2015年1月27日火曜日

大相撲の「ビデオ判定」は正しいか。白鵬の「物言い」はさらに論外。

 優勝回数を33回に伸ばす大記録を達成した横綱白鵬が,13日目に対戦した稀勢の里との「取り直し」となった相撲の判定について,クレームをつけたとインターネット上で話題になっています。それによりますと,「子どもでもわかる」「審判団はもっと緊張感をもって臨んでほしい」というような内容の発言だったといいます。つまり,寄り倒しで自分の勝ちだ,と主張しているのです。それを「取り直し」にするとはなにごとぞ,と。

 はたして,そうだったでしょうか。わたしは,まったく逆で,稀勢の里の小手投げからのうっちゃりの勝ち,と判定していました。

 そうしたら「物言い」がついて協議となりました。その間に,ビデオのスローが何回も流されました。これを見るかぎりでは,白鵬の体が腹から落ちるのと稀勢の里の体が背面から横向きになって落ちていくのが,ほとんど同時でした。これをみて,同体とみて「取り直し」になるのだろうなぁ,と予想しました。そして,そのとおりになりました。それでもなお,わたしの判定は,あくまでも稀勢の里の「うっちゃり」による勝ち,これは変わりませんでした。

 なぜか?

 ついでに触れておけば,白鵬には,同体「取り直し」と判定されてもよかった(わたしの判定は白鵬の負け)相撲が二つありました。が,これらの取り組みは「物言い」もつかず,行司の判定どおり白鵬の勝ちとなりました。いずれも,ビデオのスローが流れ,相手力士の踵が俵の上を越えて蛇の目につく瞬間と白鵬の腹・手が土俵に落ちる瞬間は,どちらとも言えないものでした。いずれも,相手力士は俵の上に立っていて,白鵬は腹から落ちています。行司の軍配がどちらに上がっても不思議ではない相撲でした。が,白鵬は運良く「勝ち」を拾いました。

 その結果の「全勝優勝」です。わたしの判定では「12勝3敗」。運も実力のうち,といいますからこういうこともあって不思議ではありません。

 しかし,ここにはもっと大きな問題がひそんでいるように思います。

 「ビデオ判定」は正しいのか。「ビデオ判定」は絶対なのか。わたしはここに大いなる疑問をいだいています。

 なぜなら,まだ,ビデオ判定がなかった時代の判定は「人間の眼」が行っていました。そこでは,相撲の流れが重視されていました。そのポイントは「生き体」と「死に体」の判定でした。同時・同体で土俵の外に倒れこんで行ったとしても,どちらの体がさきに「死に体」になったかどうかが見極められました。つまり,倒れ込みながらも,どちらの体が「生き体」で技を仕掛けていたか,が判定されました。

 初代若乃花は,土俵際で押し倒されながらも上手投げを打ち,体を入れ換えるようにして「うっちゃり」で勝つ,これを得意としていました。この相撲はいまでもYouTube で見ることができますので,確認してみてください。こんにちの相撲判定の見方に慣れてしまった眼でみると,全部,若乃花の負けです。しかし,当時は相撲の技を仕掛けた「効果性」が重視されましたので,最後に倒れ込みながら,どちらの技が優勢であったか,が勝負の分かれ目となりました。

 つまりは,技をかけて足が土俵に残っている方の体は「生き体」であり,宙に浮いてしまった体はもはや落ちるだけなので「死に体」,というわけです。この状態で,同時に土俵下に落ちて行ったとしても,「生き体」の勝ちです。

 しかし,こんにちでは「生き体」「死に体」ということばも聞かれなくなってしまいました。そして,ただ,ひたすら,ビデオのスローをみて,どちらのからだがさきに土俵に触れたか(落ちたか)の,その一瞬の差で判定をくだしています。つまり,人間の眼にみえない時間差を「ビデオ」に判定してもらっているわけです。こうなりますと,もはや,相撲の本来の技の効果性はどこかにとんでしまって,どちらがさきにからだの一部が土俵に触れたか(落ちたか)だけが勝負判定の対象となってしまいます。

 すなわち,力士のからだは技を繰り出す人間のそれではなく,たんなる物体(あるいはロボット)が倒れていく「モノ」そのものと変わりはありません。ですから,一瞬でも早く土俵に落ちた方が負けです。それが,たとえば1000分の1秒の差であっても,それが「正しい」ことになってしまいます。最先端科学の力を借りれば,それも可能です。現に他のスポーツ競技ではそのような方法が採用されています。

 つまり,人間のからだの「事物化」へと,すでに一歩を踏み出している,それがこんにちの大相撲の判定の世界だ,というわけです。

 これはどうみても本末転倒です。

 このことに日本相撲協会は気づいているのでしょうか。
 横綱審議委員のメンバーたちはわかっているのでしょうか。
 大相撲ジャーナリストたちは,なにも疑問におもっていないのでしょうか。
 そして,白鵬はなにを考えているのでしょうか。

 大横綱白鵬に贈ることばをひとつ。「みのるほどこうべをたれるいなほかな」。折角の大横綱の名誉を汚すような発言には,くれぐれもご注意を。土俵上での所作も同じです。これからは,なお一層,相撲道をきわめてください。審判委員の判定にクレームをつけるなど,もってのほかです。この人たちは日本相撲協会を支えている親方衆です。その親方衆にクレームをつけるなど,よほどの根拠がないかぎり許されません。もっとも,いま,白鵬が所属している部屋の親方とも口を聞かないとか・・・・。まずは,こんな風評が立つことそのことが問題です。

 白鵬は,勉強熱心で,相撲の歴史についてもよく本を読んでいるとか。ぜひ,YouTube で,初代若乃花,栃錦時代の相撲の取り組みも研究してみてください。

 以上,ひとこと,ふたこと。
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