2014年3月18日火曜日

バレエダンサーの米沢唯さん,中川鋭之助賞を受賞。おめでとう!

 新進気鋭のダンサーに贈られる中川鋭之助賞を米沢唯さんが受賞した,という囲み記事(「この人」・東京新聞)が今日(18日)の朝刊に掲載されていました。早速,切り抜いて保存しました。笑顔で座っている米沢唯さんの写真もあって,しばらくじっと眺めてしまいました。やはり,どこか似ているなぁ,と思いながら。


 米沢唯さんは,いまは新国立劇場に所属するプリマドンナ。「白鳥の湖」「くるみ割り人形」「ジゼル」などの主役を務めています。押しも押されもしない堂々たるプロのダンサーです。その活躍ぶりは,それとなく情報が入ってはいました。が,中川鋭之助賞を受賞するほどに注目される存在になっていらっしゃるとは,考えていませんでした。ですから,この記事を読んでわがことのように嬉しくて仕方がありません。


 米沢唯さんは,わたしにとっては竹内敏晴さんのお嬢さん。まだ,面識はありません。しかし,わたしのなかには米沢唯さんのイメージがしっかりと出来上がっています。なぜなら,折に触れ,竹内敏晴さんからお嬢さんの唯さんの話をお聞きしていたからです。


 「人間には天性というものがあるようです。うちの娘はダンスが好きで好きでたまらないようです。家に帰ってからも,暇さえあればストレッチをしたり,柔軟運動をしたりしてからだと向き合っています。よほど好きでなければあそこまではできません」とニコニコ顔でお話をしてくださった竹内さんの顔はいまでも鮮明に記憶に残っています。


 またある時には,唯さんの活躍の新聞の切り抜きをもってきてみせてくださいました。「なんだかよくはわかりませんが,どうやらダンサーの道に進んでいくようです。本人が好きで進む道ですから,親は静かに見守るだけです」と,これまた嬉しそうに話されました。それが,高校一年生でローザンヌ国際バレエコンクールの最終審査に残ったときの新聞の切り抜きでした。


 そしてまたある時には,「とうとうアメリカに行ってしまいました。いまごろは苦労していると思います。が,そこをクリアしないことには道は開かれてはきませんから・・・」と。さすがに,この時は,いささか寂しそうに,しかし,こころの奥底には期するものがある,と感じさせる雰囲気がありました。この時が,19歳でアメリカ・サンノゼ・バレエ団に入団したときのことでした。


 新聞にある唯さんの談話では「英語もままならない。一人暮らしも初めて。4年間苦しみ抜きました」ということです。新聞によれば「バレエに集中するあまり電気,ガス料金の振り込みが滞り止まったことも。適正な食事の量や睡眠時間まで分からなくなった。」「バレエと生活を両立しないとプロではない。心身ともにアンバランスだった」と。この4年間,いかに徹底してバレエに集中した生活であったかが,伝わってきます。


 そして,2010年に失意の帰国。そうです。父・竹内敏晴さんが亡くなられた年です。わたしたちもショックでしたが,唯さんにとっては想像だにしなかった衝撃だったことでしょう。ご高齢ではありましたが,すこぶるお元気で,休む暇もないほどスケジュールを埋め,全国を飛び回るようにして「竹内レッスン」をつづけておられたからです。唯さんはとうとう父・竹内敏晴さんの死に立ち会うことはできませんでした。


 帰国後,一度はプロのダンサーであることを諦めかけていましたが,新国立劇場のオーディションを受けてみることにします。不合格ならバレエは趣味に,と腹をくくっての受験でした。が,みごとにソリストとして採用され,こんにちに至るというわけです。


 唯さんは,文章の達人でもあります。帰国後に書かれた父・竹内敏晴さんへの追悼の文章を読んだとき,わたしは凍りつきました。文章の力が素人ではありません。まるで,竹内敏晴さんが乗り移ったかのような,説得力のある文章でした。その中の一節に,「わたしがステージに立つときには,父はかならず客席の一番後ろに立って,じっとこちらを見てくれているはずです。わたしはそのつもりで踊ります」とありました。この一節を読んだ瞬間にわたしの涙腺は一気に緩んでしまいました。そして,嗚咽してしまいました。


 新聞の記事の最後の唯さんのことばがまた素晴らしいので,そのまま引いておきます。
 「満席の観客が,すっと舞台に集中する瞬間をつくるのがダンサーの力。そういう空間で踊っていたい」。まるで竹内敏晴さんのことばではないか,と目を疑いたくなってしまいます。やはり,血筋というものは争いようがないようです。


 この受賞を機に,また一皮剥けたダンサーの力を発揮して,多くの人を魅了する舞台をつくってくださることを祈ります。いよいよ,わたしも舞台を拝見したいものと思っています。できるだけ早い時期に実現したいと思っています。


 米沢唯さんのますますのご活躍を祈っています。そして,応援していきたいと思っています。
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