2013年6月11日火曜日

NHKクローズアップ現代・三浦雄一郎さん「快挙」報道に大いなる疑問。

 三浦雄一郎さんの「快挙」が,さまざまなメディアをとおして氾濫しています。しかも,一貫しているのは「80歳にして・・・」という世界的な英雄扱いです。たしかに,これまでだれも達成できなかっか記録をつくったというその一点だけに焦点を当てれば,そのとおりでしょう。プロの冒険家としての三浦雄一郎さんからすれば,我が意を得たりというところでしょう。が,それを繰り返しテレビなどをとおして見せつけられると,いささか食傷ぎみになってきます。もう,いい加減にしていただきたい,というのが正直なところです。

 せっかくの「快挙」にクレームをつける気はありませんが,メディアのこのワン・パターン化した報道の仕方には,もうこれ以上は我慢がなりません。あまりに子ども染みた,しかも偏った「科学」神話に依拠した,無責任な報道の仕方はもう止めていただきたいとおもいます。とりわけ,NHKさんに関しては。

 わたしの夕食時とNHKのクローズアップ現代の時間がちょうど重なりますので,この番組はほとんどみています。「3・11」以前までは,なんの疑問もいだくことなく,なるほど,そんなものですか,という感覚で無批判に受け止めていました。しかし,「3・11」以後,メディアの報道の仕方の異常さに気づき,複眼的に情報を受け止める努力をしているうちに,いつしかとてつもなく批判的に受け止め,考えるようになりました。その結果,たとえば,テレビ・メディアの報道の仕方があまりに無責任であるということに,どんどん気づくようになりました。いまでは,テレビのニュース番組もふくめて,画面に向かって「それは違うだろうッ!」と吼えつづけています。

 今夜(6月10日)の午後7時30分からのNHKクローズアップ現代,驚異の80歳三浦雄一郎初公開若さの秘密,をみていてとうとう我慢の限界に達してしまいました。今日のこの番組をみていて,NHKの番組制作者たちは,いったい,なにを考えているのだろう,とあきれ返ってしまいました。そこに現れた三浦雄一郎さんは,単なるデブの老人でしかありませんでした。しかも,その映像はすべて「快挙」の前に撮影された事前の映像でした。あんなからだでは,まともな方法ではエベレスト登山は不可能です。それは,少しでも登山ということに真剣に取り組んだことのある人ならすぐにわかることです。しかも,直前には持病の不整脈で入院までしています。いかに不自然なエベレスト登山がなされたかは,今日の映像をみて,わたしは直観しました。

 それを,わざわざCTスキャンで撮影した三浦雄一郎さんの脳の映像をみせて,若い人の脳よりも若若しいと説明を加え,しかも,ある目的をもって日々精進して励んでいる老人の脳は若々しく衰えない,とどこかの偉い先生のコメントまで付しています。こうやって「科学」神話を,またまた再生産しているわけです。

 大きな目標を立てて一生懸命努力している人は,元気で,若々しいのは,むかしからよく知られている事実です。そんなことは当たり前の話です。ですから,こんな脳だからエベレスト登山をなし遂げたのだ,と言わなければならなかったことの裏側に隠された事実が,わたしには気がかりになりました。なぜなら,鹿屋体育大学の先生まで動員して,あれこれ体力がチェックされたにもかかわらず,示されたのは握力40kgだけでした。この数字はそれほど褒められたものではありません。ですから,そのほかの筋力測定の結果は,公にできないほどの数値でしかなかった,ということが逆に浮き彫りになってしまっています。

 80歳にしてエベレスト登山を可能にしたのは,なにも,三浦雄一郎さんの若々しい「脳」や「握力」ではありません。この程度の老人はどこにでもいます。しかし,それ以上のものがしっかりと確保されていたからこそエベレスト登頂が可能だった,とわたしは考えています。

 三浦雄一郎さんの偉大さは,巨額のカネを集める能力にある,と。そして,チーム三浦雄一郎を組織する能力にある,と。しかも,そのチームを一つに束ねて力を発揮させる能力にある,と。そうした総合力が,今回の「80歳エベレスト登頂」を成功させたのだ,とわたしは考えています。これは,たしかに三浦雄一郎さんにしかできない「芸」です。その点では偉大なる人だ,とこころから敬意を表します。しかし,こころの底から喜べるか,と問われると口ごもってしまいます。

 三浦雄一郎さんの培ってきた政界・財界のネットワークをフルに活用して集金し,メディアには「映像」や「手記」を条件に前倒しして出資してもらい,ありとあらゆる手段を用いて,わたしたちでは想像もつかない巨額のカネを集めたはずです。それは,過去の2回のエベレスト登頂成功の折の記録からも推定できます。

 恐るべき数のシェルパを雇い,テレビ・クルーの荷物から,チーム三浦雄一郎の総勢の荷物を運び上げなければなりません。それも並の距離,高さではありません。しかも,医療サポートも確保し,いざとなればヘリコプターも動員できる体制を整えています。そうした総合力の結集が,今回の偉業を可能にしたのです。

 そのことにはフタをして,若々しい「脳」,「握力」,「家族愛」,などにだけ焦点を当てて,それもとってつけたような映像しか提示していません。この番組にはほとほとあきれはててしまいました。わたしが知りたかったのは,最低でも三浦雄一郎さんの「心肺機能」のレベルです。不整脈という持病をかかえた状態での「心肺機能」がどの程度のものであったのか,それが超人的であったというのなら,まだいくらかは納得できます。が,その種のデータはなにも示されないまま番組は終ってしまいました。

 わたしの懸念は,登頂成功後の下山に要した驚くほどの時間の長さとわずかしか移動できていないという事実,その後,クレバスの状態がよくないという理由でヘリコプターを動員したこと,このときなにか不測の事態が起きていたのではないか,という点です。いずれ,三浦雄一郎さんが手記を書かれるでしょうから,このあたりのことをどのように記述されるのか,楽しみにしたいとおもいます。

 「メディア・スポーツ共同体」(今福龍太)ということばがあります。今回の三浦雄一郎さんの「偉業」を支えたのは,ひとことで言ってしまえば,この「メディア・スポーツ共同体」のなさる技だった,と言っても過言ではありません。この問題については,また,いつか,このブログでも触れてみたいとおもっています。

 取り急ぎ,今日のところはここまで。

コメントを投稿