2013年11月22日金曜日

『般若心経は英語で読むとよくわかる』(竹村日出夫著,みやび出版,2013年11月27日第一刷発行)がとどく。お薦め。

 この本を諸手を挙げてお薦めします。こんなに単純明快に『般若心経』を読み解いた本はこれまでみたことがありません。わたしは自信をもって,そう断言します。嘘だと思って,読んでみてください。かならず納得していただける,とわたしは信じて疑いません。それほどに,みごとに,『般若心経』の真髄を読み解いてくれるからです。

 なにより意表をつかれるのは,「英語で読むとよくわかる」という,この仕掛けです。実際に,この経文の英文を読むと,なるほど,そういうことだったのかと納得してしまいます。つまり,英訳するという工程が一つ加わることによって,経文のややこしさが一気に捨象されて,むき出しの本質が立ち現れるからです。翻訳とは言語の壁をジャンプすることでもあります。ジャンプすることによって,不要なしがらみから抜け出して,透明な世界に飛び出すことが可能となります。そうして,子どもにもわかる,むき出しの『般若心経』が立ち現れることになるのでしょう。

 もう少し,きちんと説明しておく必要があります。著者の竹田日出夫さんは,原典のサンスクリット語から掘り起こし,玄奘三蔵法師の漢訳と対比しながら,独自の日本語訳を導き出し,それをさらに英語に翻訳するという作業をとおして,これまでだれも経験したことのない『般若心経』の「こころ」に接近しようと試みているのです。そういう意味で,類書は存在しない,とわたしは断言します。言ってみれば,竹田さんの長年にわたる研鑽の結果が,ここに凝縮しているといっても過言ではありません。ですから,この本に書かれている文章そのものも,余分なことばはひとつもなく,ここがぎりぎりの簡潔文である,というようにわたしには読み取れます。

 さらりとした,それでいて含蓄のある名文がつづきます。一気に最後まで読むことができるでしょう。とにかく,『般若心経』の「こころ」とはこういうことであったか,といとも簡単にわからせてくれる,まことにありがたい本です。

 とまあ,こんな風にわたしが断言口調で書けるのには理由があります。この本のもとの原稿は,みやび出版が季刊で出している「みやびブックレット」『myb』に連載されていて,それを毎号,わたしは真っ先に読むことにしていたからです。それほどに惹きつけられるにも理由があります。わたしは,じつは,禅寺に育ちました。ですから,『般若心経』は毎朝の父の読経を,夢現の状態で聞いていました。そして,あるきっかけがあって,わたしは『般若心経』のマニアックなファンになりました。以後,『般若心経』読解本をみつけるとすぐに購入して,読みふけりました。ですから,わたしの書棚にはこの手の本がずらりと並んでいます。

 これらの本を読むたびに,『般若心経』は,いかようにも解釈可能な経典なのだと思いながら,さまざまなことを考えてきました。ですから,いつか,かならず『般若心経』読解・私家版を書こうと密かに考えていました。そこに,この竹田日出夫さんの「英語で読むと」が登場しました。わたしは,最初のうちは,なんという冒涜的な試みを,と半分は反感をいだいていました。が,何回か,回を重ねていくうちに,「うぬっ?この明快さはいったいどこからくるのだろうか」,と考えるようになりました。そのうちに,気がつけば,すっかりとりこになっていました。

 意表をつく本ではありますが,英訳することによって初めてみえてくる『般若心経』の世界があるのだ,ということを知りました。これは,とてもいい勉強になりました。

 ちなみに,『myb』2013 Autumn No.45 秋号の特集は「般若心経を繙こう」というものです。三田誠広/芹沢俊介/竹村日出夫,という錚々たるメンバーにわたしも加えていただいて,拙稿を寄せています。そして,この号が,竹村さんの連載の最終回にもなっています。興味をお持ちの方はぜひ手にとってみてください。(有)みやび出版のメール・アドレスは「books.miyabi@abelia.ocn.ne.jp」です。たぶん,まだ,在庫があると思います。定価は本体320円+税。とても瀟洒な,それでいて内容は文句なしのレベルの高さと豊かさ,おしゃれなブックレットです。

 なお,単行本となったこのテクスト(定価1,600円・税別,発売・星雲社)には,補講「般若心経」のことば,が加えられていて,キーワードとなっている重要なことばを抽出して,英語と日本語で解説がしてあります。ここも,まことに面白く,「空」や「苦」というようなことばを英語と日本語で説明してくれています。そして,最後に「般若心経の全文とその英訳」が掲載されています。

 とにかく,文句なしの絶品ですので,ぜひ,手にとってご覧になってみてください。

 というところで,今日はここまで。
 
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