2014年10月25日土曜日

NHKの「金曜eye」の東京五輪報道に異議あり。政府のプロパガンダではなく国民目線の報道を。

 たまたま夕食どきのゴールデン・タイムだったので,何気なく,食事をしながら「金曜eye」をみるはめになりました。みていると,東京五輪の話らしい。ふーん,と思いながら,とりあえず新聞の番組情報を確認。すると,面白い文字が躍っていました。

 金曜eye 今こそチャンスをつかもう! 東京五輪で人生バラ色 新たな生きがい発見! ▽わが町がブレーク! ? パラリンピック人気が社会の常識を変える? ▽伊集院光・山瀬まみ。

 ええっ? この番組はいったいなにを報道しようとしているのか,とわが眼を疑いました。

 「今こそチャンスをつかもう!」・・・・いったい,なんのチャンスをつかもうというのか。
 「東京五輪で人生バラ色」・・・・いったい,東京五輪で,なにを,どうすれば人生バラ色になるのか。
 「新たな生きがいを発見!」・・・・いったい,なにを,どうすれば新たな生きがいを発見することができるのか。
 「わが町がブレーク!?」・・・・いったい,東京五輪を契機にして,どうやってわが町がブレークするのか。

 まあ,わたしの性格がねじれているからか,最初から疑心暗鬼のまま番組の進み行きを眺めていました。もう少し精確に言っておけば,今日・現在までの東京五輪2020の準備の進め方に大いなる疑問があって,少なくともこのままの準備の進め方(国民の声を無視した独断専行)をするかぎり,東京五輪2020は破綻をきたすに違いない,と心配していたからです。

 それだけではありません。いま,東京五輪2020にとって最大のリスクはフクシマをどのように制御するか,この一事にかかっている,と言っても過言ではありません。フクシマの情況は日々,悪化の一途をたどっています。セシウム137の拡散だけでも,予想の100倍,1000倍というとてつもなく高い数値が発表されるようになりました。とうとう隠しきれなくなったということでしょう。しかも,太平洋にはとてつもない大量の汚染水が垂れ流しです。これだけでもすでに,東京五輪2020は「返上すべき」である,とわたしは考えています。

 のみならず,富士山噴火,都市直下型地震,などのリスクも抱え込んでいます。最後の決め手は,東京五輪2020の開催時期の問題があります。7月26日が開会式,それから2週間の会期。真夏の暑さの真っ盛り。おまけに台風の通過時期のピーク。この会期はどう考えてみても台風がひとつは通過していきます。ひょっとしたら,ふたつ追い打ちをかけるようにやってくるかもしれません。なぜ,こんな,スポーツの祭典にとっては最悪の時期に東京五輪2020の会期を設定したのか。まったく理解に苦しみます。さらには,東京五輪2020のために,既設の施設はほとんど使わないで新設する,という構想です。ところが,資材・人材が足りず,建造費が鰻登りのように急騰していて,充分にあるとされてきた東京都の準備金ではとても足りないということがはっきりしてきました。そこで,東京都は「見直しをする」といまごろになっていい始めています。

 その最たるものが新国立競技場の建造です。まだ,改修すれば充分に使える東京五輪1964の遺産でもある国立競技場を取り壊して,新しい競技場を建造するというのです。その強引なやり方が,ここにきて破綻をきたし,すでに工期が半年もずれ込んだまま,その見通しも立っていません。この問題については,じつに多くの団体が異議を唱え,その対応策を提案しています。が,事業主体であるJSC(日本スポーツ振興センター,文部科学省管轄団体)は一顧だにしません。完全無視を貫いています。

 この他にも,大問題が山積しています。それらについてはここでは残念ながら割愛します。こうした暗礁に乗り上げたままの難題が山ほどある,というのが現状です。わたしは少なくとも5つの団体が取り組んでいる東京五輪2020に関するシンポジウムや研究会や報告会に,何回も参加し,そこでの議論を熟知しています。それは,ひとことで言ってしまえば,きわめて深刻な問題ばかりだ,ということです。別の言い方をすれば「民主主義の否定」。独裁国家の表出。

 しかし,主要メディアはこれらの活動をほとんど報道していません。それどころか,政府の圧力に屈したかのように「無視」を貫いています。あるいは「自発的隷従」を。ですから,一般国民は,ほとんどなにも知らないままでいます。

 そして,のほほんと「あと6年後」には東京五輪2020がやってくる,と無邪気に楽しみにしているのが実情でしょう。そこに,NHKのこの番組でした。

 わたしはあきれ返ってしまいました。これまで述べてきたような問題が山積していることなどは「ひとかけら」も触れることなく,のほほんと,どうでもいい情報を垂れ流しただけでした。しかも,コメンテーターは伊集院光と山瀬まみ。

 結論。臭いものには蓋。そして,猫騙しのような手をつかって,ひたすら東京五輪2020を美化することに専念。お粗末。しかし,こうやって世論を操作していることだけは,まぎれもない事実。国民を無視した,政府御用達の国営放送。もはや,戦前の大本営発表と同じことをやりはじめている,と今日の放送ほど強く感じたことはありません。

 かつて,「民主主義の熱的死」(西谷修著『不死のワンダーランド』)という論文を眼にしたときの衝撃が,いま,眼の前に立ち現れた,と。銃を構えた兵士がわたしの前に突然現れ,銃をつきつけられたような気分です。お前も銃をもって戦え,と言わんばかりの威嚇。それが,今夜(24日)のNHKの「金曜eye」という番組からの,わたしへのメッセージでした。

 あなおそろしや。あなおそろしや。

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