2013年10月9日水曜日

膝の周囲の筋肉を強化するか,あるいは,膝の負荷を軽くして稽古しなさい・李自力老師語録・その37。

 最近,稽古が終わったとき,ひざのお皿(膝蓋骨)を覆っている皮膚が冷たくなっていて,なんとなく違和感が残ります。場合によっては,稽古の途中で,そんな感じになり,大丈夫かなぁと不安になったりします。ひどい場合には多少の痛みを伴います。もちろん,我慢できないほどの痛みではありません。以前から足の指先が冷たくなり(夏・冬に関係なく),つることがあります。そのことと関係しているのかな,と思って李自力老師に尋ねてみました。

 李老師は,しばらくの間,じっとわたしの顔をみつめ,おもむろにつぎのようなお話をしてくださいました。

 ひとことでいえば,準備運動不足です,と。
 そういわれてみれば,太極拳の稽古をはじめたころには,準備運動だけで40分から50分ほど,しっかりと李老師が指導してくださいました。その上で,基本の運動をやり(これもまた部分的に繰り返し反復練習)ました。正直にいえば,これだけでヘロヘロになっていました。そのあと,やおら24式の稽古に入りました。すると,もう脚の筋力がくたばってしまっていて,フラフラでした。しかし,李老師は知らぬ顔で,きっちり2時間,丁寧に指導をしてくださいました。終わったときには,ほっとしたことを覚えています。

 そのころのことを考えると,間違いなく準備運動不足です。いわゆる自主稽古をやるようになってからは,準備運動は,いつの間にか,早く到着した人から各自のペースでやることになっています。わたしは会場の鍵の係をやっていますので,午前10時には到着して,まずはひとりで準備運動をはじめます。ですから,他のだれよりも長い時間,準備運動をやっているはずです。それでも,足りない,ということです。

 つまり,年齢に応じた準備運動が必要だということです。李老師がじっとわたしの顔をみつめたのは,口では仰らなかったですが,裏にはそういう含意があったということでしょう。

 そのあとで,李老師は,わたしの膝に手を当てて,お皿を軽く撫ぜたあと,お皿の下側に向けて指を突き立てました。わたしはその予期せざる痛さに驚いて大声を発してしまいました。李老師はにっこり笑って,この程度で痛いとしたら,お皿への刺激が,ふだんから足りないということです,と。さらに,膝関節全体につながる筋肉や腱を,これまでよりも強く刺激しなさい,と。そうした上で,脚筋力を強化するための準備運動を少し多めにやりなさい,と。

 そうして,まずは,膝まわりの筋力を強化することが先決です。もし,それでも,その効果があまり期待できないようであれば,膝に負担がかからないように,姿勢を少し高くして稽古をしなさい,と。

 なるほど,李老師は,わたしの「75歳」という年齢を念頭において話をしてくださっているんだな,ということが,このブログを書きながら,しみじみとわかってきました。

 もう,いまから,あまりむきになって稽古をしてはいけません,と。年齢相応に,ほどほどに,楽しみながらやりなさい,と。そして,若い人たちのめざす太極拳から,高齢者でなければできない老境の境地で太極拳の世界を開きなさい,そこを楽しみなさい,と(これらは,わたしの解釈です)。

 つまり,ゆったりとした,高い姿勢でも安定した,味のある太極拳をめざせ,と仰っているのだ,と。でも,そのむかし体操競技をやっていたわたしの身体は,少しでも上手になろうとする西洋的な上昇志向が抜けきってはいません。しかし,そろそろ,東洋的な下降志向の身体に切り換えて(生理学的にはもうとっくのむかしにそういう身体になっている),むしろ,その境地を楽しむべし,ということなのでしょう。

 頭のなかでは理解できても,からだは,意外にしつこく若さを求めます。まあ,こんな葛藤を繰り返しながらの太極拳の稽古もあっていいのかな,と自分に言い聞かせている今日この頃です。

 こころとからだのバランスの問題は,言うは易し,行うは難し,としみじみ思います。これからはますます上手に身心のバランスがとれるよう,工夫しながら稽古に励みたいと思います。以上。

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