2013年6月28日金曜日

『「対米従属」という宿痾』鳩山由紀夫×孫崎亨×植草一秀対談(飛鳥新社,2013年6月27日,第一刷)を読む。

 6月27日(木),いつものように鷺沼の事務所に向う。駅を降りたところで,なんとなく本屋さんに寄りたくなる。そこで,いきなりわたしの眼に飛び込んできた本がこれ。なんというタイミング。孫崎亨氏が鳩山由紀夫氏と接近していることは知っていたが,そこに植草一秀氏が加わっていたとは知らなかった。これは面白い,タイミングも絶妙。即買。

 鳩山由紀夫氏の,一見したところ突飛もなくみえる言動をメディアは「宇宙人」的言動として囲い込み,奇人変人扱いすることで事なきを得る戦略にでて,それが成功しているようにみえる。そして,鳩山由紀夫氏の思い描く理想(祖父・鳩山一郎の描いた「友愛」社会の実現,など)を,さも夢物語であるかのごとく握り潰し,経済(それも「新自由主義」経済一辺倒)を支える既得権益集団(すなわち,原子力ムラを筆頭に,さまざまな分野に深く根を張っている既得権益をなにがなんでも守りとおそうという集団)の思うままに政治を動かそうという露骨な姿が,ここにきてますます強くなってきている。このことは,最近,とみに冴えてきた『東京新聞』の報道をみているとよくわかる。鳩山由紀夫の理想や言動は,そういう既得権益集団の圧力のもとで,「尾ひれ」までつけられて罵倒され,抹消されているのが現実の姿である。

 はたして,鳩山由紀夫とはいかなる人物なのか。そして,その実像はどうなのか。なにを考え,なにを根拠に,なにを主張しようとしているのか,このあたりで一度,しっかりと自分の眼で検証しておく必要があるだろう。この本は,そのための一助になるだろう。もっと知りたい人は,2011年12月,『NATURE』(科学誌)に掲載された論文(鳩山由紀夫・平智之共著)を読むといい。国賊どころか,きわめて高い理想をかかげ,日本という国家の行く末をみすえた立派な国家戦略を明らかにしている。なのに,既得権益集団は一致団結して鳩山由紀夫の主張を徹底的に排除・隠蔽することに全力を挙げている。

 その結果,鳩山由紀夫という人物は,まことに奇怪しな人だと,多くの人たちは信じて疑おうとはしない。つまり,既得権益集団の流す粉飾情報によって,わたしたちは,ほぼ間違いなく騙されてしまっているのだ。嘘と詭弁で塗り固められた大手メディアによる「情報」を一度,ひっぱがして,その裏にうごめいている恐るべき「力学」を,自分の眼で見届けることが不可欠だ,とわたしは考えている。その手始めにこの本をお薦めしたい。

 孫崎亨氏は『戦後史の正体』で電撃的デビューをはたし,いっとき,メディアも注目していろいろと話題になったとおりである。その後も立て続けに本を出版して,わたしたちが「目隠し」にされていた,まったく新しい「戦後史」を剥き出しにしてくれた。そのために,鳩山由紀夫氏と同じように,またまた既得権益集団から睨まれることになった。が,この人もまた,みずからの信念にもとづき,糺すべきことは糺す,という姿勢を貫いている。

 植草一秀氏についても,しばらく前に,いささか信じがたいような醜聞が流れ,だから,人格失格であるかのようにして既得権益集団から「制裁」を受けることになってしまった。しかし,この人の書くものは秀逸で,わたしなどはどれほど啓蒙されたかわからない。最近は,エコノミストとして金融市場の動向や政治の動向に鋭い分析を繰り広げている。そして,いまも時代の最先端に立つ言説を提示する論客として多くの読者をもっている。

 この三者による対談は,まことに刺激的である。ここでも「棚上げ」以外に日中友好の回復はありえない,という点でこの三者は一致している。しかも,その根拠までしっかりと提示されている。ここにはいろいろの論点がふくまれているが,少なくとも,日本はポツダム宣言により,無条件降伏をした「敗戦国」であるという認識に立ち返って,尖閣諸島の問題を捉え直さないといけない,という主張にわたしは賛成である。

 最後に,三者の言い分をコピーから引いておこう。
 鳩山由紀夫:既得権益の外にいる多くの国民には事実が隠蔽されている。
 孫崎亨:ほとんどすべての問題で問題を正視することなく,嘘と詭弁で事態が進行している。
 植草一秀:主権者のための政治がいま,既得権益の政治に完全に引き戻されつつある。そして,米国が支配する日本,米国に支配される日本の様相がより鮮明になりつつある。

 ぜひ,ご一読をお薦めします。

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