2015年9月21日月曜日

「手首の力を抜いてぶらぶら振ってみなさい」・李自力老師語録・その59。

 李老師が,ある時,こんな話をしてくださいました。

 「手首をぶらぶら振ってみなさい。そうです,そうです。このとき,手の指の力は抜けていますね。こんどは,手の指に力を入れて,手首をぶらぶら振ってみなさい。手首は固くなってしまって,ぶらぶら振ることはできませんね。」

 「これと同じように,肩に力が入ってしまうと,上腕も前腕も肘も手首も指も硬直してしまいます。ですから,まずは,肩の力を抜くこと。そうすれば,腕から指先まで力が抜けて,柔らかで滑らかな腕の動作ができるようになります。」

 「このことは,脚の動作でも同じです。つまり,股関節が緊張していると,膝,足首,爪先もまた緊張してしまいます。とにかく,必要のない筋肉をいかに弛緩させるか,これが流れるような美しい動作を導き出す上で不可欠です。」

 この李老師のことばを,折に触れ,思い出しては考えていましたら,以前につぎのようなことを話してくださったことを思い出しました。

 「一動無有不動」
 「一静無有不静」

 つまり,ひとつの動作をするときには,からだ全体が動いているのであって,その部分だけが動いているのではない。同じように,ある部分の動作を静止させるときには,からだ全体を静止させることになる,というわけです。

 このことばに倣って,こんな風にも言えるのではないか,と考えてみました。
 すなわち,
 「一弛無有不弛」
 「一緊無有不緊」

 「弛」とは,「弛緩」の「弛」の意。
 つまり,からだのどこかを弛緩させるには,全身を弛緩させることが必要であり,どこかを緊張させるということは全身を緊張させることになる,という次第です。

 とまあ,頭のなかではなんとなくわかったつもりにはなれるのですが,実際にからだを動かすとなると,そうはかんたんにはいきません。だから,普段の稽古の積み重ねが重要になってくるのでしょう。これも,頭ではわかっているつもりなのですが・・・・。

 つまるところ,太極拳の究極のゴールは,必要最小限の筋肉だけを使い,あとの筋肉はすべて弛緩させることにあるようです。もっと極言してしまえば,筋肉で動かすという意識を忘れなさい,そして,骨を動かしなさい,ということになるようです。そして,これができるようになることを「骨(こつ)をつかむ」「骨をおぼえる」と言うのだ,と。

 最後の「骨」の話は,ある地唄舞の名手が語ったことばからの借用です。芸事のすべてに通ずる表現で,素直に納得してしまいます。

 太極拳の「骨」をつかむところまで,なんとか頑張って稽古に励みたいとおもいます。

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