2014年11月23日日曜日

いま,辺野古がたいへんなことになっている。解散・選挙のドサクサにまぎれて米軍基地移設工事を強行中。

 「沖縄県民の意思に関係なく,辺野古への米軍基地移設は日米協定にもとづき粛々と進める」(菅官房長官発言)という,まさに民主主義を否定するような発言を,ほとんどのメディアは無視して,スルーしてしまっている。しかも,その菅官房長官の発言のとおり,沖縄県知事選挙の3日後には,沖縄県民の意思を無視して,辺野古での米軍基地移設の工事が再開された。のみならず,こんどは警察が移設工事に反対する住民に対し,選挙以前よりも乱暴な暴力をともなっている,という。

 米軍キャンプ(シュワブ)の正門横に青いテントを張って座り込みをつづけている人たちが,工事再開を聞いて,正門を封鎖するために正門前に並んだり,寝っころがったりして,工事用の車の出入りを止める行動にでた。すると,沖縄県警がやってきて,この人たちの排除にとりかかった。なかには,殴る,蹴るの暴力まで行使する警察官もいたという。そして,とうとう一人の老婆が倒れ,病院に搬送されるという騒ぎまで起きている。

 一方,辺野古の海では移設反対を唱えるカヌー隊が,海上保安庁の舟に「これまで以上に」強引に曳航されて,沖に排除されているという。いまでは,40隻あまりの海上保安庁の舟が出動して(小笠原諸島にまわす海上保安庁の舟は足りないのに),カヌー隊の監視にあたっている,とか。しかも,そのやり方は次第に荒っぽくなってきている,と。

 ここでは,そうした事態の詳細は割愛させてもらう。詳しくは,琉球新報や沖縄タイムスのネット版で確認すればわかる。また,わたしのFBでも,関連の情報をリンクして流しているので,そちらも確認されたい。写真つきのかなり詳細な内容がわかるようになっている。それらを見るかぎり,無惨としかいいようがない。

 これは,どう考えてみても,この解散・選挙のドサクサまぎれて,多少の暴力も「容認」しつつ,一気に移設工事を進展させておこう,という政府自民党の思惑があるとしか,わたしには思えない。案の定,この事態の進展をメディアは無視。メディアの話題は,もっぱら,解散・選挙関連のものばかり。かと思えば,われわれ日本人にとってはさほど重要でもない外国の情報を,大げさに流したりもしている。こうして,結果的に,いま,沖縄の辺野古で起きている非常事態は,完全に蓋をされてしまっている,というのが現状だ。政府自民党の思惑どおり,と言ってよい。

 一説によれば,解散・選挙は,沖縄県知事選挙が終わったらすぐにやる,という政府自民党の執行部の意思は,かなり早い時点で折り込み済みであった,という。なぜなら,沖縄県知事選挙で自民党が推薦する仲井真氏が勝てない,ということが最初からわかっていたからだ。だから,負け戦は避けた方がいいという意見もあって,なかには,仲井真氏の立候補を取り下げて,「不戦敗」という手段も検討されていた。が,そうはならなかった。

 その結果,「オール沖縄」の推す翁長雄志氏が約10万票の大差をつけての圧勝だった。この選挙は米軍基地の辺野古への移設が争点になった,と報じられ,そのように受け止められている。それはそのとおりなのだが,しかし,もうひとつの大きなテーマが「オール沖縄」の主張にはあった。それは「沖縄のアイデンティティ」の主張であり,「自己決定権」の主張である。つまり,沖縄は沖縄であり,沖縄のことは沖縄県民の意思で決めるのだ,という主張だ。

 米軍基地問題は,これまで沖縄県知事から日本政府に働きかけて,さまざまな改善のための要求がなされてきた。しかし,いつまで経っても改善の目処は立たないまま。「本土並み」という前提条件をかかげて「本土復帰」をはたしたのが1972年。それから40年余。事態は改善されるどころか,半永久的に米軍基地が沖縄に定着してしまうという最悪のシナリオが,日米協定となってこんにちを迎えている。かくして,沖縄県民の夢も希望も完全に無視されてしまった。

 かくなる上は,日本政府はもう当てにはならない。ならば,アメリカ政府と直接交渉(直訴)する以外にはない。そのためには,沖縄県民の意思を,しかも,圧倒的多数の意思を明確にする必要がある。そうして立ち上がってきた運動体が「オール沖縄」だ。もはや,党派やイデオロギーを論争している場合ではない,と。必要なのは,「沖縄のアイデンティティ」を明確にすることであり,「自己決定権」を明確に主張することだ,と。

 これが,こんどの沖縄県知事選挙の最大のポイントだった,とわたしは受け止めている。おそらくは,政府自民党も,この「オール沖縄」の運動が話題になり,これからさらに加速されて展開し,日本全国にも大きな影響を及ぼすことになることを,もっとも恐れたのではないか,とこれはわたしの推測。だから,なにがなんでも,早急に,この沖縄情報を,一旦は,遮断する必要がある。そのための鬼の手が,解散・選挙という首相の専権事項の行使である。

 こうして,とりあえずは,沖縄の「自己決定権」の主張に蓋をしておこう,というのが今回の解散・選挙の引き金の大きな要因になった,とわたしは考えている。そのすり替えが「アベノミクス解散」というお題目である。かくして,沖縄とフクシマという政治の最大の課題から,国民の目をそらすことができる,と。そして,憲法9条(閣議決定による集団的自衛権の行使容認)からも,原発推進からも,国民の目をそらすことができる,と。

 いまの野党はだらしがないから,いとも簡単に「アベノミクス解散」に吸いよせられ,金目の話に熱中してしまう。野党も駄目なら,国民も駄目。金目の話には興味・関心を示すが,国家の大義には目もくれない。その点,沖縄県民は立派だ。金目の誘惑を断ち切って「沖縄のアイデンティティ」と「自己決定権」という大義を最優先させる選択をした。それに比べると,本土の国民は幼稚だ。目先の飴玉にしか目が向かない。金の亡者と化している。

 だから,沖縄の基地がどうなろうと,本土の多くの国民は無関心。このことを,しっかりと見極めた沖縄県民は「オール沖縄」を組織して,つぎなるステージへとその第一歩を踏み出した。すでに,沖縄独立も視野に入れた運動が組織されてもいる(沖縄独立学会の設立)。本土はいまだにアメリカ依存でべったり。いまや,アメリカ合衆国の新しい属州となりつつあるかにみえる。そのつけの一端を,それも最大のつけ(日米安全保障条約・日米地位協定)を,すべて沖縄に押しつけようとしている。

 このように考えてくると,いま,解散・選挙の騒動の陰で「粛々と」推し進められている辺野古への米軍基地移設問題が,いかに重大な意味をもっているかがわかってくる。

 わたしはこころの底から胸を痛めている。

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