2013年9月5日木曜日

足の運び方は「X」(英字のエックス)の筆記体のように左右ともに弧を描くように(李自力老師語録・その35)。

 いつものように太極拳の稽古をはじめ,基本の動作に入ったところで,なんの前触れもなく李老師がひょっこり顔を出してくださいました。その瞬間から,わたしのからだは緊張してしまい,こちこちに。いつもできることまでできなくなってしまいます。なんとも情けないことですがほんとうの話。すっくと立っていたはずの軸もぶれてしまい,あっちへふらふら,こっちへふらふら。李老師は準備運動をしながら,じっと,わたしたちの稽古をみていらっしゃる。

 ひととおり稽古が終ったところで,基本中の基本の指導をしてくださいました。
 それはなんと足の運び方でした。

 たとえば,右足から左足に体重を移し,右足を前に送り出すときには,一度,軸足になっている左足の真横まで引きつけてから弧を描くようにして右斜め前に送り出しなさい,と。そして,つぎに右足に体重を移したら,うしろにある左足を弧を描くようにして右足の真横にもってきてから,こんどは左斜め前に弧を描くようにして送り出しなさい,と。

 このときの左右の足の運び方は,真上からみると「X」(英字のエックス)の筆記体のようになります,と仰る。なるほど,と納得。こんなことは最初のころに言われていたはずなのに,すっかり忘れてしまって,勝手に足を運んでいました。恥ずかしいというか情けない。

 この足の運び方はうしろに下がるときも同じ。たとえば,右足に体重を移してから前にある左足を弧を描くようにして右足の真横に持ってきてから,こんどは,そのまま弧を描くようにして左斜め後ろに運びます。そして,左足に体重を移したら,こんどは前にある右足を弧を描くようにして左足の真横にもってきてから,右斜め後ろに弧を描くようにして運びます。

 このときの左右の足の運び方も,真上からみると「X」(英字のエックス)の筆記体のようになります。

 たった,これだけの動作なのに,李老師の足の運び方は,わたしたちとはまるで別世界のような美しさです。しかも,ねばり強く,どっしりとしていて,淀むことなく流れるように,足が引きつけられ送り出されていきます。そのポイントを伺ってみましたら,軸足の安定にある,とのこと。軸足が安定していれば,浮いている足は自由自在に動かすことができます,と。

 というわけで,こんどは,片手を壁に当てて,片足立ちになり,浮いた足を前に送り出したり,後ろに送り出したりを繰り返します。なるほど,軸足が安定すると,浮いた足は自由自在に動かすことができます。ですから,イメージどおりに弧を描くようにして前にも後ろにも送り出すことができます。つぎに,反対足を軸足にしてやってみます。

 こんどは,壁から離れて,軸足一本で立ち,他方の足を前に送り出したり,後ろに送り出したりの稽古をします。すると,とたんに「ふらふら」してしまって,余裕をもって弧を描くように足を運ぶことができなくなってしまいます。なるほど,問題は「軸足」の安定だと納得です。

 そして,このときのもうひとつの技法を教えてくださいました。それは,体重を移動させるときの技法です。たとえば,右足から左足に体重を移す瞬間に股関節をゆるめて,ほんのわずかだけ重心を低くすると,右足が床から浮き上がるように離れます。その逆も同じです。前に進むときも,後ろに下がるときも同じです。ここでも「股関節をゆるめる」が基本だというわけです。

 こんなことも,言われてみれば,最初のころに教えていただいたことです。なのに,すっかり忘れてしまって,我流で足を運んでいたという次第です。稽古場はエアコンが効いていて暑くはないのに,冷や汗たらたらです。

 簡単な動作ですが,とても大事なことを,ピンポイントで教えていただきました。こんどこそ,忘れることなく,からだに叩き込むべく稽古に励みたいと,いまさらのように思いを新たにしました。

 李老師,謝謝!

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