2015年5月15日金曜日

子どもたちのからだに異変?筆圧の低下,しゃがめない,立ち上がれない・・・。退化現象か。

 NHKの「所さん!大変ですよ」(5月14日22時55分より23時20分)という番組で,「HB鉛筆を使わない!?小学生に何が起きた?薄すぎる字・・・10B登場」というタイトルの放映があった。ちょっと気になったのでみてみた。そこには驚くべき実態が描き出されていた。これが事実なのかとわが眼を疑った。ほんとうなのだろうか,と。

 かいつまんで要点をまとめてみると以下のようだ。
 1.こどもたちの筆圧が弱くなっていて,HBの鉛筆で書いた文字が読めないので,入学時にB,2Bの鉛筆を用いるように学校では指導している,という。
 2.この現象は,1990年代の後半から現れ,鉛筆はB,2B,4Bを用いるよう指導をはじめた,という。
 3.6年生になっても,2Bを用いている児童が34人中25人もいる,という。残りの9人がHBを使っている,と。

 この現象について宮崎大学医学部の某教授はつぎのようにコメントしている。
 1.筆圧が弱くなっているのは日頃から手を使っていないことが原因である。とくに,指の力を用いる経験が少ないために指に力がない。ゲーム機やスマホに慣れているので,触れるスピードは早くなるけれども,指に力を入れる経験が圧倒的に少ない。
 2.手の指の力と脳の前頭葉の発達とは深い相関性をもっているので,ものごとを総合的に判断する能力の発達が遅れていると考えられる。

 さらに,某教授は,小学校の児童を対象にいろいろの実験をとおして調査した結果について,映像とともにつぎのように指摘している。
 1.瓶の蓋をひねって開ける力がいちじるしく衰えていること。
 2.体育座りの姿勢から手を使わずに立ち上がることができない(6年生で8割)。
 3.しゃがむ姿勢が保てない(うしろに転んでしまう)。足首が固くなってしまっているのが原因。
 4.足腰の力が弱いので,長い時間,歩くことができない。ロコモティブ・シンドロームが急速に増えている。大人にもみられる。

 某教授によれば,小学校の低学年の方が1.2.3.4.のすべての項目において優れているのに,高学年になるにしたがってできなくなる率が高くなる,という。これは,どう考えてみても,「老化」現象としかいいようがない,と。この状態がつづくとすれば,下半身の運動器が発達しないまま大人になるので,ほとんどまともには歩けない大人が激増する,という。

 所さんならずとも,「これは大変だ」とおもわずにはいられない。

 某教授の考えでは,生活が便利になりすぎて,からだを使わなくて済むようになってしまった結果だという。つまり,からだ全体をバランスよく発達させることができなくなってしまった結果である,と。低学年でできていた運動が高学年になるとできなくなるという不思議な現象だが,これは「老化現象」だ,と。

 この映像をみながら,わたしが感じたことは,老化現象というよりは,退化現象ではないか,ということだ。つまり,生物としての退化現象ではないか,と。老化現象というのは,厳密にいえば,幼児から児童・生徒となり,青年期を経て成人するまで,ひととおり発育・発達をとげた上で,徐々に「老化」ということがはじまる。しかし,下半身の運動器が発育・発達をとげないままで成長してしまうとなれば,それは「退化」現象ではないか,とわたしは考える。

 となると,ことは重大だ。生活環境があまりに「便利」になりすぎて,からだを使う必要がなくなり,ついには「退化」現象を引き起こしている,としたら・・・・。これから大人になる人たちがどんな状態になってしまうのか・・・・予測もつかない。たとえば,男性が「草食化」しているというのも,このあたりに遠因があるのでは・・・と考えてしまう。

 少なくとも,このような現象が1990年代の後半から起きているとしたら,もう20年が経過している。とすれば,20代の大半の大人が,鉛筆は「2B」経験者だ。パソコンの普及ということもあって,ほとんどの若い人は,手で文字を書くという経験が圧倒的に少なくなってしまっている。だから,まともに「文字」が書けない人が多い。圧倒的に「稚拙」だ。文字をみて驚くことが多い。

 文字を書く「力」を軽視してはならない。そこには深い意味がある。このことについては,いずれ詳しく私見を述べてみたいとおもう。結論は,書道の薦め,である。

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