2014年9月4日木曜日

「武術の技を意識して演ずること」・李自力老師語録・その50。

 今日の稽古はじつにきめ細かな指導が李老師からありました。それらを一つひとつことばで説明することはほとんど不可能なほどのレベルの内容でした。李老師は,いつもそうですが,まずはみずから率先垂範してから,その動作の説明をしてくださいます。ですから,その場ではなんとなくわかったように感じます。しかし,それを自分のことばで説明せよ,と言われたら困ってしまいます。ですから,今日の稽古の内容について説明することは至難の技というほかはありません。でも,思い切って,チャレンジしてみようと思います。

 たとえば,24式の冒頭に行われる腕の挙げ降ろしの動作。この動作がどういう武術の技であるかをしっかりと意識して行うこと,というご指導がありました。腕を挙げるときには両腕を捉えた相手を押し倒すイメージで行うこと,そして,挙げた腕を降ろすときには相手の手首をつかんで手前に引き倒すイメージで行うこと,と。ただ,腕を挙げ,降ろすだけなら,だれにでもできます。しかし,武術としての技が有効であるように演ずることは,ことほど左様に容易ではありません。

 李老師は,何回も何回もやって見せてくださいます。それを必死に真似てやってみるのですが,どこか基本的なところで違うことに気づきます。それを,どこが,どのように違うのかということをことばで説明することは,たぶん,不可能なのではないか,とわたしは思います。しかし,それでは意味をなしませんので,わたしの理解の範囲内でなんとかことばで説明してみたいと思います。

 李老師の示範をよくよく観察してみますと,わたしの眼にはつぎのように写ります。まず,両腕を挙げはじめる瞬間に股関節をほんのわずかに緩めているようにみえます。つまり,沈している,というわけです。沈した直後にゆっくりと両腕を挙げる動作に入ります。その瞬間に肩の力も抜け(両肩がわずかに下がるのがみてとれます),肘の力が抜け(脱力状態になる),手首へと力が伝動していくように見えます。すなわち,沈した股関節を両足でしっかりと支え,踏ん張るようにして足裏から両脚をとおして力を上に伝え,上半身から両腕に伝えるという動作をしている,というわけです。そうして,この手首まで力が伝わったときが技のクライマックスとなります。このとき,しっかりと相手を押し倒すというイメージを描くことが大事だ,と李老師は仰います。この流れるような力の伝動が,至難の技であるわけです。しかも,できるだけ力を抜きながら,なおかつ力強さを表現しなさい,と仰る。

 まるで禅問答のようです。しかし,それを実際にやってみせてくださいます。となると,納得せざるを得ません。あとは反復練習あるのみです。繰り返し,繰り返し練習をして,からだに叩き込む以外にありません。

 つづいて,両腕を降ろす動作に入ります。このときも,股関節と両肩の関節をほとんど同時に緩めているようにみえます。そうして,緩んだ両肩の力が両肘に伝えられ,両肘もまた脱力するようにして折れ曲がります。そのときに,手のひらをただ,下に抑えるのではなく,肘が折れ曲がると同時に相手の腕を手前に引き降ろす技のイメージを描くことが肝腎だと仰います。相手の両腕をつかんだ両手は,ちょうど円弧を描くようにして手前に引き降ろします。このことを意識して稽古しなさい,と李老師は仰います。それができるようになると,世界は一変します,と。まるで次元の違うからだの体験ができる世界です,とも。しかも,そのさきにはもっともっとからだの快感が突き抜けていく世界がある,とも。

 さあ,大変です。この,たった,両腕を挙げたり,降ろしたりするだけの動作なのに,その奥は無限に広がる世界が待っている,と李老師は仰るわけです。

 しかも,この両腕を挙げたり,降ろしたりする動作が太極拳の腕の動作の基本になる,と李老師は仰います。つまり,腕の動作の基本は円弧を描くようにすることだ,と。そして,太極拳の技に入るときには必ず股関節を緩めて(沈して),そこから力強さを引き出すことが肝要だ,と。

 以上は今日の稽古のほんの一端にすぎません。でも,このことがわかればあとはその応用のようなものです。太極拳のもともとの技の意味をしっかり理解して,それらをイメージしながら演ずることを,いろいろの技を例にとって稽古の指導をしてくださいました。それらは膨大な情報量で,文章にするとエンドレスになってしまうのではないか,と思うほどです。

 太極拳の技の意味をしっかりイメージして,動作の稽古を積み重ねていけば,そして,それらが理に叶ったやり方でできるようになれば,必ずそのさきにはからだの快感が待っている,と李老師は仰います。

 しかし,考えてみれば,ようやくこのようなレベルの指導を受けることができるようになった,ということでもあります。これはとてもありがたいことです。かくなる上は,こころを入れ換えて,これまでの意識からもうワンランク,アップさせて太極拳の稽古と向き合うようにしたいと思っています。でも,それは至難の技でもあるのですが・・・・。あとは,わたしの心構え一つということになるでしょう。いささかですが,意欲が湧いてきた今日の稽古でした。

 李老師に「謝謝」です。そして,これからもよろしくお願いいたします。というところで今日のところはここまで。
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