2015年3月16日月曜日

動画「かぐや姫の物語」をみる。テレビでみたのは大失敗。

 テレビで放映されるというので,それをみた。これが間違いのもとだった。ストーリーの展開がブチブチの細切れになってしまい,さっぱり面白くなかった。とくに,最後の別れのシーンでは,ひっきりなしにコマーシャルが入り,イメージはズタズタ。見終わった直後の感想は,なんという「駄作」というものだった。なんの感動もなかったからだ。やはり,映画(動画も)は映画館に足を運んで,大きなスクリーンでみなければ駄目だ,と痛感。監督は,最初から,そのつもりで製作しているのだから。映像といい,音響といい,すべてはそれを前提にして演出されているのだから。

 ついつい横着をして,その上,金までけちって・・・。愚かな自分を悔いた。結局は時間の無駄。

 原作の『竹取物語』をどう読むかは読者の自由だ。いくとおりもの「読解」が,いわゆる専門家と呼ばれる人びとによってなされていることも,そのうちのいくつかは読んで承知している。だから,日本の古代史の謎解きには不可欠の古典であることも承知している。したがって,高畑勲監督が,どのような「読解」をし,現代に蘇らせようとしたのか,そして,この「物語」をとおしていまの時代を生きている人びとに,そして,世界になにを訴えようとしたのか,知りたかった。

 それがテレビのコマーシャルによって,ズタズタに引き裂かれてしまい,なにがなんだかわけのわからない動画になってしまった。すべて自己責任。これだけ話題になった動画を,テレビ鑑賞で誤魔化そうとしたことが,そもそもの間違いだった。これは少なくとも,DVDでじっくりと鑑賞し直すべきだろう。そして,より深い鑑賞を,たとえば,何回も繰り返し鑑賞をした上で,本気で批評をすべきだろう。そういう問題作であるはずだ。そういう印象だけは残った。

 たとえば,ラスト・シーンの阿弥陀如来の来迎をどのように受け止めるか。ここに象徴された意味はなにか。大和の朝廷の力をもってしても「手も足も出せない」で,ただ呆然と見送るしか方法がなかった「対抗勢力(敵)」とはなにか。当時の阿弥陀信仰を支えた仏教の力とはどのようなものだったのか。その背景をなす勢力地図(権力による支配関係)はどうなっていたのか。仏教によって大和(倭)が支配されていた時代とはいつのことか。高畑監督が,阿弥陀如来来迎のシーンで,いかなるメッセージを伝えようとしたのか。わたしの興味・関心はとどまらない。

 『竹の民俗誌』(沖浦和光著,岩波新書)を引き合いに出すまでもなく,竹取の翁が背負っていた歴史の陰の部分は,きわめて重要だ。ここには,もうひとつの日本史が隠されているとさえ考えられている。万世一系の天皇家を中心に,表の日本史を埋めつくそうとしてきた矛盾の数々を,根底からひっくり返すほどの内容(内実)が「竹」にまつわる物語には籠められている,とわたしは長い間,考え続けてきた。

 だから,高畑監督が,『竹取物語』ではなく,『かぐや姫の物語』としたことに,すべての秘密(メッセージ)が籠められているのでは・・・と予想した。しかし,お粗末なテレビ鑑賞ではイメージがズタズタにぶっちぎられてしまって,わけのわからない代物になってしまった。これは,もちろん,わたしのせいだ。作品のせいではない。

 かぐや姫,天香久山,香具師,竹細工,お碗,漆,古着,というようなイメージの連鎖は,わたしの友人の古代史の専門家であるSさんに言わせれば,きわめて重大だ,という。そして,これこそがもうひとつの日本史を解く鍵をにぎっているのでは・・・とも。わたしも大賛成だ。

 だから,この動画の中でも,木をくり抜いてお碗をつくり,それを売りにいく「山の人」のシーンが重要な役割をはたしている・・・はずなのだが,コマーシャルが入ってぶった切り。なんとも,はや,味気ない。しかし,高畑監督の視野のなかにも「お碗」がしっかりととらえられていることだけは間違いない。

 アニメーション(animation )とは,静止画に命(魂)を吹き込んで動く映像にしたのが語源だ,という。つまり,アニメート(animate)した映像。動画。

 高畑勲監督は,「かぐや姫」にいかなる「命」(魂)を吹き込んで,新たなる「物語」をつくろうとしたのか。そこには明確な企みがあるはず。綿密な計算もあるはず。そこに触れることができなかった。テレビ鑑賞では。もう一度,DVDで鑑賞してみようとおもう。

 なにはともあれ,映像の美しさは天下一品だ。日本画の手法をふんだんに盛り込んだ,いかにも日本発のアニメーションといってよい。その映像を楽しむだけでも,十分に鑑賞に耐えうる作品だとおもう。しかし,知りたいのは高畑勲監督の本音の部分だ。そこに「触れる」ような鑑賞を,もう一度,しなければ・・・といまになっておもう。

 もう一度,じっくりと鑑賞し直そう。それだけの価値のある作品であることを願って・・・・。
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