2014年2月1日土曜日

九重親方(元横綱千代の富士)が理事選挙で落選。なにかのはじまり?

 栄枯盛衰は世の常だ。が,それにしても,九重親方の理事選挙落選には驚いた。長い間,理事を勤め,前事業部長の重責を担ってきた角界ナンバー2である。北の湖理事長の後継者として,次期理事長の呼び声も高かった人である。現に,この初場所では北の湖理事長の体調不良にともない,理事長代理として協会挨拶をこなしている。現役時代の実績といい,理事としての活躍といい,なに不足ない人物として誰もが認める存在である。

 なのに,この九重親方が落選した。

 いろいろ揉めに揉めた日本相撲協会の「公益財団法人」化への移行も,なんとか乗り切り,そのための新体制を固める上で重要な理事選挙だったはずだ。ここに思いがけない落とし穴が待っていた。

 ことの発端は貴乃花。
 日本相撲協会の理事は,各一門ごとに候補者を絞り込んで,一門のもっている基礎票(投票権のある親方の数)を配分するのが長年の通例となっていた。だから,一門の推薦がないかぎり理事にはなれない。まだ若かった貴乃花は,このままでは当分の間,理事にはなれないと判断。一門を飛び出して,貴乃花グループを結成して浮動票をかき集める作戦にでた。こんなことをしても当選は不可能という下馬評をくつがえして,みごとに理事に当選した。今回も,一門ではなく,「貴乃花グループ」として9票を確保して当選。

 この9票は,いわゆる浮動票で,親方衆が自分の所属する一門が推薦する理事候補を振り切って,自分の意思で投票行動にでる,その票だ。言ってみれば,貴乃花の協会改革案に賛同する親方衆の票だ。その改革案の一つが,理事選挙の方法。一門で票を配分するのは年功序列に縛られ,民主主義の原則にも反するというわけだ。この考え方に賛同する親方衆が一門を超えて票を投じている。それが9票ある。

 そのために一門は票の確保に必死だ。これまで以上の強い締めつけがなされたと聞く。それでも,その一角は崩れつつある。それが九重親方の所属する高砂一門だった,というわけだ。

 高砂一門の今回の基礎票は14。もともとは一門の親方は12人。そこに別の一門からの協力票などがあり,14票以上あった,という。しかし,その肝心要の協力票は,どこか別のところに流れてしまった。その結果,高砂一門から立候補していた八角親方(元横綱北勝海)が9票,九重親方が5票。計14票。

 九重親方は「不徳の致すところ」とひとこと述べただけだ,という。あの「体力の限界っ!」と全身から絞り出すようなひとことが想起される。この横綱千代の富士を引退に追い込んだ最後の一番の相手は貴乃花だった。奇縁というべきか。

 われわれ外部にいる者には知ることのできない日本相撲協会内部の確執がその背後にあることは間違いない。それにしても九重親方をはずす勢力が,ここまで大きくなってきているとは。つまり,次期理事長ポストをめぐる権力闘争のはじまりだ。

 これ以上の詮索は,いまの段階では差し控えておこう。なにか,わたしたちの眼にみえないところで,大きな地殻変動が日本相撲協会内部にも起きていることは間違いない。

 それでも考えてみたいことは,伝統芸能が近代化するとはどういうことなのか,ということだ。この問題については,また,別件で取り扱ってみたいと思う。今回はここまで。
 
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