2015年10月31日土曜日

立憲デモクラシーの会・公開シンポジウム「安保法制以後の憲法と民主主義」に行ってきました。

〔立憲デモクラシーの会・公開シンポジウム〕

日時:10月30日(金)18:00~20:30
場所:日本教育会館3Fホール(神田神保町)
テーマ:安保法制以後の憲法と民主主義
司会:山口二郎
演者:杉田 敦,五野井郁夫,青井未帆

 かなり大きなホールでしたが,ほぼ満席。盛況でした。
 司会の山口二郎さんはもとより,演者のみなさんも気合十分。気魄のこもったシンポジウムになりました。それに呼応するかのように聴衆もまた一流でした。壇上とフロアの呼吸が合うと拍手が起きたりして,とてもいい雰囲気でした。あの安保法制の議決の仕方をみて,すっかり熱が冷めてしまったかとおもっていましたが,どっこい,前にも増して熱気を帯びていることを知り,大いに勇気づけられました。壇上の演者もそれを聞く聴衆も,これから以後も,みんなやる気十分でした。ちょっと無理をしてでかけてよかったとおもいました。

 まずは,開会の挨拶に立った樋口陽一さんのことばが印象的でした。そのいくつかを紹介しておきますと,「終わりなき長期戦のはじまりである」「学問は多数決ではない」「徹底した相互批判をすることが学問の本質だ」「個でありつづけて,連帯を恐れず」,など,かつての東大全共闘との団交でのやりとりなどを交えたお話が強く印象に残りました。

 
つづいて杉田敦さん。「立憲デモクラシー」ということばが日本の社会にも定着しはじめたことが,今回の安保法制の議論をとおしての一つの成果だったのではないか。じつは,立憲デモクラシーということばは,立憲主義+民主主義という意味なのだが,この二つの主義は相反する要素をもっていて,相互に緊張関係にあることを忘れてはならない。立憲主義は「法の支配」を意味するし,民主主義は「個としての自律性」を守る。憲法は準則ではなく原理である(長谷部)という立場を支持したい。世間には分離解釈の立場をとる人たちがいて,その立場からの批判もあるが,それは憲法解釈には不適切であり,間違っている。憲法はどこまでも権力の暴走を食い止めるための装置なのだから,原理として重視しなくてはならない。それがはずれてしまったら,権力は暴走するのみだ。それが,いまの情況を生みだしている。

 つぎに,五野井郁夫さん。議会制民主主義はみるも無惨に崩壊してしまったが,議会の外での民主主義が大きく育ち,政治の理想を語る文化が誕生した。とりわけ,SEALDs の若者たちの活動が際立っていた。たとえば,プラカードをはじめ,英語が多用されたことが,これまでの抗議行動にはみられなかった新しい傾向として注目されてよい。それは,日本のメディアが頼りにならないので,英語表記を多用することによって外国のメディアに訴え,外国の新聞が大きく取り上げることによって,日本の新聞社などがそれを報道する,という効果を狙ったものだ。これは「ブーメラン効果」と呼ばれる一つの運動の手法である。これがみごとに成功していた。

 
つづいて,青井未帆さん。安保法制は違憲である,という立場から発言したい。憲法を無視し,議会法をも無視して誕生させた安保法制は,違憲以外のなにものでもない。こんな異常なことが議会をとおして起きてしまった。つまり,ルールのない世界に突入してしまったということだ。こんなことは前代未聞である。しかし,なぜ,こんな異常な事態が起きてしまったのか。ひとつには,国民の責任を問わなくてはならない。ふたつには,国会議員に立法府の人間としての特権が認められているという自覚が欠落しているのではないか。議員を自律させるための国民の厳しい監視が求められるだろう。「人間かまくら」的議決は断じて許せない。かくなる上は,わたしたちがルールをつくっていかなくてはならない,そういう現状認識と自覚が必要。わたしたちの「立憲デモクラシー」を作り上げていくこと,そして,法秩序を回復させること,それが重要である。

 
とまずは,シンポジストの基本的な考えがひととおり述べられてから,司会の山口二郎さんからもひととおりの所感が述べられた。そのあと,演者間のディスカッションに。その内容は,とても魅力的なものでしたが,長くなるので,ここでは割愛。

 そして,最後に,山口二郎さんの指名を受けて,西谷修さんがフロアから,立教大学の事例をジョークを交えて報告。つまり,学者の会の研究会のための会場貸し出しを拒否した,そのことの意味とその余波について,を報告。今回のシンポジウムで,初めて会場が笑いにつつまれた時間でもあった。笑いのなかに,じつは,日本の社会が抱え込んでいる「政治的中立」の歪みという普遍のテーマを浮き彫りにする,とても重要な話をされました。

 
以上,シンポジウムを傍聴した感想の,ほんの一部の紹介です。詳しくは,IWJの動画がネット上で流れているとおもいますので,そちらをご覧ください。とりあえず,これにて。
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