2010年7月5日月曜日

貴乃花理事の退職届が意味するものは?

 貴乃花理事が退職届を日本相撲協会に提出した,という。しかし,協会は「預かり」にして,理事退職は認めなかった。が,考えてみると不思議な展開ではある。
 今回の大相撲の世界に起きている不祥事は,日本相撲協会の存続が危ぶまれるほどの大事件であるにもかかわらず,どこか釈然としないものが多すぎる。以前のブログにも書いた記憶があるが,野球賭博のみならず,力士・親方と反社会的集団とのしがらみは長い歴史と深い関係があって,そんなにかんたんには断ち切れる問題ではない。それこそ「すべてのウミを絞り出すまでは止めない」と大見得を切った理事長は本気でそう言っているのだろうか。ほんとうに「すべてのウミ」をさらけ出したら,日本相撲協会は解散の憂き目に会うことは必定だと,わたしは考えている。だとしたら,理事長の発言もよくわかる。「すべてのウミを絞り出」してしまえば,日本相撲協会は解散してしまうから,おのずから理事長も不要ということになる。そのつもりで発言しているとしたら,これはこれで見上げた「決意表明」というものである。
 力士的発想や力士的「決意表明」は,やはり,一般社会人とはいささか別のようである。理事長の決意表明とどこかよく似ているなぁ,と感じさせられたのが今回の貴乃花理事の退職届の提出である。新聞の報道によれば,貴乃花理事誕生に貢献した大嶽親方と大関琴光喜を理事会でかばい,救うことができなかったことに対する責任をとったのではないか,という。この報道に触れたとき,わたしの頭のなかは目まぐるしく回転をはじめた。
 なるほど,と納得してしまい,その上,あらぬ妄想までつぎつぎに湧いてくる。
 貴乃花は,もう一期,理事選挙を待てば,順番として一門の推薦を受けて難なく理事に就任することができた。にもかかわらず,理事選挙に立候補した。一門の反対を押し切って。しかも,一門を離脱してまで。なにをそんなに急いでいるのか,あわてるのか,相撲界の常識からすればまことに奇異な行動であった。
 しかし,今回の理事退職届の提出を知って,なるほど,と納得してしまったのである。理事当選に必要な一門外からの2票が,大嶽親方と大関琴光喜のものだったとすれば,その責任をとったというじつにわかりやすい構図が浮かび上がる。と同時に,ここからあらぬ妄想も湧き上がってくる。
 大嶽親方は,現役時代の貴闘力のころから「博打好き」で知られていた。巡業などにでると,頭に捩り鉢巻を巻き,そこに10万円ずつの札束を丸めて何本も差し込んでおいて,一本ずつ引っこ抜いて「さあ,コイ!」と「コイコイ」(花札)に熱中する姿をよくみかけた,とある新聞記者は語っている。だから,貴闘力が現役を引退して,大鵬親方の婿養子になるとき,「あいつの博打を止めさせろ」と大鵬親方が発言していたことを,わたしは記憶している。この貴闘力と貴乃花は同部屋の兄弟弟子である。一緒に苦楽をともにし,同じ釜の飯を食い,輝かしい二子山部屋時代をきづいた仲間同志である。
 だとすると,貴乃花は今回の内部調査の結果は「白」だったのだろうか。本人の申告が「白」だとしただけの話ではないのか。貴乃花自身の身辺も,これからマスコミの禊ぎを受けることになるのでは
なかろうか。将来の理事長候補といわれる貴乃花が「傷物」になるようなことがあると,日本相撲協会の将来はますます暗雲が漂うことになる。武蔵川理事長が,貴乃花の理事退職届を「預かり」にして,「君は日本相撲協会の宝なのだから,理事として大いにはたらいてもらわないと困る」と発言したことの背景にあるものは意味深長である。
 もう一つの妄想は,理事選挙の折に,すでに,大嶽親方と大関琴光喜の野球賭博の関係は,協会内部ではかなり知られていたのではないか,というもの。しかも,この点について,すでに,ある理事から厳しい発言がでていたのではないか。その口を封じ込めるだけの力をもった理事はいなかったのでは・・・。そこで,急遽,貴乃花をかつぎだすという動きがでてきたのではなかったか。その大任を受けて,めでたく理事に当選したが,ついに,この情報が外部にもれてしまい,もはや手のつけようがなくなってしまった。そして,理事会での「解雇処分」が決定してしまった。こうなれば,もはや,貴乃花の任務は終わった,ということなのか。
 もし,貴乃花が完全なる「白」だったとすれば,理事を退職して,理事会の<外>から日本相撲協会改善のための強烈なゆさぶりをかける,という手はある。それは,ある意味では,内部告発に近いものとなるであろう。日本相撲協会の内部には,ひた隠しにされている「恥部」が,まだまだあるようにおもわれる。今回の内部調査の結果ですら,自己申告した力士の名前の公表を渋った。それも,外部へではない。理事会にすら,当初はほんの数名しか明らかにされなかった。日本相撲協会の執行部が,極秘情報を権力で握りつぶすことなど,常套手段である。とりわけ,反社会的団体との癒着問題などは,その典型だろう。
 妄想のご披露は,このあたりで止めにしておこう。じつは,際限がないのである。無限地獄のように,穴を掘れば掘るほどに,魑魅魍魎が立ち現れてくる。しかも,ますます信憑性が高くなってくる。それは,もはや,妄想どころではなくなってしまう。それらは,これから外部委員会が機能しはじめ,徹底した調査が行われれば行われるほどに,恐るべき事実が浮かび上がってくるようにおもう。これまでは,早めに手を打って「トカゲのしっぽ切り」でことなきをえてきたが,今回ばかりはそんなことでは済まされまい。
 その意味で,貴乃花理事の退職届は,これからどういう波紋を呼ぶことになるのか,わたしは強い関心をもたずにはいられない。ほんとうの改革につながるのか,それとも,旧体制の結束につながるのか,あるいは,日本相撲協会の解散にいたる起爆力となるのか,その選択肢もまた無限である。貴乃花という人の,どこか謎めいた雰囲気が,より多くの妄想を呼び起こす。またぞろ,謎の整体師や謎の占い師などが登場するのだろうか。
 大相撲界の話題は眼が離せない。 

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