2014年11月15日土曜日

逸ノ城,怪物ぶりを発揮。横綱鶴竜を相手に2分30秒の熱戦を展開。

 やはり逸ノ城は怪物だった。得意の左上手もとれず,右腕一本。相手の横綱鶴竜は左上手を引き,右も浅く前まわしを引いて逸ノ城のあごに頭をつける万全の体勢。そして,寄って出るも俵に足のかかった逸ノ城を寄り切れない。逸ノ城は棒立ちのまま耐える。ふところが深いので寄って出た鶴竜もまた腰が伸びてしまって,あと一歩がでない。

 逸ノ城が右からすくい投げを打って体を入れ換える。それでも鶴竜がすぐに寄って出る。ふたたび逸ノ城は俵に足をかけて踏ん張る。両者の腹がはげしく波打っている。呼吸がいっぱいいっぱいであることが伝わってくる。こうして,しばらく動きが止まってしまったが,気を取り直したように,鶴竜がさいごの力をふりしぼるようにして右の前みつを引きつけて寄って出る。とうとう耐えられなくなった逸ノ城は土俵を割る。2分30秒の熱戦に館内のお客さんは大きな拍手を送る。

 勝った鶴竜の顔色がこころなしか黒ずんでみえた。酸欠のときに現れる顔だ。しかし,眼力は,いつもと違ってギラリと光っていた。大関から横綱に駆け上がったときの,あの眼の輝きである。しかし,その後は眠ったような眼でたんたんと相撲をとるようになった。この人の哲学と言ってもいいだろうが,平常心で相撲をとる,という姿勢を貫いている。そうして徐々に地力をつけてきている。いずれは,安定した堂々たる横綱になるだろう。わたしは密かに期待している。その鶴竜が,逸ノ城との一番で,酸欠となるほどの長い相撲を制した。それはさいごまで持ちつづけた気力のなせるわざだ。それが眼光の鋭さとなって表出したのだ。すべてを出し切った,そういう眼だった。この眼もわたしは忘れないだろう。

 これが大相撲なのだ,という見本のような正々堂々たる勝負。先場所,逸ノ城が立ち合い左に変化し,はたき込みであっけなく鶴竜に勝った。これもまた大相撲なのだ。しかし,プロとしてお金がとれる相撲は昨日(14日)のような,お互いに攻防を繰り広げて,2分30秒もの熱戦に力のかぎりを出し尽くす相撲だ。これを見たお客さん,その場に立ち会ったお客さんは大満足。おそらく生涯にわたって忘れることのできないいい思い出になることだろう。そして,いつまでも語り種として,折あるごとに,この名勝負を語りつぐことになるだろう。

 わたしは,残念ながら,テレビ観戦であったが,それでも生涯忘れない一番となるだろう。幕に入って二場所目にして関脇の地位を手に入れ,横綱と2分30秒の熱戦を繰り広げた逸ノ城の怪物ぶりを。やはり,久しぶりに現れた大相撲界の逸材である。それは間違いない。そして,遠からず大関,横綱へと駆け上がることだろう。

 この熱戦を目の前でみていた白鵬の相撲にも大きな影響を与えたようだ。高安に突き立てられて,両足が揃ってしまい,それでも前に出ようとしたところをはたかれ,バランスを崩して,ひとりで土俵下まで飛び出してしまった。予想外の展開である。しかし,高安は最初からこの相撲をねらっていたようだ。そして,逸ノ城の活躍を目のあたりにして,気合も入ったことだろう。よしっ,こんどは俺の番だ,と。

今場所は面白い場所になりそうだ。各力士が力をつけてきて底上げがうまくいっている。つまり,横綱との距離が縮まったということだ。これから中盤から終盤にかけて,ひと波瀾もふた波瀾も起きるだろう。日馬富士も,かつての元気だったころの相撲を取り戻しつつある。

 土俵から眼が離せない。楽しみな場所となってきた。最後に賜杯を抱くのはだれか?
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