2015年11月24日火曜日

ヒップホップ集団『クルギ』のチャットと握手してきました。人間として立派。

 世界的なヒップホップ集団「クルギ」が初来日。その初日の公演とシンポジウムが,昨日(11月23日),東京外大で行われました。ちょうど学園祭の最終日ということもあってか,大勢の人が集りました。野外ステージを目一杯動き回りながら,ラップを刻み,ときには笑わせ,ときには怒りの表現が迫力満点で繰り広げられ,会場は熱気につつまれました。

 リーダーのチャット(Thiat )が英語で語りかけていましたので,東京外大の学生さんたちはみごとに反応して,いい雰囲気が醸しだされました。立ち上がり,ちょっぴり不安そうでしたが,途中からは聴衆とも一体化し,後半からは乗りにのって,完全にかれらのペースとなりました。そのすさまじいまでのエネルギーがじかに伝わってくる迫力に圧倒されてしまいました。

 この公演は午後2時40分から行われましたが,そのあと,午後5時30分からかれらを囲むシンポジウムが開催されました。226教室(いつもシンポジウムを開催するときに用いられるかなり広い階段教室)は満席。しかも,すごい緊張感がみなぎっていて,遅れてきた人はドアを開けて,ちょっと覗いただけで,そのまま引き返すシーンも何回かありました。

 中山智香子さんの司会・進行ではじまりました。冒頭で,ヒップホップ集団を招聘する企画をリードした真島一郎さんが,この企画の趣旨について,そういうことだったのか,とこころから納得できるみごとなお話をなさいました。その要点だけを述べておきますと以下のとおりです。

 2011年3月11日(いわゆる「3・11」)の日本のできごとのあと,6月23日にセネガルの首都ダカールで「都市騒乱」(いわゆる「6・23ダカール騒動」)が起きました。この間,真島一郎さんはずっとセネガルに滞在していて,日本の情況・情報を海外から眺め,その一方でセネガルの「都市騒乱」を目の当たりにしていました。それは,ちょうど写し鏡のように両者がお互いを照らし合っているようにみえた,と真島さんは語ります。

 セネガルの鏡の中に日本がみえる。
 日本の鏡の中にセネガルがみえる。

 しかし,セネガルは「債務国」,日本は「ドナー国」。立場はま逆でありながら,両国ともに「非産油国」であること,「石油か核かの二者択一」という点では共通していて,そのもとでの経済発展をめざした両国は,その結果として人間の「命」の軽視へと歩を進め,ついに「破局」を迎えることになりました。

 しかも,両国の政権はともに憲法改正をかかげ,独裁体制を確立しようと試みました。が,セネガルでは,このヒップホップ集団「クルギ」が中心となって,ときの非民主主義的政権を,選挙によって倒し,新しい政権を誕生させました。それと同じような主張をもつ学生集団「SEALDs」が日本では誕生し,ことしの夏はその旋風が吹き荒れました。そして,いまも,全国にそのネットワークを広げ来年の参議院選挙に向けて活動をつづけています。

 この両者に共通しているコンセプトは「非暴力」です。この「非暴力」による民衆の「力」の喚起とはいかなるものなのか,「クルギ」の活動をとおしてその内実・実態を明らかにしたい,というのが今回のシンポジウムの趣旨です。というようなお話を真島さんがなさいました。もちろん,ことば足らずや余分なことも多少加えてありますが,それはわたしの責任です。お許しください。

 このあと,西谷修さんが代表質問をなさって,クルギのリーダー・チャットが応答するという展開でまことに充実した時間が流れました。なんといっても,質問者が西谷修さんである,ということがチャットの話を引き出す上できわめて効果的だった,とフロアーにいてそうおもいました。それは,じつに的確にツボを抑えた質問だったからです。しかも,ときには,みずからフランス語で語りかけて,質問の趣旨を補足説明したりしていましたので,チャットの応答もみごとにその「肝」に触れるものばかりでした。

 詳しいやりとりは割愛しますが,もっとも強烈に印象に残ったのは,チャットは「非暴力」というコンセプトについて,じつに深い思想・哲学的な思考を積み重ねてきている,ということでした。武器による「平和」はありえない,なぜならば・・・・という具合に,西谷さんとチャットの対話がみごとに展開していきました。これは,いま,凄い場面に立ち合っている,と鳥肌が立ちました。このシンポジウム(まだ,これを皮切りに仙台,沖縄とつづく)はいずれ,書籍となって刊行されることは間違いないとおもいますので,詳しいことはそちらに譲りたいとおもいます。

 
こうしたチャットと西谷さんとのキャッチボールのまにまに,西谷さんとチャットのこころが触れ合うような温かさも伝わってきて感動してしまいました。それは,ひとことで言ってしまえば「優しさ」でしょうか。人間としての,相手をいたわり会う「優しさ」「信頼」のようなものが,わたしにも熱く伝わってきました。これはすごいことだ,と感動しました。

 考えてみれば,中山智香子さんといい,真島一郎さんといい,そして,西谷修さんといい,もう全身全霊でヒップホップ集団「クルギ」を熱烈歓迎し,その優しさ・おもいやりのこころは,十二分に「クルギ」のメンバーたちには伝わっていたはずです。

 
そんな全体をつつみこむ「優しさ」の空気のようなものが,わたしのこころにも到達したのでしょう。すっかり感動してしまいました。その勢いをかって,シンポジウムが終わったあと,チャットに直撃。握手を求め,写真も一緒に撮らせてもらいました。もちろん,西谷さんに手助けしてもらってのことですが・・・。もっとも嬉しいことは,チャットと西谷さんとわたしのスリー・ショットが撮れたことです。この写真は大事にしたいとおもっています。

 
チャットには,下手な英語で,娘が沖縄で待っているからと伝えました。すると,話は聞いている,とても楽しみにしている,と返ってきました。このまま,沖縄まで追っかけをしたいところですが・・・・。そうもいきません。残念ながら・・・・。

 なお,このブログではいい足りないことが山ほどありますので,また,機会をみつけて書き足しをしてみたいとおもっています。乞う,ご期待。

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