2015年11月10日火曜日

「月面で猿が踊り狂っている」。「月光心猿」。又吉直樹の『新・四字熟語』より。

〔月光心猿〕

黄昏を不法投棄するため
外に出た 誰にも見つから
ないように歩く
                     黄昏 ティッシュ 残飯 ゴムが
                     弛んだ下着 シャツ 電気料金
                     表レシート 独り言 蕪雑な
                     袋の中で黄昏が汚れている
隠れているつもりか電柱の
陰に暗鬼 裸足の餓鬼がチョーク
で地面に描いた月 墨絵みたいな
鴉が翔び地面の月を襲う
                                    黄昏投棄
月が空に逃亡して夜が来た                   脳髄廃棄
辺りが覚えのある臭いに変わる                体躯遺棄
                                    感傷唾棄
                                    人間放棄

                     何かが爆ぜた


月面で猿が踊り狂っている


                     次の自動販売機で
                           珈琲を買おう 


 
∥ 月光心猿 ∥ げっこうしんえん

月明かりに照らされた途端,心の中で猿が
暴れるように,なにか行動を起こしたいと
いう衝動に駆られること。
迷い,悩み,苦しみ,立ち止まっていた人
間が,ひょんなことに刺激を受け,動き出
せそうな 『今』 というあの感じ。

 
ふたたび,又吉直樹の『新・四字熟語』から転載させてもらいました。どうしても転載したいという衝動に駆られて・・・・・。わたしのこころの中の月面で猿が踊り狂っています。読んだ瞬間に共鳴・共振してしまいました。もはや止めようもありません。

 やはり,又吉直樹は面白い。
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