2015年12月2日水曜日

『どうせ死ぬなら「ガン」がいい』(中村仁一×近藤誠著,宝島新書)を読む。納得すること多し。

 もうかなり前に,帯津良一さんの本との出会いがあり,ガンに関する本はかなり読んでいました。ガン細胞は自分の細胞の遺伝子に異変が起きるだけなので,抗原抗体反応が表れない。つまり,他者として認識しないので,自覚症状もほとんど感じられないまま,病変だけが進行するというやっかいなしろもの,というわけです。

 ガンについては,そんな程度の認識でしたが,昨年2月に初発の胃ガンが見つかってからは,本の読み方が変わりました。これはとおもわれる本は片っ端から買ってきて,むさぼるようにして読み漁りました。が,どの本も,わたしを納得させることは書いてありませんでした。

 つづいて,知り合いのお医者さんにも,片っ端から質問をし,なにか納得のいく手がかりは得られないものかと,あれこれ努力してみましたが,いずれも心の底から納得のいく答えはありませんでした。一括りに要約してしまえば,「一般論としては」とか,「文献データによれば」という前提つきの説明でしかありませんでした。つまり,末期ガンを生きるわたしという人間が,どのような対応をすればいいのか,という総合的な判断をする根拠は見つからなかったということです。

 その結果,ゆきついた,わたしの理解は以下のとおりです。
 〇切除手術がうまくいく人もあれば,そうでない人もある。
 〇抗ガン剤がうまく効く人もあれば,そうでない人もある。
 〇放射線治療がうまくいく人もあれば,そうでない人もある。
 要するに,個体差がありすぎて,個別の症例に対する決め手がない,ということがわかりました。

 その結論としては,「ガン治療に方程式はない」ということ,そのほとんどは「試行錯誤」でしかないということ,それだけでした。

 そして,うまく治療ができた人はラッキーな人(運のいい人),いつまでもはっきりしない人はアンラッキーな人(運の悪い人),さらに,あっという間に,この世とお別れしてしまう人は,そういう星のもとに生まれた人だと諦めるしかない,これが,いま現在のわたしの到達点です。

 ここまで到達したときに,わたしの眼に,かなり説得力のある本として,帯津良一,中村仁一,近藤誠さんらが書いた本がふたたび蘇ってきました。言ってしまえば,原則として,「放置療法」です。すでに,確立されている治療法がある事例はほんのわずかで,あとは,暗中模索なのだというのです。だとしたら,切除して体力を消耗したり,抗ガン剤や放射線の副作用に悩まされたりして,苦しむよりは,そのまま放置して「生活の質」(Quolity of Life )を維持しながら,元気な時間をエンジョイした方がいい,ということになります。

 ちなみに,治療を一生懸命やった人と,なにもしないで放置した人との寿命は,統計処理をしたかぎりでは,ほとんど変わらない(近藤誠)といいます。しかも,治療に専念した人の最後は,激痛に苛まれ,苦しむ人が多いといいます。他方,放置した人のほとんどは「自然死」に近い,つまり,痛み苦しむことなく,こと切れることが多いといいます。

 だとしたら,どちらを選ぶかは自明のこととなってきます。

 それよりももっと大事なことがひとつあります。それは,自分の命の終わり方をどのようにするか,という「生き方」の結末のつけ方の問題です。つまり,「死に方」です。別の言い方をすれば,どのようにして,与えられた生命をまっとうし,その上で,どのように死を迎えるか,その幕の引き方です。それは,わたしという人間の「生き方」の最終のテーマとなります。つまり,「死ぬ」ということは,わたしの全人生をかけた,最後の「演出」であり,「幕引き」です。この一点に,大げさに言えば,わたしの全人生がかかっている,ということです。もっと言ってしまえば,わたしの人生の総決算だ,ということです。

 このことを考えさせてくれるのも,じつは,癌患者だからです。死ぬとしたらガンで死ぬ。そのことがはっきりしているからです。これは考えようによってはとても幸せなことだともいえます。覚悟の上での死を迎えることができるのですから。

 それでも,できることなら,可能なかぎり「自然死」がいい。昨日まで,ふつうにしていたのに,朝になったら死んでいた・・・・これが理想です。

 こんなところに,わたしの思考がたどりつきつつあるのは,これまでに読み込んできた思想・哲学の本のお蔭であり,仏教関連書の影響が少なくありません。かんたんに言っておけば,「わたし」という自我(近代的自我)から解き放たれたさきに広がる,「いのち」のままに躍動する世界(彼岸)に身もこころも委ねること,これが「生きる」ということの基底ではないか,ということです。

 こんなことを考えさせてくれるきっかけとなった一冊,それがこの本でした。
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