2015年6月9日火曜日

東京五輪2020,競技会場を大幅に変更。招致運動時のコンセプトとは一変。

 今日(6月9日)の東京新聞一面が,東京五輪の主な競技会場計画について,以下のように報じています。

 〔ローザンヌ=渡辺泰之〕2020年東京五輪の競技会場見直しで,大会組織委員会は8日,未定だった10競技のうち,自転車とサッカーを除く8競技の7会場を,国際オリンピック委員会(IOC)理事会に報告し,了承を得た。全28競技のうち18競技は既に会場が決まっており,決定した会場数は,26競技で計28になった。

 そうして,以下のような図入りで会場計画を明らかにしています。


この会場計画をみれば明らかなように,当初,予定されていた東京湾周辺に競技施設を集中させ,半径8㎞圏内で五輪を開催するとした「コンパクトな五輪」というコンセプトはどこかにすっ飛んでしまっています。上の左の図に円のラインが描かれていますが,これが「8㎞圏内」ということです。そこからはみ出す競技会場が右上にあるとおりです。サッカー一次リーグ会場はまだ検討中としても,かなりの広域を考えているようです。右下には東京都の西部にある武蔵野の森総合スポーツ施設や味の素スタジアムや馬事公苑,それに東にある幕張メッセやさらに南西の江ノ島,北側のさいたまスーパーアリーナが東京五輪の会場として取り込まれています。


東京五輪招致運動の目玉のひとつだった「コンパクトな五輪」のイメージは一変してしまっています。この「コンパクトな五輪」というコンセプトが招致運動のときに高く評価されて五輪開催を勝ち取ったことを考えると,これではまるで「詐欺」ではないか,とおもってしまいます。しかし,そこには抜け道も用意されていて,昨年12月にIOCが発表した五輪改革方針「アジェンダ2020」がありました。この「アジェンダ2020」は,これからの五輪開催が金のかからぬ大会へと脱皮をはかるための思い切った改革でもありました。なぜなら,その背景には経費がかかりすぎるという理由で五輪招致を敬遠する都市が増えてきているという事情があります。たとえば,2022年の冬季五輪では,6都市が招致に名乗りを上げながら,財政的な理由などから4都市が辞退した,という現実があります。

 まあ,言ってみれば,東京五輪2020は,この「アジェンダ2020」に救われたと言っても過言ではありません。なぜなら,「コンパクトな五輪」を開催するために,当初の計画では,競技会場の約6割を新設,仮設することになっていました。しかし,コストの高騰と工期の関係から,当初,予定していた予算ではとても足りないことが判明し,大きな壁にぶち当たっていました。そこに「アジェンダ2020」の決定がありました。渡りに舟とばかりに,この「アジェンダ2020」に飛びつき,それから大急ぎで競技開催の会場の見直しが行われたというのが真相です。

 この「アジェンダ2020」が出なかったら,東京五輪2020は開催不可能となり,それこそ「五輪返上」になりかねないところでした。

 これで会場変更により,なんとか一難を回避することができましたが,その代わりに犠牲になったのは,もう一つのコンセプトであった「アスリート・ファースト(選手最優先)」です。選手村から競技会場まで遠い武蔵野の森総合スポーツ施設までは20㎞以上もあります。都心を抜けて西の郊外まで往復しなくてはなりません。渋滞につかまったら,どれだけ時間がかかるかわかりません。この問題をクリアする方法をこれから考えなければなりません。

 
といったような具合に,まだまだ,東京五輪2020を開催するには問題が山積しています。第一,メイン会場となる新国立競技場ですら,まだ,建設の目処が立っていません。それどころか内部分裂を起こして,責任のなすり合いをはじめています。それもひどいものです。文部科学省(新国立競技場の事業主体・JSC)と東京都(五輪開催都市)と組織委員会が三つ巴の論争をはじめているのですから・・・・。まさに想定外の醜態です。とんでもない恥さらしです。

 みるにみかねたバッハIOC会長までもが「憂慮している」という声明を発したほどです。

 それ以外にも,問題は山積です。もっと強烈な問題は手つかずのままです。つまり,原発事故後の「under control」の問題です。それに,地震,火山とつづきます。はたして,ほんとうに東京五輪2020を開催する資格,あるいは,条件が整っているのだろうか,とわたしは日毎に疑問を募らせています。早めに返上した方がいいのではないか・・・・と。

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