2014年10月7日火曜日

「IOCアジェンダ21」とはどんな内容なのか。

 通称「IOCアジェンダ21」,正式には「オリンピックムーブメント・アジェンダ21」(Olympic Movement Agenda 21)。オリンピックムーブメントの根幹は「オリンピック憲章」によって定められている。それが,いわゆるオリンピックムーブメントの「憲法」のようなものである。それに加えて,オリンピックムーブメントの具体的な目的・目標を定めたものが「IOCアジェンダ21」と呼ばれているものだ。

  しかし,オリンピック憲章についてはだれもが承知しているけれども,「IOCアジェンダ21」の存在は意外に知られていない。東京五輪2020の準備に関係している人びとも,どれだけの人たちがこの「IOCアジェンダ21」の存在を認識しているか,大いに疑問である。たとえば,文部科学省のオリンピックにかかわっているお役人さんが,どの程度の認識をもっているかは大いに疑問だ。とりわけ,文部科学省所管のJSC(日本スポーツ振興センター)のお役人たちは「IOCアジェンダ21」の存在を承知していないのではないか,と思われる節がある。あるいは,承知しつつ「無視」しているのかもしれないが・・・。だとしたら,もっと悪質である。

  同様に,組織委員会も東京都の担当者たちも,ひょっとしたらJOC(日本オリンピック委員会)も,ほとんど認識していないのではないか,と思われる。なぜなら,東京五輪2020を開催するための競技施設の原案をみると,「IOCアジェンダ21」に違反するものが盛りだくさんだからだ。東京都の舛添知事は,予定されている競技施設案について見直しをすると言っているが,それはあくまでも財源とにらみ合わせてのものでしかなさそうである。かれの発言のなかに財政の問題は頻繁にでてくるものの,「IOCアジェンダ21」ということばはでてこない。見直しをするのなら,「IOCアジェンダ21」の精神にもとづいて・・・・と発言した方が都知事の立場としてははるかに美しい。しかし,かれの頭にはカネのことしかなさそうだ。

 こんなレベルの人たちが寄り集まって,いま東京五輪2020の準備が進められている。その最悪の事例が「新国立競技場建設計画」である。デザイン・コンペでザッハ案を採択した安藤忠雄氏以下のメンバーたちは「IOCアジェンダ21」の存在を承知していなかったのではないか,と思われる。なぜなら,デザイン・コンペの応募要項もきわめて杜撰な内容であったことが,同じ建築の大御所である槇文彦氏が指摘しているからだ。神宮外苑という場所が歴史的な「風致地区」であることも,用地面積の狭さも,なにも条件をつけずに応募要項が作成されている点,そして,絵空事のようなザッハ案を採択した委員たち,かれらの頭のなかには,この「IOCアジェンダ21」の存在は完全に欠落していたとしかいいようがない。もし,安藤忠雄氏以下の委員たちが,この「IOCアジェンダ21」をしっかりと認識していた上でのことだとすれば,あるいは,承知していてあえて「無視」したとすれば,これは最悪のシナリオがどこかに隠されているとしか言いようがない。

 ではいったい「IOCアジェンダ21」がいかなるものなのか,ここで確認しておくことにしよう。ただし,全容を紹介するのはこのスペースでは困難なので,その骨子だけを抜き出しておく。

 「IOCアジェンダ21」のもとになっているコンセプトは,1992年に開催された環境と開発に関する国際会議,いわゆる「地球サミット」で,世界の182ケ国(わが国を含む)の合意を得て採択された「アジェンダ21」にある。IOCはこの「アジェンダ21」をオリンピックムーブメントに則した内容にアレンジして「IOCアジェンダ21」を策定し,1999年10月リオデジャネイロで開催された「第3回スポーツと環境世界会議」において採択されたものである。そこには,「オリンピックムーブメントにかかわるすべてのメンバーがあらゆる努力をして取り組み守るべき目標である」と,声高らかに宣言されている。

 いま問題になっている新国立競技場建設計画にかかわる「IOCアジェンダ21」の条項を抜き出してみると,以下のようになる。

 3.持続可能な環境維持開発のためのオリンピックムーブメント行動計画
  3.1.6.人間の住居環境および居住
  競技施設は,土地利用計画に従って,自然か人工かを問わず,地域状況に調和してとけ込む  ように建築,改装されるべきである。
  3.2.2.環境保全地域および地方の保護
  スポーツ活動,施設やイベントは,環境保全地域,地方,文化遺産と天然資源などの全体を保護しなければならない。
  3.2.3.競技施設
  既存の競技施設をできる限り最大限活用し,これを良好な状態に保ち,安全性を高めながらこれを確立し,環境への影響を弱める努力をしなければならない。
  既存施設を修理しても使用できない場合に限り,新しくスポーツ施設を建造することができる。
  新規施設の建築および建築地所について,このアジェンダ21の3.1.6節を遵守しなければならない。これらの施設は,地域にある制限条項に従わなければならず,また,まわりの自然や景観を損なうことなく設計されなければならない。

 以上の条項を確認するだけで,新国立競技場建設計画が,この「IOCアジェンダ21」の目標に,いかに違反しているかは歴然としている。

 にもかかわらず,新国立競技場建設計画は粛々と推し進められている。多くの建築家や市民団体や学会(環境アセスメント学会,日本美学会,など)が異議申し立てをしているにもかかわらず・・・。

 この国の根幹が腐っているとしかいいようがない。情けないことながら・・・・。しかしながら,これを許してしまっているのもまたわたしたちなのだ。こころして取り組まねばならない。
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