をとおして熟知していた,と思われるからです。ですから,トークイベントが終わってからの懇親会では,このゲストのお二人は孤立した状態がつづくという,一種異様な場面が表出してしまいました。「これはまずい」と思い,わたしはご挨拶だけでもしておこうかとそのチャンスをはかっていました。が,なぜか,わたしのまわりには何人かの人が入れ代わり話しかけてくださる人があって,しまいには藤原社長さんまで加わるという塩梅でした。

 と,そうこうしているうちに,ゲストのお二人の姿は消えていました。あれれっ?と思いましたが,ときすでに遅しでした。鷲田さんのお顔が少し赤くなっておられたのは覚えています。そろそろいいタイミングかな,とこちらでおしゃべりをしながら様子をうかがっていました。が,まずは,鷲田さんがお一人でドアの向こうに行かれました。それでもわたしは,なにか所要があって,またすぐに戻られるものと思っていました。が,そのままでした。それからしばらくしたら,三砂さんの姿も見当たりません。なんとも寂しいゲストの退場でした。ふつうなら,ひとことご挨拶があって,拍手をもってお送りする,というところなのですが・・・・。

 「竹内敏晴さんが問い続けられたこと」についての私見は,いつか,このブログに書いてみたいと思っています。わたしをその気にさせたのは,鷲田さんと三砂さんのトークイベントが大きな引き金になっていることは間違いありません。言ってしまえば,わたし自身の欲求不満を解消するために。

 というところで,やや辛口の傍聴記になってしまいましたが,ひとまず,この稿を閉じたいと思います。そして,この稿の補足となるべきブログを近々,書いて,全体のバランスをはかりたいと思っています。では,そのときまで。

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