正月2日・3日の年中行事,箱根駅伝が終わりました。
ことしの駅伝はことのほか感動しました。
いうまでもなく青山学院大の驚異的な新記録による優勝です。
メディアは,「新山の神」出現とばかりに,神野選手の活躍をとりあげています。
が,それだけでいいのでしょうか。
「この10人は自律(自立)したいい奴ばかり」と優勝インタヴューに答えた原監督の第一声が,わたしにはもっとも感動的でした。そうなんだっ!とこころの底から納得できたからです。
わたしは,もう30年以上も前から「スポーツ的自律」こそが,アスリートの最終目標であるべきだ,と提案してきました。しかし,なかなか受け入れてもらえませんでした。残念でなりませんでした。が,今回,青山学院大の原監督の口から「自律したいい奴」ということばが飛び出しました。思わず膝をたたき,涙しました。ことしの青山学院大学駅伝チームの強さの秘密はここにあったのだ,と。
監督(指導者)のもっとも大事な仕事は,選手たちを人間として「自律」させることだ,とずっと考えてきました。けして監督の意のままに動くロボットにしてはならない,と。そして,折あるごとに,このことを主張してきました。最近では,このブログにも書きました。「スポーツ学」とはなにか。その2.をご確認ください。体育学でもない,スポーツ科学でもない,まったく新たなスポーツに関する総合的な学(知の体系),すなわち「スポーツ学」を打ち立てるべきだ,と。そして,その中核となるべき概念の一つが「スポーツ的自律」だ,と。
スポーツを実践するのは選手であり,一人ひとりのプレイヤーです。その指導者がどれだけカリスマ性を発揮したところで,そこには限界があります。つまり,指導者の言うとおりに動くロボットからは抜け出せません。しかし,選手たちが一人ひとり「自律/自立」していれば,指導者のことばを糧にして,さらにそこに工夫が加わります。それが,もうワンランク上の「力」を引き出すことになる,とわたしは考えています。
そのことを原監督は熟知しておられたので,青学の駅伝チームの選手たちを「自律/自立」させることに,力を注いだということなのでしょう。それを裏付けることばも,短いインタヴューの間にいくつも飛び出しました。たとえば,以下のとおりです。
「うちの選手たちは強いんです」
「こんなに強い選手たちだったんですね」
このことばの背景には,たんに駅伝選手として速いということだけではなくて,弱音を吐かない,集中力がある,忍耐力がある,思い切りがいい,セルフ・コントロールができる,などなど,人間としての「強さ」が籠められている,とわたしは直観しました。
「まるで家族のようです」
原監督がさらりと吐いたことばです。ここには,選手たち全員が一丸となれる「和」の精神がみられ,絶対的な「信」に支えられている監督と選手たちの濃密な関係性をみてとることができます。とってつけたような「絆」などという軽いことばとは無縁の,監督・コーチ・選手・スタッフがひとつになれる強い結束力の磁場があり,それを共有し,もっともっと濃密な一体感をともなう人間関係の世界がそこには広がっているのでしょう。これが「強さ」の秘密なのでしょう。
選手たちも同じようなことを言っています。
「からだが動いてくれたので,その流れに乗って走りました」
「自分がいちばん驚いています」(山登りの神野選手)
「我慢だけはだれにも負けないと信じて走りました」
「からだはきついのに,こころが嬉しくて,楽しみながら走りました」
しっかりと自分を見つめ,観察し,情況を把握して,みずから決断しながら走る,まさに「自律したいい奴」と監督に言わしめる選手たちなのです。
青山学院大学の,ことしのチームの強さの秘密をかいま見ることのできる談話ばかりです。選手たちがみんな「自律」しているので,マイクを向けられても慌てることなく,じつに落ち着いて,ことばを選び,言うべきことをきちんと述べることができる,そういう印象をつよくもちました。もう,立派な大人のことばになっています。自律している証拠です。
10時間50分を切る,驚異的な大会記録を打ち立てての初優勝。どのチームが優勝してもおかしくない強豪チームがなみいる中で,2位に10分以上もの大差をつけての,堂々たる優勝。神野選手の活躍はもちろんですが,その他の選手たちもみんな自己ベストを出しての快走を繰り広げています。往路で約5分,復路で約5分,それぞれ2位チームを引き離しての,完全優勝。
この青山学院大学の,前例をみない強さの秘密が「自律したいい奴」の集団にあったこと,このことが際立って印象に残る,ことしの箱根駅伝でした。わたしにとっては,ふたたび,「スポーツ的自律」に火を点けられた,忘れられない大会となりました。
と同時に,「スポーツ学」とはなにか,のキー・コンセプトの一つとして「スポーツ的自律」を粘り強く主張していきたい,と意をつよくしました。
ことしは春から縁起がいいわいっ,と歌舞伎の口調で見えを切ってみたくなりました。
青山学院大学駅伝チーム,おめでとう!
来年の快走も楽しみにしています。
ことしの駅伝はことのほか感動しました。
いうまでもなく青山学院大の驚異的な新記録による優勝です。
メディアは,「新山の神」出現とばかりに,神野選手の活躍をとりあげています。
が,それだけでいいのでしょうか。
「この10人は自律(自立)したいい奴ばかり」と優勝インタヴューに答えた原監督の第一声が,わたしにはもっとも感動的でした。そうなんだっ!とこころの底から納得できたからです。
わたしは,もう30年以上も前から「スポーツ的自律」こそが,アスリートの最終目標であるべきだ,と提案してきました。しかし,なかなか受け入れてもらえませんでした。残念でなりませんでした。が,今回,青山学院大の原監督の口から「自律したいい奴」ということばが飛び出しました。思わず膝をたたき,涙しました。ことしの青山学院大学駅伝チームの強さの秘密はここにあったのだ,と。
監督(指導者)のもっとも大事な仕事は,選手たちを人間として「自律」させることだ,とずっと考えてきました。けして監督の意のままに動くロボットにしてはならない,と。そして,折あるごとに,このことを主張してきました。最近では,このブログにも書きました。「スポーツ学」とはなにか。その2.をご確認ください。体育学でもない,スポーツ科学でもない,まったく新たなスポーツに関する総合的な学(知の体系),すなわち「スポーツ学」を打ち立てるべきだ,と。そして,その中核となるべき概念の一つが「スポーツ的自律」だ,と。
スポーツを実践するのは選手であり,一人ひとりのプレイヤーです。その指導者がどれだけカリスマ性を発揮したところで,そこには限界があります。つまり,指導者の言うとおりに動くロボットからは抜け出せません。しかし,選手たちが一人ひとり「自律/自立」していれば,指導者のことばを糧にして,さらにそこに工夫が加わります。それが,もうワンランク上の「力」を引き出すことになる,とわたしは考えています。
そのことを原監督は熟知しておられたので,青学の駅伝チームの選手たちを「自律/自立」させることに,力を注いだということなのでしょう。それを裏付けることばも,短いインタヴューの間にいくつも飛び出しました。たとえば,以下のとおりです。
「うちの選手たちは強いんです」
「こんなに強い選手たちだったんですね」
このことばの背景には,たんに駅伝選手として速いということだけではなくて,弱音を吐かない,集中力がある,忍耐力がある,思い切りがいい,セルフ・コントロールができる,などなど,人間としての「強さ」が籠められている,とわたしは直観しました。
「まるで家族のようです」
原監督がさらりと吐いたことばです。ここには,選手たち全員が一丸となれる「和」の精神がみられ,絶対的な「信」に支えられている監督と選手たちの濃密な関係性をみてとることができます。とってつけたような「絆」などという軽いことばとは無縁の,監督・コーチ・選手・スタッフがひとつになれる強い結束力の磁場があり,それを共有し,もっともっと濃密な一体感をともなう人間関係の世界がそこには広がっているのでしょう。これが「強さ」の秘密なのでしょう。
選手たちも同じようなことを言っています。
「からだが動いてくれたので,その流れに乗って走りました」
「自分がいちばん驚いています」(山登りの神野選手)
「我慢だけはだれにも負けないと信じて走りました」
「からだはきついのに,こころが嬉しくて,楽しみながら走りました」
しっかりと自分を見つめ,観察し,情況を把握して,みずから決断しながら走る,まさに「自律したいい奴」と監督に言わしめる選手たちなのです。
青山学院大学の,ことしのチームの強さの秘密をかいま見ることのできる談話ばかりです。選手たちがみんな「自律」しているので,マイクを向けられても慌てることなく,じつに落ち着いて,ことばを選び,言うべきことをきちんと述べることができる,そういう印象をつよくもちました。もう,立派な大人のことばになっています。自律している証拠です。
10時間50分を切る,驚異的な大会記録を打ち立てての初優勝。どのチームが優勝してもおかしくない強豪チームがなみいる中で,2位に10分以上もの大差をつけての,堂々たる優勝。神野選手の活躍はもちろんですが,その他の選手たちもみんな自己ベストを出しての快走を繰り広げています。往路で約5分,復路で約5分,それぞれ2位チームを引き離しての,完全優勝。
この青山学院大学の,前例をみない強さの秘密が「自律したいい奴」の集団にあったこと,このことが際立って印象に残る,ことしの箱根駅伝でした。わたしにとっては,ふたたび,「スポーツ的自律」に火を点けられた,忘れられない大会となりました。
と同時に,「スポーツ学」とはなにか,のキー・コンセプトの一つとして「スポーツ的自律」を粘り強く主張していきたい,と意をつよくしました。
ことしは春から縁起がいいわいっ,と歌舞伎の口調で見えを切ってみたくなりました。
青山学院大学駅伝チーム,おめでとう!
来年の快走も楽しみにしています。
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