2014年9月14日日曜日

東京五輪・ゴルフ会場決定の「闇」(文藝春秋・10月号・上杉隆執筆)。

 ジャーナリストの上杉隆が「東京五輪・ゴルフ会場決定の『闇』」というルポルタージュを『文藝春秋』10月号に寄せています(P.154~163.)。読んでみたら驚くべき内容でしたので,みなさんにも知ってもらいたく,以下にそのツボを書いておきたいと思います。

 2020年の東京五輪の施設利用については,さまざまな不可思議なことが明らかになっていて,とうとう舛添知事も予定されているすべての競技施設について「見直し」をすると宣言し,いま,その作業の真っ只中だとニュースは伝えています。その一つであるゴルフ会場の決定に異議あり,という声がゴルフ界からあがり,それを手がかりにしたルポルタージュが提出されたという次第です。これからゴルフに限らず,このような異議申し立てが続出してくるのではないか,とみられます。

 上杉隆が,これは?と疑問をいだいて取材をはじめたきっかけは,倉本昌弘の「告発」だったといいます。倉本昌弘といえば,プロゴルファーとしてその名をとどろかせ,いまも現役のプロゴルファーです。が,いまは,もう一つの肩書をもっています。それは「公益社団法人日本プロゴルフ協会」(PGA)会長という肩書です。そのPGAの会長である倉本昌弘が,五輪のゴルフ会場の選定方法/決定にクレームをつけたのです。そのため,いま,日本のゴルフ界を震撼させている,と上杉隆は書いています。

 最大のポイントは,ゴルフ会場が,東京都にある「若洲ゴルフリンクス」ではなくて,埼玉県にある「霞が関カンツリリークラブ」に決まったのはなぜなのか,というのが倉本会長の疑問です。

 若洲ゴルフリンクス(以下,若洲と略す)は東京都港湾局が所有するパブリックのゴルフ場です。それに対して霞が関カンツリリークラブ(以下,霞が関と略す)は名門中の名門でプライベートの施設です。したがって,若洲でやれば無料,霞が関であれば借り上げ料が少なくとも1億円はかかる,といいます。しかも,若洲は選手村にもプレスセンターからも至近距離にあります。それに対して,霞が関は車で順調に走って1時間,渋滞に巻き込まれると2,3時間を要するといいます。

 このようにして,両者を細部にわたって比較していきますと,若洲の方が圧倒的に五輪会場として条件が整っています。にもかかわらず,霞が関が選定されてしまいます。なぜなのか,ということで上杉隆の取材がはじまります。それによりますと,以下のとおりです。

 2016年東京五輪招致のときのIOCに提出された計画書には,ゴルフ会場は若洲と書いてあった。そして,2012年2月に都の東京五輪招致委員会がIOCに提出した申請ファイルにも若洲と記載されていた。しかし,半年後の8月に,霞が関が最有力候補として選定され、10月には霞が関に通知,11月には国際ゴルフ連盟(IGF)が視察,12月に承認,その直後にIOCが確認,という段取りを踏んでいる。

 しかし,さらに取材をつづけてみたら,2012年4月12日に会場選定のカギとなる会議,すなわち「2020東京招致委員会」の第一回目の会議が開かれたことが明らかになってきます。その会議の中心メンバーは日本ゴルフ協会(JGA)の幹部たちで,財界・皇族をふくむ錚々たるメンバーでした。つまり,日本最大のアマチュアによるゴルフ団体です。この人たちが,若洲を捨てて,霞が関を選定したということです。

 不思議なのは,五輪のゴルフ競技はプロゴルファーの参加に限られることが確定しているにもかかわらず,日本プロゴルフ協会のメンバーが,この重要な会議にひとりも加わってはいなかった,という事実です。なぜ,そんなことになっていくのか,ということに疑問を感じた上杉隆は,さらに取材をつづけます。そして,最後には,その当事者たちに直接の取材を申し入れます。しかし,みんな「多忙」を理由に断られてしまいます。仕方がないので,JGAの理事長の木村希一から,わかる範囲での情報を手に入れます。そのことによって,かなり詳細な傍証をえることができ,上杉の推理が冴えてきます。

 しかし,それでもなお,疑問の核心部分は「闇」の中のまま。

 最終的には,ゴルフの代表選手を選定するのは日本プロゴルフ協会のはず。なのに,その団体の関係者を抜きにして,ゴルフ会場が若洲から霞が関にすり替えられてしまう,その奇怪さはどこまでもついてきます。

 こんどの2020東京五輪招致には,このような「闇」の部分があまりにも多すぎます。そして,すべてはこのようなやり方で決まっていきます。つまり,きわめて閉鎖的で,不透明で,非民主的です。ある特定の一部の人たちの「利益」だけが優先され,税金が投入される都民や国民の「利益」は無視です。

 その典型的な事例の一つが,新国立競技場問題です。ゴルフ会場の選定についても,その組織の体質はまったく同じです。これでは,だれのための東京五輪なのか,わけがわからなくなってしまいます。日本人のこころが一つになる絶好のチャンスなのに,これでは台無しです。もっとオープンに,公明正大に,東京五輪の準備をすすめてもらいたいものです。
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