太極拳の兄妹弟子の柏木さんから本のプレゼントがあった。驚くほどの読書家の柏木さんがくれる本なので,なんだろうと思って開けてみたら漫画本。あれっ?柏木さんは漫画本も読むんだ,と思いながら手にとってみたら下田歌子さんの伝記であった。
これで納得。柏木さんは,ついこの間(2月7日~12日),銀座・文藝春秋画廊で「能面新作」展を開いた能面アーティスト。で,その新作の中に「現代人」を作品にしたものがあって,その一つが「下田歌子」面。「江田五月」面と並んで展示されていて,異彩を放っていた。気品があって理性的な,とても美しい面に仕上がっていて,存在感があった。となりの「江田五月」面と,堂々たる勝負を挑んでいるように見受けた。
この展覧会の折に,実践女子大学の学長さんもお見えになり,わたしたちのやった鼎談もお聞きになり,そのあとのパーティにも参加された。ので,わたしも少しだけ親しくお話をさせていただいた。ここでお断りするまでもなく,下田歌子さんは実践女子大学の創設者。柏木さんは卒業生ということもあって,大学からの依頼があって「下田歌子」面を制作した(2010年)。すでに,大学に寄贈してあって,今回は出張・出品というわけ。
で,この漫画本『きらりうたこ』は,学長さんからのプレゼントとのこと。たくさんもらったので,ということで,そのお裾分け。精確に紹介しておくと,牧野和子著,原案/杉原萌,監修/実践女子学園,小学館スクウェア,2011年3月3日,初版第一刷。ということは,まだ,書店には並んでいない本。まだ湯気がたっている本だ。
ちかごろでは,ニーチェの思想ですら漫画で説明されてしまう時代である。もう,ずいぶん前から,世界史も日本史も漫画で語られたし,仏教やキリスト教なども漫画になっている。なにを隠そう,わたしの手元には〔マンガ〕『正法眼蔵入門』道元の「仏法」に迫る,監修・秋月龍民(民は王偏がつく),サンマーク文庫,2004年第4刷,という本がある。
だから,この本を開いたとき,なるほど,と素直に納得した。いまや大学もどうやって生き延びていくかたいへんな時期を迎えている。とにかく学生さんが集まらないことにははじまらない。だから,あの手この手で,学生さん集めの努力が惜しみなく繰り出されている。大学紹介もマンガ,創設者の伝記もマンガ,そのうち教科書もマンガになるのでは・・・(すでに,なっていると聞いたことがある)。とにかく「入り口」のハードルをいかに低くして,若者たちに親しんでもらえるか,ということに必死である。大学のシラバスなどを学生に配布するのも,そういう一環(こちらは,文部科学省の指導があって,義務づけられている)。
下田歌子さんについての知識は断片的にしかなくて,どんな人かと聞かれても,ちょっと説明に困るところであったが,この漫画本を読んで,ああ,なるほど,とすっぽりと頭に入った。本筋のところが頭に入ったので,もう,怖くない。多少の尾ひれをつければ,かなりのモノガタリを語ってしまうこともできそうだ。漫画本はありがたい。第一に,いつのまにか読むつもりもなくめくっているうちに,夢中になり,気がつけば最後まで読んでしまっている。あっという間のこと。それでいて記憶にも鮮明に残る。
明治天皇・皇后,両陛下に可愛がられ,短歌の才能が飛び抜けているというので注目され,以後は「歌子」と名乗りなさいと命名までされた,という。まあ,両陛下の信任がとくべつに篤かったということもあって,まずは,華族女学校の創設に力をそそぐ。それが手始めの「学校づくり」で,以後,立て続けに学校を創設していく。その初期のころの,自分のアイディアで創設したのが実践女学校(こんにちの実践女子大学の前身)。そして,校長に。津田塾大学を創設した津田梅子さんも,じつは,下田歌子さんの学校で教鞭をとっていた人だった,ということもこの本で知った。
わたしにとって,大きな発見だったのは,下田歌子さんが子どものころから,とても活発な女の子で,剣道,なぎなた,柔道などを好んで修得に励んだ,というくだりである。だから,学校を創設しても,体育の授業をとても重視し,新しいカリキュラムを率先して導入した,という。明治の女子教育に情熱を燃やした人たちに,ある意味では共通した見識ではあるのだが,下田歌子さんもそういうお一人だったということは知らなかった。メイポール・ダンスなどは,いまでも付属学校の運動会で,継承されている,という(こちらは写真まで掲載されている)。
で,最後に,作者の「牧野和子」さんの略歴がカバーの内側にあって,愛知県豊橋市生まれ,とある。おやっ?と直観が走る。わたしの高校時代の同級生に,牧野圭一君というのがいて,日本で最初に大学に漫画学部(京都精華大学)をつくった男である。手塚治虫の1年前に文春漫画賞をとった男。わたしとは親しくしていたので,読売新聞社の政治漫画を担当するようになったころ,千葉・舟橋の自宅に遊びに行ったことがある。そのときに,お茶を出してくれたのが,若い女性で「妹です。漫画家の卵で,ぼくの助手をしています」と紹介してくれた人がいた。名前までは覚えていないが,ひょっとしたら・・・・と思った次第。いつか確認してみようと思う。
犬も歩けば棒にあたる,という。やはり,歩いてみないことにはなにもはじまらない。漫画本も読んでみるものである。
これで納得。柏木さんは,ついこの間(2月7日~12日),銀座・文藝春秋画廊で「能面新作」展を開いた能面アーティスト。で,その新作の中に「現代人」を作品にしたものがあって,その一つが「下田歌子」面。「江田五月」面と並んで展示されていて,異彩を放っていた。気品があって理性的な,とても美しい面に仕上がっていて,存在感があった。となりの「江田五月」面と,堂々たる勝負を挑んでいるように見受けた。
この展覧会の折に,実践女子大学の学長さんもお見えになり,わたしたちのやった鼎談もお聞きになり,そのあとのパーティにも参加された。ので,わたしも少しだけ親しくお話をさせていただいた。ここでお断りするまでもなく,下田歌子さんは実践女子大学の創設者。柏木さんは卒業生ということもあって,大学からの依頼があって「下田歌子」面を制作した(2010年)。すでに,大学に寄贈してあって,今回は出張・出品というわけ。
で,この漫画本『きらりうたこ』は,学長さんからのプレゼントとのこと。たくさんもらったので,ということで,そのお裾分け。精確に紹介しておくと,牧野和子著,原案/杉原萌,監修/実践女子学園,小学館スクウェア,2011年3月3日,初版第一刷。ということは,まだ,書店には並んでいない本。まだ湯気がたっている本だ。
ちかごろでは,ニーチェの思想ですら漫画で説明されてしまう時代である。もう,ずいぶん前から,世界史も日本史も漫画で語られたし,仏教やキリスト教なども漫画になっている。なにを隠そう,わたしの手元には〔マンガ〕『正法眼蔵入門』道元の「仏法」に迫る,監修・秋月龍民(民は王偏がつく),サンマーク文庫,2004年第4刷,という本がある。
だから,この本を開いたとき,なるほど,と素直に納得した。いまや大学もどうやって生き延びていくかたいへんな時期を迎えている。とにかく学生さんが集まらないことにははじまらない。だから,あの手この手で,学生さん集めの努力が惜しみなく繰り出されている。大学紹介もマンガ,創設者の伝記もマンガ,そのうち教科書もマンガになるのでは・・・(すでに,なっていると聞いたことがある)。とにかく「入り口」のハードルをいかに低くして,若者たちに親しんでもらえるか,ということに必死である。大学のシラバスなどを学生に配布するのも,そういう一環(こちらは,文部科学省の指導があって,義務づけられている)。
下田歌子さんについての知識は断片的にしかなくて,どんな人かと聞かれても,ちょっと説明に困るところであったが,この漫画本を読んで,ああ,なるほど,とすっぽりと頭に入った。本筋のところが頭に入ったので,もう,怖くない。多少の尾ひれをつければ,かなりのモノガタリを語ってしまうこともできそうだ。漫画本はありがたい。第一に,いつのまにか読むつもりもなくめくっているうちに,夢中になり,気がつけば最後まで読んでしまっている。あっという間のこと。それでいて記憶にも鮮明に残る。
明治天皇・皇后,両陛下に可愛がられ,短歌の才能が飛び抜けているというので注目され,以後は「歌子」と名乗りなさいと命名までされた,という。まあ,両陛下の信任がとくべつに篤かったということもあって,まずは,華族女学校の創設に力をそそぐ。それが手始めの「学校づくり」で,以後,立て続けに学校を創設していく。その初期のころの,自分のアイディアで創設したのが実践女学校(こんにちの実践女子大学の前身)。そして,校長に。津田塾大学を創設した津田梅子さんも,じつは,下田歌子さんの学校で教鞭をとっていた人だった,ということもこの本で知った。
わたしにとって,大きな発見だったのは,下田歌子さんが子どものころから,とても活発な女の子で,剣道,なぎなた,柔道などを好んで修得に励んだ,というくだりである。だから,学校を創設しても,体育の授業をとても重視し,新しいカリキュラムを率先して導入した,という。明治の女子教育に情熱を燃やした人たちに,ある意味では共通した見識ではあるのだが,下田歌子さんもそういうお一人だったということは知らなかった。メイポール・ダンスなどは,いまでも付属学校の運動会で,継承されている,という(こちらは写真まで掲載されている)。
で,最後に,作者の「牧野和子」さんの略歴がカバーの内側にあって,愛知県豊橋市生まれ,とある。おやっ?と直観が走る。わたしの高校時代の同級生に,牧野圭一君というのがいて,日本で最初に大学に漫画学部(京都精華大学)をつくった男である。手塚治虫の1年前に文春漫画賞をとった男。わたしとは親しくしていたので,読売新聞社の政治漫画を担当するようになったころ,千葉・舟橋の自宅に遊びに行ったことがある。そのときに,お茶を出してくれたのが,若い女性で「妹です。漫画家の卵で,ぼくの助手をしています」と紹介してくれた人がいた。名前までは覚えていないが,ひょっとしたら・・・・と思った次第。いつか確認してみようと思う。
犬も歩けば棒にあたる,という。やはり,歩いてみないことにはなにもはじまらない。漫画本も読んでみるものである。
2 件のコメント:
意外なところでつながっているもんですね。案外、カンが中っていたりして…。ロマンを誘う内容でありました。
まゆのほっぺさんへ。
コメント,ありがとうございました。
やはり気になっていましたので,調べてみました。間違いなく実兄は牧野圭一(漫画家)とでてきました。世間は狭いものです。なんでもないようでいて,じつはどこかで繋がっている・・・ということが多くなってきました。長生きはしてみるものです。これからの人生をもっともっとエンジョイしてみたいと思っています。また,コメントを入れてください。
inamasaより。
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