2015年1月19日月曜日

抗ガン剤治療を断念。自然のなりゆきに身をまかせることにしました。

 今日(19日)は月1回の抗ガン剤治療のための定期診断の日。
 ぐっと冷え込んで寒い朝。でも,空は真っ青。快晴無風の絶好の天気。こんな日は日本海側はおおむね雪。ことしはとくに雪が多いと聞く。雪かきがたんへんだろうなぁ,と思いやる。

 朝9時に受け付けを済ませて,呼び出しを待つ。いつもだと採血と検査を待って,診察。だから,診察までには早くても2時間ほどかかる。今日はそれがないので,30分待ちで呼び出しがかかる。ありがたい。

 入っていくと,主治医のN先生,パソコンとにらめっこしてきびしい顔をしていらっしゃる。なにごとかと思ったが,まずは,新年のご挨拶をする。すると,パッと振り返って,「いやーっ,電子カルテに切り替わったので,その操作に振り回されています」とニヤリ。「この方が効率的なのでしょうが,いやはや慣れるまではたいへん」とN先生。しばらく,パソコンの功罪について雑談。

ようやく,「どうでしたか。暮れ・正月は?」とわたしのからだの状態について聞いてくれる。できるだけ正直に,この間のからだの状態について報告。ついでに,暮れに歯が奥歯と前歯がつぎつぎに折れてしまったので歯科医に通院していることも報告。で,どうもからだ全体の調子がいまひとつスッキリしません,と。ここで,しばらくN先生とのやりとりがあって,流れがいい具合になってきたので,ずーっと考えてきたことを正直に話すことに。

 「抗ガン剤が思ったよりも効きすぎて(?),からだのダメージが大きすぎるように思います。6カ月つづけた抗ガン剤を止めて3カ月経ったいまも,その副作用から抜けだすことができません。このあとのことを考えると,苦しさに耐えて抗ガン剤をつづける方がいいのか,このまま止めにして少しでも気分よく暮らす方がいいのか,大いに迷います。が,これまでのわたしの生き方と,いま依頼を受けている仕事の中味を考えると,抗ガン剤は止めにして,少しでも多くいい仕事に専念できる時間がほしい。癌転移のリスクを背負ってでも,いまは,仕事に専念したい。もし,転移があったら,それはそれで仲良く付き合うことにしたいと思います。そのころには,老化現象による惚けも相当に進んでいるはずですので・・・」と一気に話す。

 じっと耳を傾けて聞いていたN先生,いきなりのけぞって高笑い。「ああ,そういう覚悟を決めましたか。そういう生き方もありますよね。それならそれで,抗ガン剤は止めにしましょうか。そうして,定期的に追跡検査をしていくということで・・・」と仰ってくださった。話が早い。そこで,即座に「よろしくお願いします」と声を少しだけ張ってお願いをする。「じゃあ,そういうことにしましょう」と相談事が無事に成立。

 それでも最後にひとこと。「ほんとうは抗ガン剤治療を3年くらいつづけて,転移がないことを確認できたところで打ち切りにする,これがセオリーなんですよ」と。「ああ,そうなんですか。3年はとてもではないですが,わたしには辛抱できません」とわたし。「まあ,そうですね。でも,見切りをつけるにはちょっと早い気もしますが・・・」とN先生。「それも承知しています」ときっぱり。以上で,医師と患者との会話は終了。

 かくして,N先生は電子カルテの作成にとりかかる。操作がわからなくなると,若手の優秀な看護師さんを呼んでいろいろ聞いている。そのたびに,わたしの方を振り向いて「たいへんなことです」とニンマリ。ここで「つっこみ」を入れたくなったが,ぐっとこらえる。「院長で法人の理事長でもある貴方の発案で決めたことでしょ?」と。

 これからも毎月1回は診察してもらわなくてはいけない大事な先生。気分を害さないことが最優先。抗ガン剤を止めることについても,ずいぶん長い時間をかけて,慎重にことを運び,ようやく無事に落着したばかり。こんごのことも考えると,ここはどこまでもいい関係を維持したい。今日はいつものジョークも控えめにして退出。

 それよりもなによりも,抗ガン剤の呪縛から解放され,ほっと一息。これでもううしろを振り向くことなく,ひたすら前をみつめて進めばいい。今日の青空のようにスッキリ。あとは運を天にまかせて,仕事に専念すればいい。それも楽しい仕事なのだから。それが一番,と自分自身に言い聞かせる。

 帰路,大型書店に立ち寄って,本の衝動買い。これも病気代・薬代と思えば安いもの。こころが浮き立つような「わくわく感」こそが妙薬。そう信じてこれからの人生を送ることにしよう。いよいよ人生最後の賭けにでる第一歩。こうなると,あとは祈るのみ。わたしの祈りは『般若心経』を唱えること。いつも,不思議に気持が落ち着く。

 書店で衝動買いした本のなかの一冊は『心訳 般若心経』(枡野俊明著,サンマーク出版,2014年)。50冊は超える『般若心経』解説本をすでに読んできたが,それでも手が伸びた。理由は,著者が曹洞宗徳雄山建功寺住職という坊さんだったから。しかも,庭園デザイナーで,多摩美術大学教授。こういう経歴のひとが「心訳」すると『般若心経』からどんな世界が開けてくるのか,と強く惹かれる。たぶん,間違いなくおもしろいはず。

 さあ,これからの残りの人生,飄々と楽しんでやろう,と希望にもえる。
 楽しきかな,人生。わが生涯。

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