2015年6月17日水曜日

陸上競技もラグビーもコンサートもできる新国立競技場,そんなものはつくれません(森山高至)。

 昨日(6月16日)の夜,「神宮外苑と国立競技場を未来に手わたす会」の第二回目の勉強会が開催され,それに参加させてもらいました。建築エコノミスト森山高至さんが講師をつとめられ,とてもわかりやすい,ためになる勉強会でした。

 実施要領は以下のとおりです。
 日時:2015年6月16日(火)19:00~21:00
 場所:日本建築家協会・建築家会館本館1Fホール(渋谷区神宮前2丁目3-6)
 テーマ:緊急開催・まだまだ終わらない公開勉強会・2.
 講師:森山高至(建築エコノミスト)

 この勉強会にさきだって,緊急の記者会見が行われました。森まゆみ,大橋智子,清水伸子さんらの共同代表(11名)の方たちが雛壇にならび,それぞれに発言をされました。まずは,「新国立競技場現行案に対する緊急市民提言」を提示し,森まゆみさんからその趣旨説明がありました。とても静かな会見でしたが,なぜ,いまごろになって,こんな不可思議なことが起こるのか,理解に苦しむ,というそこはかとない怒りの感情が伝わってきました。

 
提言は以下の8項目です。
 1.現行案をあきらめること。
 2.過去の競技場を指針とすること。
 3.アスリートやスポーツ関係者の意見を集約すること。
 4.周辺を含めた総合的な検証を行うこと。
 5.既存の環境と現在の住民を尊重すること。
 6.現実の難題を考慮し,誰もが納得できる施設にすること。
 7.既存施設の活用を検討すること。
 8.第三者検証委員会を設置すること。

 わたしもこの会の活動に賛同し,できるだけ機会をとらえてはいろいろの企画に参加させていただいてきました。この会の共同代表のお一人である大橋智子さんは,4月に開催したわたしたちの研究会にも参加してくださいました。そんなご縁もあって,賛同者のリストにも名前を連ねさせていただきました。

 
 
さて,本題の森山高至さんの講演は,新国立競技場建造に関する問題の核心部分に焦点をあて,じつにわかりやすく語ってくださいました。そして,O(ゼロ)から仕切り直し,というわたしの意見とまったく同じ結論を提示され,こころの底から納得させていただきました。そのさわりの部分だけを紹介させていただきますと以下のとおりです。

 新国立競技場の現行案は,陸上競技場もラグビーもコンサートもできるものにしようという発想そのものが根本的に間違っているだけではなく,技術的にも建造は不可能だし,つくったとしても莫大な維持経費がかかるだけで意味がない,というものでした。

 その比喩として,つぎのようなお話をされました。車でいえば,スポーツカーも,ワゴン車も,ダンプカーも,たった一台の車でそれらのすべての用途を満たす車をつくれ,と言っているようなものだ。最先端技術を駆使して理想的なスポーツカーをつくれといわれればこれは可能である。ワゴン車の理想を追求した夢のような車をつくれといわれればこれも可能である。ダンプカーの頑丈で壊れない理想的な車をつくれといわれればこれも十分可能だ。しかし,これらの三つの理想を全部網羅して,たった一台の車で実現せよといわれたら,それは不可能であるということは,だれの目にも明らかだ。

 こんな馬鹿げたことを,知ってか知らずにか,競技場づくりでやろうとしているのだ,と森山さんは熱弁をふるう。このお話にはだれもが納得し,おおきく頷いていました。わたしもまったく同感。

 ラグビーやサッカーなどのボール・ゲームは,陸上競技場兼用だと走路のレーン(8レーンがふつう)の分だけ観客席とピッチとの距離が離れてしまって,間近でプレイを鑑賞する興味が半減してしまう。それを埋め合わせるためには,スタンドの基礎部分に移動式客席を設備しなくてはならない。このためのコストも無視できない。のみならず,ラグビーなどのボール・ゲームは一度,試合をすると芝が痛んでしまって,修復をし,使用可能になるのに約1週間はかかる。したがって,ラグビーなどのボール・ゲームでは試合会場をいくつも用意して,そこを巡回しながら予選を闘う必要がある。つまり,連日,同じ競技場を使うことはできない,ということだ。

 そこに,コンサートが参入するという。ここに屋根の敷設の問題が生ずる。たとえ屋根を開閉式にしたところで,芝は腐ってしまう。だから,トヨタ球技場は,屋根を取り外すことにした。これは,建築の専門家ならだれでも知っていることだ。なのに,コンサートを開催して,維持管理費をはじき出そうというのだ。相矛盾したことを,強引に推し進めようとしている。まったく理解に苦しむ,と森山さんは問題の所在を明確にしてくださいました。

 これ以上は長くなってしまいますので,まだまだ,魅力的な森山さんのお話があったのですが割愛させていただきます。あとは,森山さんのブログ(こちらは詳細に,かなり専門的な話にまで及んでいますが,とても勉強になります)でご確認ください。「森山ブログ」で検索すれば,すぐにでてきます。

 また,「神宮外苑と国立競技場を未来に手わたす会」の活動も,詳しくはホームページでご確認ください。これまでの活動の経緯がじつに丁寧に記録されています。新国立競技場建造に関する資料としても抜群です。
http://2020-tokyo.sakura.ne.jp

 以上,取り急ぎ,ご報告まで。 
 
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