2015年9月27日日曜日

悲願の横綱での優勝!鶴竜,おめでとう。

 本割で照ノ富士に寄り切られ,両者ともに12勝3敗。優勝決定戦へ。お客さんは大喜び。場内は盛り上がった。

 本割では,照ノ富士が右四つがっぷりに組み止め,力強い寄りがでて完勝。
 優勝決定戦は,鶴竜が素早く左前みつを引き,右も前みつをつかむことができ,得意の型に持ち込み,左からの出し投げで完勝。

 両者ともに,それぞれ得意の相撲を展開して,千秋楽に華を添えた。
 鶴竜にすれば,長いトンネルからようやく脱出することができ,ほっとしたことだろう。横綱になって9場所めにしてようやく手にした賜杯だった。途中,左肩の怪我もあり,苦しい土俵がつづいた。が,これで来場所からの展望が開けたことだろう。そうなれば,3横綱そろっての優勝争いが期待できそうだ。

 鶴竜といえば,中学生のときに日本の大相撲に憧れ,力士になることを決心し,日本語を勉強して,自分で手紙を書いて入門を申しいれた,という逸話がある。父は大学教授。みずからを律して生きることを学んだ鶴竜は,大相撲入門後も必死で稽古を重ね,日本文化も勉強し,憧れの横綱を手に入れた。喜怒哀楽をあまり表情にみせない地味な性格ながら,意思の強さを内に秘めて,もくもくと精進するタイプ。平常心をなにより大切にする。

 低い姿勢からの鋭い踏み込み,素早く左前みつを引き,相手の胸に頭をつける得意の型をもつ。こうなると負ける相手はいない。この相撲にさらなる磨きをかけて,右に左に変化したり,はたいたりする悪い癖を卒業してほしい。そうすれば,押しも押されもしない立派な横綱が完成する。このたびの優勝を機に,その日の到来することを期待したい。

 一方,照ノ富士。破竹の11連勝のあと,リズムが狂った。気のゆるみがあったのだろうか。一度も負けたことのなかった栃煌山に,なすすべもなく寄り切られてしまった。中途半端な,気魄のない立ち合いが落とし穴となった。その翌日には,稀勢の里に寄り立てられ,むりやり小手投げでからだを入れ換えて耐えようとしたが,とうとう俵に右足がかかったところで,稀勢の里の前へでる圧力に屈した。なぜか,左足から力が抜けたように崩れ落ち,仰向けに倒れてしまった。

 左足の靱帯を損傷し,親方から休場を薦められたが,部屋の横綱(日馬富士)が休場しているのに,自分まで休場するわけにはいかないと決意し,強い気持ちで場所をつとめた。翌日の豪栄道戦は,やはり力を発揮することはできなかった。が,今日・千秋楽の鶴竜戦では気魄十分にぶちかまし,突き立て,自分の得意の右四つがっぷりとなった。あとは,休むことなく前にでる。気魄の勝利を手にいれ,12勝3敗で,鶴竜とならぶ。そして,優勝決定戦へ。

 決定戦での勝利は逃したものの,本割での成績は,優勝した鶴竜と同じ12勝3敗の同率。準優勝とはいえ,優勝力士と同率の,優勝に準ずる成績を残した。これで来場所,優勝すれば,当然のことながら,横綱もみえてくる。となると,3横綱から4横綱時代へと,新しい時代の幕開けともなる。すべてがモンゴル出身の横綱という,大相撲の歴史を画する新しいページが加わることになる。いろいろ批判もでてこようが,わたしは大いに期待している。

 ついでに,今場所11勝4敗で終わった稀勢の里についても,触れておこう。いつものことながら,後半になって存在感を示すことができた。前半の「とりこぼし」が痛い。この「とりこぼし」という悪い癖を克服して,最初から優勝争いの先陣を切るんだという強い気持ちをもってほしい。横綱になれる素質を十分にもっていながら,その手前で足踏み状態がつづいている。照ノ富士戦でみせた気魄,そして前にでる圧力を徹底していけば,おのずから道は開けてくる。今場所はその可能性がほのかにみえたようにおもう。ライバルの琴奨菊も復活してきた。ふたりで土俵をかき回すくらいの気概をもって来場所に臨んでほしい。

 最後に,鶴竜の優勝をこころから言祝ぎたい。この地味な横綱になぜか惹かれるものが多い。これを機に,来場所での,得意の左前みつを引く型の完成をめざしてほしい。そうなると,とても質の高い大相撲が展開することになる。日馬富士と白鵬が復帰し,そこに照ノ富士が割って入る。そうはさせじと,稀勢の里と琴奨菊が待ったをかける。来場所がそういう場所になることを,こころから期待したい。

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