2012年9月19日水曜日

ハラハラ,ドキドキ,日馬富士。勝ちを拾うのも実力のうち。

 今日(19日)のような,こんな危ない相撲をとっていると,またまた,怪我をしてしまう。千代の富士が「ウルフ」という異名で呼ばれた平幕時代の相撲を思い出す。相手の肩ごしに上手をつかんで,そのまま振り回し,強引に投げ飛ばす。投げ飛ばせはいいが,投げ飛ばせないときには「肩関節脱臼」。そして,休場。その結果,エレベーター力士となる。

 お相撲さんに怪我はつきものだ。でも,怪我をしないからだと取り口を身につけないと,上位には上がれない。幕内の力士よりもはるかに大きなからだをした付き人をよくみかける。この人たちは将来有望な力士たちなのだが,その多くは怪我に泣く。そして,そのまま消えていく。その怪我を克服するための「からだづくり」と得意の相撲の「型」(取り口)を身につけた者だけが上位に上がっていく。そして,横綱に到達する。

 千代の富士はその典型的な力士だった。

 ここにきて日馬富士がドタバタした相撲をとっている。今日も,素早く左上手をとり,出し投げを打って,これで押し出せば終わり,という手口だった。が,途中で手順が狂った。相手の態勢がくずれないまま,しかも右の前みつを掴むこともなく,右を差すでもなく,無造作に寄って出ようとした。その結果,相手に双差しになられてしまった。が,ここからが速かった。強引に左手一本で上手投げにでる。そして,倒れ落ちながら相手の頭を抑えたものの,ほとんど同体で土俵のしたに落ちて行った。当然のことながら「もの言い」。

 テレビの映像で確認した結果,わずかに相手の肘が早く落ちていた。

 まことに際どい勝負だった。運がよかったとしかいいようがない。しかし,あの瀬戸際で,ほんの一瞬,体を残すことのできる運動神経のよさも,じつは実力のうちなのだ。足腰のバネが桁外れに優れているということ。こういう能力の高さが横綱になるための必要条件だ。そして,がむしゃらに勝ちを拾うために反応する本能的なからだ。考える以前に反応するからだ。これが現代の横綱には求められる。あとは,怪我をしない取り口を完成させること。

 残り4日間。上位力士との対戦が待っている。気持ちを引き締めて,今日のような相撲をとらないこと。得意の,つっぱり,のど輪,いなしを繰り出してから,素早く左上手をとること。そして,スピードに乗った切れ味鋭い上手投げを打ってから,右で前みつをとり,寄ってでる。この勝ちパターンに持ち込むこと。

 元横綱栃の海に言わせると,ここからさきは一睡も眠れない夜が待っている,と。日馬富士は,そのあたりは図太そうだから大丈夫だろう。気持ちをうまく切り替えて熟睡すること。そして,リラックスすること。場所に入るまでは相撲のことは忘れて,好きなことに熱中すること。子守でもしながら・・・。

 上位に強い日馬富士だ。ここからが本領発揮だ。
 これからの4日間,ほんとうの日馬富士の相撲が見られるはず。楽しみだ。

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