2011年6月19日日曜日

『宗教の理論』読解のトーク,無事に終了。

昨日(18日),青山学院大学の教室をお借りして,「ISC・21」6月東京例会を開催しました。すでに,わたしのHPにも紹介しておきましたように,西谷修さんにお出でいただいて,バタイユの『宗教の理論』を読むための基本的な概念について,お話をうかがいました。北は北海道をはじめ,神戸,大阪,名古屋からも大勢の方たちが集まり,総勢24名。

午後2時から6時まで,あっという間にすぎてしまうほどの,中味の濃いお話でした。最初のこころづもりとしては,できるだけキャッチ・ボールをしながらのトークになるようにと思っていましたが,いざ,はじまってみたら,西谷さんの独演会になってしまいました。間に割って入るほどの力量のなさをしみじみと痛感しました。つまり,バタイユの『宗教の理論』を読み解くための基本的な哲学上のタームや概念について,西谷さんは,懇切丁寧に,わかりやすく説き聞かせてくれました。ですから,わたしもすっかり聞きほれていた,という次第です。

最初に,まずは,わたしの方からこのラウンド・テーブルを計画した意図と位置づけについて説明。それは「スポーツとはなにか」というわたしの長年にわたる根源的な問いがあって,それへの最終的な応答を,この『宗教の理論』に求めることができるのではないか,と考えたこと。すでに,30年ほど考えつづけてきたことの,いよいよ「まとめ」に入るためのテクストとして,この『宗教の理論』に出会ったこと。すでに公刊された本でいえば,『スポーツの後近代』(三省堂出版),『近代スポーツのミッションは終わったか』(平凡社)などを経て,ようやくここにいたって『スポーツとはなにか』というライフ・ワークのまとめに入ろうとしていること。しかも,「3・11」を通過したいま,それ以前までの考え方に大幅な変更を迫られていること。このことは「スポーツ文化」全般についても同様であること。したがって,「3・11」以後の時代や社会を生きる人間にとっての「スポーツとはなにか」,つまり,21世紀を生きる人間のためのスポーツ文化の創造のための理論武装をすること,など。

これを枕にして,『宗教の理論』というテクストが,バタイユの著作群のなかではどのように位置づけられるものなのか,というところから西谷さんにお話をいただくことになった。短く,要点をというつもりだったのですが,西谷さんが最初から絶好調で,一気に1時間30分ほど,熱のこもったお話をしてくださいました。バタイユという思想家は不思議な存在の人であること,神秘体験がかれの思想を考える上で重要であること(たとえば『内的体験』『非-知』など),キリスト教とはいかなる宗教なのかということ,などなど。一つひとつの話が,哲学的な思考を構築していく上での不可欠な概念の説明であり,人間というものの本質規定にかかわる内容(たとえば,ことばを話す動物,動物にはもどれない存在,など)に深く分け入っていく思考であり,ここに簡単にご紹介できるような代物ではありません。

詳細については,テープ起こしをして手を加えたものを,いずれ公表できるようにしますので,それまでお待ちください。いまのところ,『IPHIGENEIA』第3号(通号第11号)・2011,に掲載の予定。刊行は12月末。なお,そこにはこのブログで書きつづけてきた,わたしの『宗教の理論』読解も掲載の予定。その他の方たちにも『宗教の理論』読解の原稿を書いてもらおうと思っていますので,その意味では,次回の『IPHIGENEIA』は『宗教の理論』読解・特集号になりそうです。

いすれにしましても,この6月東京例会を通過したことによって,わたし自身はなにか「物の怪」がとれたような気分です。つまり,西谷さんのお話をうかがうことによって,なんとなくぼんやりしていたことがらがすっきりしてしまいました。これで「前にでる」ことができる,と確信しました。あとは,「スポーツとはなにか」というテーマを,どのような構成で書き上げるか,ということだけです。とりあえずは,新書をイメージして,ごく簡単に,わかりやすくスケッチをするつもり。そして,そのあと,本格的なハード・カバー本を書こうと思っています。たぶん,それをやりとげると,また,つぎの知の地平がみえてくるのではないか,と楽しみにしているところ。

有言実行。まずは,高らかに宣言をして,みずからを縛りつけておくことにしよう。でないと,意志が弱いので,内緒にしていると途中でくじけてしまいそう。退路を絶って,前にでるのみ。でも,ようやくここにたどりついたかとおもうと感慨一入でもあります。そういうところにたどりつけたのも,一重に,「ISC・21」のみなさんのお蔭であり,西谷修さんのお蔭です。もう,しばらく頑張ってみたいと思っていますので,こんごともよろしくお願いいたします。

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