2014年11月14日金曜日

『いのちにこだわる政治をしよう』(嘉田由紀子著,風媒社,2013年刊)を読む。感動。

 いよいよ解散風がつよく吹きはじめ,すでに世の中は選挙に向かってまっしぐらの様相。いつでもそうですが,ときの政権がぐらつきはじめると,傷が深くならないうちに解散・選挙となりまする。総理大臣の専権事項だそうだから,いたしかたないにしても,妙な制度ではありまする。

 すでに,ネット上を流れている情報によれば,政府自民党は多少の議席は減らすかもしれないが,勝利宣言をするだろう,そうなれば,あとは政府自民党の「やりたい放題」となる,と。これは困りまする。なんとしても,野党に頑張ってもらって,せめて政府自民党の「辛勝」くらいまでは追い込んでもらいたいものだと,これは小国民ならぬ老国民のささやかな願いでありまする。

 ところで,野党はなにを争点に据え,なにをスローガンにして選挙を闘うのでしょう。そこが最大のポイントとなります。ですから,しっかりと見届けたいと思います。

 先月,直接お会いした嘉田由紀子さんから直接いただいた本3冊をようやく読み終えたところです。いずれも,わたしの予備知識をはるかに超える,新鮮で素晴らしい感銘を受けました。その中の一冊を紹介しておきたいと思います。

 
書名は『いのちにこだわる政治をしよう』。前滋賀県知事として,これをスローガンにかかげ,8年間,必死に格闘した記録です。嘉田知事といえば,新幹線の新駅はいらない,無駄をはぶこう,と訴え,それを実行した知事という印象がつよく残っています。しかし,嘉田さんが政治に打ってでようと決意した原動力は「びわ湖を守ろう」という,まことに純粋な動機でした。言い換えれば「いのちを守ろう」という政治姿勢でした。

 考えてみれば,政治の原点は,市民・県民・国民の「いのち」を守ること,この一点にあるはずです。しかし,いまの政治家はそのことをすっかり忘れてしまって,目先の「金」のことしか考えていません。経済がよくなれば暮らしがよくなる,という根拠のあいまいな「甘言」をちらつかせて票を集めようとしています。問題は,その経済の考え方です。いまの政治家が考える「経済」は新自由主義のそれです。その新自由主義のフリードマンと直接,激しく論争をし,真っ向から対立する「経済」(金融化ではなく,社会的資本を機軸に据える経済)を主張した宇沢弘文さんのような経済の考え方は,残念ながら,いまの政治家の頭にはありません。

 これから少子高齢化社会に向かってまっしぐらという時代に,いまもなお「右肩上がり」の経済成長神話にしがみつく政治家ばかりです。この政治姿勢を「日本病」と名づけ,この病を治すためには地方政治から変えていくしかない,というのが嘉田さんの主張です。その機軸に「いのちにこだわる」というコンセプトをすえて闘おうと決意したのが,嘉田由紀子さんでした。別のことばでいえば「生活環境主義」です。まずは,「人が生きる」原点を見極め,そこから政治をはじめよう,という次第です。

 嘉田さんは,高校時代の修学旅行でびわ湖と初めて出会います。源氏物語の石山寺を見学してバスの止まっている駐車場まで歩く途中で,びわ湖から流れてくる水で野菜を洗っている老婦人の姿をみて,「こんな暮らしがしてみたい」と直感した,といいます。これこそが,むかしからの日本人の暮らしの原点ではないか,と。

 これがきっかけとなって,京都大学農学部をめざして勉学に励んだといいます。つまり,びわ湖と真っ正面から向き合ってみたい,と。そして,その夢を叶え,以後,びわ湖研究ひとすじ。やがて,このびわ湖を守ることこそが滋賀県の最大の政治課題ではないか,と考えるようになり,ついには知事に出馬することになります。

 一見,唐突にみえますが,じつは,嘉田さんは調査研究のために,びわ湖周辺の町や村をくまなく歩き,直接,「聞き取り」調査を長年にわたって行ってきました。ですから,嘉田さんの誠実な人柄や,その真剣さをみんなよく知っていました。滋賀県の大きな都市の住民よりも,地方の住民の間で圧倒的な支持をえたのには,こういう背景があったのです。

 嘉田さんが「卒原発」を主張する根拠は,なによりもまずびわ湖を守るためでした。びわ湖は京阪神に住む約1400万人の水瓶です。この水が安全でなかったら,京阪神の人びとの生活は成り立たなくなってしまいます。このびわ湖が,日本海側に並ぶ「原発銀座」からわずかに「80㎞」しか離れてはいません。もし,原発に万が一のことがあったら,滋賀県のみならず,京阪神の人びとの暮らしは全滅です。このことの重大さを,国会にいるほとんどの議員が気づいてはいません。いな,気づいているにもかかわらず「無視」です。これが嘉田さんのいう「日本病」です。

 この「日本病」を,滋賀県の政治をとおして治すこと,これが嘉田由紀子さんの最大の政治課題であったように思います。それを「いのちにこだわる」と表現したわけです。

 こういう政治家が輩出しないことには,「日本病」は治りません。そして,そういう政治家を見出し,背中を推すのはわたしたちの仕事でもあります。こんどの選挙に,清廉潔白で,「いのちにこだわる」政治を主張する政治家がどれだけ立候補するのか,注目してみたいと思います。

 そして,同時に,選挙に備えて,この嘉田由紀子さんの本を読まれるようお薦めします。語り口調のとてもわかりやすい本です。一気に読める本ですので,ぜひ,どうぞ。
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