2012年1月7日土曜日

「アセスメント」持ち込みは沖縄の普天間基地固定化のための通過儀礼にすぎない,と元外務官僚の佐藤優氏。

「東京新聞」に「本音のコラム」という枠があって,山口二郎氏や佐藤優氏が登場したときは,必ず読むようにしている。なぜなら,わたしなどの時代や社会の読みとりとは次元の違う見解を示してくれることが多いからだ。

1月6日のコラムには佐藤優氏が登場。「みじめな鼠輸送」という見出しで,わたしにとっては衝撃的な見解を述べている。その内容は,正直に言って,ショックだった。なぜなら,防衛庁が,去る12月28日未明に,普天間基地の辺野古移設に関する環境影響評価(アセスメント)を沖縄県庁の守衛室に運び込んだのは,太平洋戦争時代に夜陰にまぎれて輸送を行った「鼠輸送」と同じ方法だったといい,さらに,つぎのように断言しているからだ。

「元外務官僚であった筆者には,普天間問題を担当する外務官僚や防衛官僚が何を考えているかが皮膚感覚でわかる。沖縄の反発を考えれば,辺野古移設の可能性がもはや皆無であると外務官僚,防衛官僚は認識している。そして,それど遠くない時期に日本政府が米国政府に『沖縄の状況に鑑み,普天間飛行場の辺野古移設は不可能になりました』と伝えるようになることも織り込み済みだ。その上で,普天間基地の固定化を考えている。そのための通過儀礼として,今回,防衛官僚は,みじめな『鼠輸送』を行ったのだ。」

これを読んで,なんとも思わない人は,もはや人間ではない。もちろん,エリート官僚は,人間を人間とも思ってはいないから,こんなシナリオを平然と描き,そのまま実践に移していく。そして,最終的には,またぞろ沖縄に基地問題のすべてを押しつけて,頬被りをしようとしている。大山鳴動して鼠一匹である。元の木阿弥とばかりに。

こんなことを「なさしめている」のは,じつは,沖縄問題に無関心を装う(実際に,ほとんどなにも知らない人が多い。知ろうともしない人はもっと多い),本土に生活しているわたしたちだ。そこまで官僚は読み取って,こんなシナリオを描き,政治家を動かしていく。官僚はほんとうに悪だが,それを「なさしめている」わたしたちはもっと悪い。

沖縄に基地問題を押しつけて,「県外移設」を拒否し,知らん顔をしている全国の都道府県知事も,同じく人間ではない。自分たちの府県でも,等分の負担をすべきだし,その用意はある,と答えたのは,あの橋本君,ただひとりだった。やれ独裁者だ,やれハシズムだ,と世間は姦しいが,この人間だけが全国都道府県知事のなかでは,たったひとり「人間」の顔をみせた。あとは,計算・打算の世界で生きている「人非人」たちばかりだ。穏健派を装う,冷徹無比の,自己中心主義者だ。いやいや,こういう人は,わたしの身の回りにもうようよいる。日本人の圧倒的多数はこういう人たちなのだ。そして,そういう人たちが政治を動かしているのだ。これが現実だ。まったくもって情けない。いやいや,またまた過激になってしまった。

こんなことを書くのは,同じ日の「東京新聞」の名物記事となっている「こちら特報部」で,フクシマの汚染土壌などを保管する中間貯蔵施設を福島県双葉郡に建設する政府方針をとりあげているからだ。これを読むと,またぞろ,弱い者に汚染土壌の保管を押しつけて頬被りしようとしている,この構造がオキナワとそっくり同じだからだ。双葉町長は「被害者に責任取らすのか」「町民の使い捨て,許さぬ」と声をあげている。ただでさえ,住む土地を追われ,避難生活を余儀なくされている上に,汚染土壌などの「中間貯蔵施設」を町民がいなくなった土地に建設しようと,政府は考えているのである。なんということか。こんなことを平気でできる政府与党とは,いったい,なんなのか。これを「人非人」と言わずして,ほかになんと呼べるのか。

では,汚染土壌を引き取ってくれる都道府県はあるのか。これまたオキナワと同じで,みんな顔を横に向けて知らぬ顔だ。少なくとも,この汚染土壌は,各都道府県で応分の負担をすべきだ,とわたしは考えるのだが・・・・。いやいや,それより前に,まずは,東京電力の保有する保養施設に持ち込むべきではないのか。そのくらいの責任をとったって,なんの不思議もないのに・・・・。政府はそれすら打診することもできない。東京電力に政府が乗っ取られている。原子力ムラなる恐るべきネットワークの実態が次第に明らかになりつつあるのだが・・・・。

正月の松の内だけは,こういうブログは書くまい,とこころに決めていたが,とうとう我慢できなくなって書いてしまった。いや,書かずにはいられなかった。このまま放置しておくと,日本列島全体がこのまま沈没していくこと間違いなしだから。

ことしこそ,もっとも多難な年になりそうだ。それにしては,危機意識が足りない。その上に政府与党は大あぐらをかいている。完全に舐められている。情けないが,これが現実。



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