2011年6月24日金曜日

八百長の背景「似通うKリーグと大相撲」(中小路徹)という記事にひとこと。

ちょっとバカにしてないか,というクレームです。
朝日新聞に「記者有論」というコラムがあって,毎回,記者の実名でときの話題がとりあげられる。企画そのものは面白く,記者のナマの声が聞けて,いろいろ考えることも少なくない。
今回(6月24日・朝刊)は,「スポーツグループ次長・中小路徹」という署名・写真入りの記事だ。そして,ブログのタイトルに書き写した見出しがそのまま掲載されている。
たぶん,朝日新聞社の記者になるような「社会性」があって,「常識」があって,しかも「待遇」(収入)のよい人たちが読むと,「なるほど」となんの抵抗もなく納得できてしまうにちがいない。
中小路さんの論旨はこうだ。韓国プロサッカー・Kリーグの八百長事件が起きた背景と,日本の大相撲の八百長が起きた背景は「似通う」ところがある,というのだ。その根拠は,一人前になるまでに通過する「世界の狭さ」(つまり,「社会性」の欠落),そして「常識が身につかないまま大人になりやすい」こと,三つめが「待遇の悪さ」だという。もう一つ,加えておけば「上下関係の厳しさ」をあげておられる。つまり,「先輩から協力を依頼されれば,後輩は断れない風潮」が指摘されている,という。
はたして,こんな単純なことなのだろうか。
だったら,こんな世界はサッカーや大相撲に限らず,どこの世界にもある。
わたしは,韓国にもスポーツの専門家(研究者や,実践家)の友人がいて,これまでにも何回もシンポジウムや講演を頼まれてでかけている。そして,なにか「事件」のようなことがあると,すぐにお互いの情報交換をしている。今回の韓国プロサッカー・Kリーグの八百長事件についても,韓国の専門家たちはどのように受け止めているのか,という情報もえている。
それによると,以下のようだ。
サッカーの八百長などは子供の遊びに等しい。もちろん,悪いことだから法的手続き(国民体育振興法違反)をへて処分されることになるだろう。それは当然だ。しかし,そんなに大騒ぎをするほどきことではない。こういうバカなことをやれば,Kリーグが廃れていくだけのこと。おのずから自主規制をはたらかせ,自浄能力があるかないか,が問われるだけの話。
そんなことより,政界・財界をふくめて,もっともっと大がかりな「八百長」がまかりとおっているではないか。それをちょっと「真似」しただけの話。大きな工事現場では手抜き工事が平然と行われている。現場監督も見て見ぬふりをしている,という。なぜなら,すでに「賄賂」で抱き込まれているからだ,と。世の中,あちこちで,もっともっと悪質な「八百長」が行われている。しかも,ほとんどの人がそのことを知っている,という。
だから,韓国Kリーグの八百長は,単なる社会の「写し鏡」にすぎない,というのだ。問題は,八百長をやる体質,それを容認する体質が蔓延していることにある,と。そこの根源を絶たないかぎりなんの問題の解決にもならない,というのだ。もっと言ってしまえば,とかげの尻尾切りと同じで,Kリーグの八百長を騒ぎ立てることによって,巨悪の隠れ蓑として仕立て上げるマスコミも,同じ八百長の仲間なのだ,という。
この話は,とてもお隣の韓国の話として笑っているわけにはいかない。
今回のフクシマ原発事故以後,政府も官僚も財界(東電)も三位一体となって,まるみえの「八百長」劇をみせてくれたではないか。のみならず,そこに学会(御用学者)とマスコミ(朝日新聞も含めて)の2者が加わり,「黄金の五角形」(河野太郎)まで構築して,歴史に残る「大八百長」演劇を,いまも平然と演じつづけているではないか。
この延長線上に,中小路さん,あなたのこの記事は「ピタリ」と寄り添っているみごとなものだと思います。だから,わたしは恥ずかしい。あなたのような「社会性」があって,「常識」があって,しかるべき「待遇」をえている立派なエリートが,このような情けない記事を書くことが。
正直にわたしの意見を書きましょう。
中小路さん,あなたは,ことの真相(深層)をすべてご存じの上で,このような記事を書いていらっしゃる(ひょっとしたら,書かされていらっしゃる)のではないですか。韓国でKリーグの八百長がどのような反響を呼んでいるのか(低俗な週刊誌情報から,一定の見識をもった人たちの見解まで)は,新聞記者として当然,ご存じのはずです。にもかかわらず,こんな薄っぺらい記事を書いて(書かされて)いらっしゃることが情けない。もし,かりに知らないで書いていらっしゃるとしたら,それは新聞ジャーナリズムに対する冒涜です。もし,知っていて書いているとしたら,中小路さん,あなたは「犯罪者」です。
しかも,サッカーのようなチーム・ゲームと大相撲のような個人競技とを同列に並べて論じて,なんの矛盾も感じていらっしゃらないとしたら・・・・。中小路さん,あなたは「スポーツとはなにか」について,一度,とくとお考えいただきたい。
大相撲に関するわたしの見解は,不十分ながら,雑誌『世界』(岩波書店)6月号に掲載されていますので,ご検討ください。スポーツグループ次長という肩書でお仕事をなさっている中小路さんが読んでいらっしゃらないとは思いません。が,念のためにタイトルは「大相撲 真の再生への提言──21世紀的世界観に立った改革を」(P.172~179.)です。
さいごにひとこと。こういう「八百長」社会を,意識的にしろ,無意識的にしろ,あるいは,結果論にしろ,容認してしまっている最終的な責任は,わたしたち自身にある,ということです。この自覚のない論説がなんと多いことか。わたし自身もふくめて自戒のことばとしたいと思います。

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